【読み切り雑感】『Pinch kicker -あるいは走れない代打-』(後編) / 手原和憲
2010.10.04 22:06
復活を期す男と復活を待つ男の友情の物語――
10月4日発売の週刊ビッグコミックスピリッツに掲載されている読み切りサッカーマンガ、『Pinch kicker -あるいは走れない代打-』(作者:手島和憲)の、今週は後編を読んだ雑感です。
スピリッツ先週号掲載された前編の雑感記事はこちらよりどうぞ。
連載誌のネタバレ要素を含んでいるので、一応記事はたたみます。
物語が完結した今週の後編。
大会が始まって、ユージにフリーキックを蹴る機会が訪れて、最後締めくくられていったわけですが・・・
まず、読み終わった感想としては、自分はシリアスというかしんみりとした描写を軸に、その中で先週にもあった軽いノリを絡めていくといった感じのものを想像していたのですが、実際には自分のイメージしてたものと正反対のバランスだったなーということを思いました。
私としては、ユージがフリーキックを決めて、がーっと胸が熱くなって、最後は軽く笑えるノリでオチがつく・・・というものを期待していました。
ですが、実際にはユージのフリーキックはクロスバーに当たり、そのリフレクションを“まさかのユージの全力ダッシュ”で拾ってそのままクロス→タカが毛根と引き換えのナイスヘッドを決めて同点。
タカに「走れんじゃねェかァ!!」にツッコまれつつも、試合はまだ同点、ユージはどうするんだってところで・・・
「…ああ、走れるよ。 つーか、走りたいんだよ」
と、何事もなかったかのようにピッチに立ち続けるユージ。
そんなユージの知らないところで、実はピッチに立つ前に女子マネに巻かれたテーピングにはみんなの寄せ書きがしてあって・・・という、ホロリとさせてくれるラストで締めくくるという形になっていました。
あー、なるほど、2人の友情物語ということで考えれば、ユージのフリーキックが決まらないというこの展開の方が良かったんだなと思いましたね(ユージが全力でプレーし始めた時は、過去の経緯があるだけに無茶してるんじゃないかって心配しましたが)。
ユージがフリーキックを決めて締めくくってしまうと、ユージの方がキャラとして強くなってしまうかな感じになってしまいますし。先週から執拗にM字ハゲのネタにこだわっていた理由もよく分かりました(笑
ひとつ残念に思ったのは、試合シーンでゾラのフリーキックの軌道が今ひとつ再現されてなかった点です。作画としては、ユージが蹴るシーンよりも、鋭く曲がって落ちるゾラのフリーキックらしいボールの軌道にこだわってほしかったかなって思います(大多数の読者的にはどうでもいいことだとは思うんですけど・・・)。ユージの背番号25は、ゾラをリスペクトしたものだと思われるだけに・・・。
けど、それ以外の部分については、ユージのタカの友情物語の部分はしっかり描かれているし、遊び心のあるサッカー描写があり(カレーとかキムチのネタ、ユージのためにフリーキックをもらおうとダイブする描写が酷いw)、軽いノリがベースだったけど・・・いやだからこそホロリとさせられる描写が効いていて(ユージがピッチに立つときの「おかえり」が好きだなぁ)、読み切り作品としてすべてが非常に心地の良いバランスで描かれていたのではないかと思います。
個人的には、“面白い”と思わせてくれる作品でしたー。
現在、手原先生は、月刊スピリッツで『ミル』を連載中ですが、いつか機会があれば(かつ、本人にその気があるのなら)、サッカーマンガの連載も読んでみたいですね。
ということで、もし興味があるなら、今週号のスピリッツをチェックしてみて下さい(前編は、漫画喫茶を探してもらえれば・・・)。
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