『YATAGARASU 23』 / 愛原司
2010.07.06 00:44
※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください
単行本感想がなかなかできなくてごめんなさい。
まずは、『YATAGARASU』23巻の感想です。
全日本クラブユース選手権地域大会準決勝。
森村と同等の才能を持つ緑川魁が実力を示し、夙沢サザンを相手に1-3とリードを許しているグランヴォーチェ。
しかし、後方からのタックルにトラウマがあり神経質になる魁は、イージーなミスを連発し始め、自分のプレーを見失っていきます。
試合の残り時間は15分を切り、諦めるには早いですが、かといって残された時間は決して多くない状況の中で、グランヴォーチェは2点差をひっくり返し勝利を収めることができるのでしょうか。
※
23巻では、夙沢サザン戦の決着がつきます。
魁のミスからの流れで、まずは1点を返し2-3とするグランヴォーチェ。
後方からのタックルに対するトラウマが想像以上に深いもののようで、自分を見失い苦悩しながらもプレーを強いられる魁。
そんな魁の心を動かすことになる、茂木&森村の恐れることのない勝利への執念を見せるプレーに、読んでいて胸が熱くなってきました。
1点を返したのは茂木のゴールだったのですが、その茂木はゴールを決めるとき、相手GKと強く接触し、その後ゲーム中に左目が塞がってしまうほどに腫れあがってしまいます。
魁が不調のままで、グランヴォーチェに試合の流れがある状況。
治療を終え、いち早くピッチに戻りたい茂木ではありますが、目を塞ぐほどに腫れあがってしまったとなっては、いくら冷やしたところで簡単に腫れが引いてくれるわけがありません。
でも、今のままではプレーに戻ることができない・・・。
そこで、総監督である伊集院のじっちゃんがある提案をします。
「マブタを切ってしまえっ」
・・・考えるだけでも私はゾッしてしまうのですが、茂木は何のためらいもなく「なんでそれを早く言わねーんだよっ じいさんっ!!」と返し、まばたきひとつせずマブタを切られ、溜まった血を抜き、治療してピッチへと戻っていきます。
痛い痛い・・・と思いつつも、勝利のためならこんな程度のことは恐れないというその執念には、ただすごいとしか言えません。
ピッチに戻った後も茂木は、治療した箇所を気にせずヘディングをするなどして・・・、とにかくそんな彼のハートの強さに胸が熱くなってします。
おまけに、魁のフェイントを真似しようとしてミスったけど、包帯がゆるく一瞬見えなくなったことが幸いして、思わぬスーパープレーからゴールを決めるシーンも見せてくれました。
一方、森村の方も。
試合中相手のタックルを受け、右足を痛めた状況でも勝利のために戦い続けます。
トラウマを抱える魁の、無理をしてもしプレーできなくなったらどうするんだという問いにも・・・
「ケガを怖がって100%の実力(ちから)を出してプレー出来ないなら……
それは俺にとってプレーしてないのと同じことだ!!」
と、魁の心を直接動かす後押しにもなる、カッコよすぎる言葉を返す森村。
そして、魁がトラウマを抱えるきっかけとなったのと同じ角度からタックルを受けそうになった森村が、“あえて痛めた右足”でブロックし、決勝ゴールとなるシュートを放つ。
そんな森村のケガを恐れないプレーも、私の胸を熱くさせてくれるものがありました。
ここまで茂木に森村のふたりをメインで取り上げましたが・・・
1枚イエローカードをもらっていても、決して怯むことなく魁を止めに行こうする長谷部や(結果的に、2枚目のイエローをもらってしまいますけどね)、そんな長谷部の2枚目のイエローの判定にボールを叩きつけて抗議する宮など・・・
彼らも含めた、勝利のために恐れることなく勇敢に戦っていく姿勢が、とにかく今回は熱かったです。
魁の側から話を見ても、何とか魁にトラウマを克服させてやりたいとあえて交替させなかった夙沢サザンの監督や、最後は修復される親子関係の描写も良くて、ここまで2巻以上に渡って描かれてきた夙沢サザン編でしたが、最後はスッキリとした気持ち読み終えることができた・・・そんな23巻だったと思います。
※
さて、続く24巻以降についてですが・・・。
準決勝を勝ち抜き、Jユースとの決定戦を戦えることが確定したグランヴォーチェ。
先の展開は、全然知らないので何とも言えないですが、まずはトーナメントの決勝戦が描かれることになるのでしょうか。次はどんな試練が待ち受けているのか、続きを読むのが楽しみです。
■ 掲載
vol.88~vol.91
月刊少年マガジン2010年2月号~5月号
夙沢サザン戦の決着まで収録
タグ : YATAGARASU
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