『GIANT KILLING 1』 / 原作:綱本将也 漫画:ツジトモ
2007.05.05 16:46
私とって、神かがった面白さを誇るサッカーマンガ、『GIANT KILLING』の 1巻です。古い記事への追記ではなく、新たに1から書き直しました。
前回記事はこちらより。
初版限定のステッカーとカラーページがないことの不満が書かれてます(笑
まずは、簡単にストーリーを説明しますと、イングランド5部のアマチュアリーグ所属、イーストハムの監督として、チームをFAカップ(日本でいう天皇杯的存在)ベスト32にまで導いた主人公・達海猛が、かつて中心選手として活躍した古巣の、"イースト・トーキョー・ユナイテッド"(通称・ETU)の監督へと就任し、毎年降格争いを彷徨うチームを立て直していく・・・というお話です。
作品のタイトルにもある、ジャイアントキリングとは、"大物喰いの大番狂わせ"と作品のコピーにもありますが、弱小チームが強豪チームをやっつけるという、サッカーにおいて(それに限った話ではないですが)は、しばしば起こり、見る者を熱狂させるもののことです。
この作品について、これまでも、さんざんプッシュしてきました(笑
それで、今回何について書こうか・・・と、ずっと考えていて(それが更新が遅くなった理由のひとつであることは秘密ですよ?)、その結論として、自分が『GIANT KILLING』が最も好きである要因、それはサッカー、いや、あえて
フットボールと言っておきましょう。フットボールに対する"ハート"の部分について、書いてみたいと思います。
"ハート"(英語で書くと"heart")を、英和辞典で調べると、"心臓"って意味が最初に出てくるのですが、それはひとまず置いといて(笑)、"心"とか"愛情"とか"勇気"・"熱意"、それから、"真髄"とか"本質"という言葉が載っています。
そのあらゆる"ハート"が、この作品には、いっぱい詰まっているんです。
それは、選手に対して否定的なことは言うのではなく、ひとつひとつ諭すように、かみ締めるように言葉をかけ、選手をモチベートする達海の言動だとか・・・
達海がETUを去り、チームが2部に落ちて以降、自分のすべてをかけてETUのために戦ってきた村越のエピソードだとか・・・
ETUのためにひたすら働き続け、貧血で倒れてしまう有里の話とか・・・
同点に追いついただけなんだから調子に乗るなと叫ぶナイスババア(言葉汚いですが愛情を感じます)とか・・・
それぞれ意味合いは違えど、"ハート"という部分は共通で、それらの"ハート"は自分の感情を高揚させてくれる・・・
その感覚が、たまらなく好きなんですよね~。
その部分は、サッカーに関したことを描いてるんだけど、サッカーを知らなくても、共感できるところで、現に、サッカー好き以外の人の支持も多いみたいです。
それで、今回一番好きだったのが、イーストハムの会長が達海を日本に帰してあげようと発言したシーンです。
すいません、以下ちょっとバレ要素を書きますがご容赦ください。
当初、達海をETUの監督へすることに強く反発し、あと2年残っている契約の違約金として、100万£(日本円で2億以上とありますが、詳しい相場は知りませんw)を支払うことを要求します(実際そんな違約金が取れるのかも知りません)。
ですが、有里(ETUの広報&会長の娘)が、イーストハムの居心地がいい理由、規模は小さくても皆が心を込めて町ぐるみで応援していて温かいという、ETUとの共通点があることと、ETUの窮地を救えるのは、達海しかいないという後藤(ETUのGM)絶対的な信頼を知り・・・
そして、何より達海も、有里と同様の理由で、イーストハムの町を気に入っていて、達海の心の底には、ETUへの決して自分たちには踏み入ることのできない想いがあると、悟った会長は(そのときの会長の表情がすごく寂しそう)、 達海を日本へ帰すことに同意します。
その会長が、また粋なことを言うんですよね。
100万£の違約金については・・・
「FAカップを勝ち上がったことによる観客収入
そして放映権料すべて合わせて100万£
このクラブに……
タツミが支払ってくれたよ」
その会長の言葉に対し、当然のごとく、町の人から反発を受けるんですが、
「帰してやろう! タツミを
この町にそっくりな日本の町に
(中略)
なぁ皆……
今度はタツミを……
故郷で活躍させてやろうじゃないか……
」
っていう、このシーンは、すごく泣きました。
(思い切り自分流の解釈を加えてしまいましたけど・・・)
そしてここで、完全に心をつかまれました(笑
なかなか言葉で伝え切れなくて、申し訳なく思うんですが、実際に感情移入させながら読むと、本当に涙が止まらなくなります。感想書くために、読み直したときも、やっぱり泣きました。
それから、作品の他の魅力についても、さっくりと述べておきます。
まずは、リアリティ路線のサッカー描写。
そんな都合よくはいかないのではっていう、部分はあるのですが、
ベースとなるロジックの部分はしっかりしてると思いますし、それ以上に、何かが起こるというワクワク感の方が強いので、私はこれでいいと思います。サッカー部分については、また、別の機会に触れたいです。
もうひとつは、ツジトモ先生の作画。
達海の天然なキャラクターとともに、作品を読みやすくしているのに、大きく貢献してると思います。元々の『U-31』からの読者としては、最初戸惑いを感じましたけど、達海のキャラにすごく合った、ポップな絵柄で、いいと思います。また、2巻の予告も、よくありがちな、ダイジェストシーンを機械的に貼ってつけたものではなく、ツジトモ先生のすごく丁寧な手描き感があって、私は気に入ってます。
とまぁ、そんな感じで、作品の魅力について、すべてを書ききることはできませんでしたが、それらについては、まった追ってブログの中で書いていければなと思います。
この作品の魅力は、1話にひと通り込められているので(あれだけを読み切りにしても十分いけると思う)、できれば、モーニングのホームページの方で試し読みとかできればいいんですけど(さりげに主張しておきますw)、残念ながらそれはできないので、この記事を読んで興味を持ってもらえたなら、まずは、モーニングの連載の方でチェックし見てください。
■ 掲載
週刊モーニング2007年6号~12号。
#01~#07、有里のエピソードの回まで収録。
■ おまけ
それと、参考までに綱本将也先生原作の過去作の比較について。
文章中に上手く組み込めなかったので、おまけとして、本文からは分けておきます。
暑っ苦しいほどの、生々しさのある人間ドラマという方向性が、『U-31』【amazonで見る】。
その暑っ苦しさや吉原基貴先生の作画(作品にはすごく合ってて私は好きなんですが)は、少々とっつきにくく、コミックの売り上げ自体は良くても、雑誌のアンケートは悪く、最後は打ち切りとなったそうです。
そして、熱血的な少年マンガ的な味付けがされているのが、『Goal Den Age』【amazonで見る】。
序盤は、すごく好きなのですが、その後はキャラクターの成長が加速的に進んでしまって、自分の読みたい方向性に進んでくれなかったのが残念だった作品でした。
どちらも、綱本先生の原作らしさというのは出てますので、興味のある方は読んでみては?
タグ : GIANT-KILLNG
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