『GIANT KILLING 11』 / ツジトモ (原案・取材協力:綱本将也)
2009.07.25 14:14
※ネタバレ要素が含まれていますのでご注意ください
※各回のもっと細かい感想を読みたい方は、連載を読んだ当時に書いている、今週の『GIANT KILLING』の過去ログをご覧になってください(連載を読んだ当時に書いているものなので、多少間違いなどには目を瞑っていただけるとありがたいです)。
リーグ戦第13節、アウェイでの川崎フロンティア戦。
王子、村越と主力2人を欠く布陣を強いられているETUは前半、椿を囮に使う作戦がはまり、試合を優位に進めていくものの、カン・チャンスのゴールで0-1とリードを許している状況。
後半に入り、ETUの作戦が相手にバレてしまい、試合の流れも川崎が支配し始めてきた中で、ETUはどんな戦いを見せていくのでしょうか・・・といったところで、11巻は始まっていきます。
11巻は、川崎戦の決着、14~16節の状況を間に挟んで、リーグ前半戦の折り返しとなる17節東京ヴィクトリー戦のキックオフ直前の話まで収録されています。
※
王子と村越がいない状況で、 達海は、先日のカレーパーティーでよく働いてくれた選手、 すなわち、クラブへの想いの強さでメンバーを選んでいました。
その結果、スタメンに抜擢されたのが、これまで出場機会の限られていた、 石神、堀田、堺という年長組の選手たち。
そんな彼らが期待に応え、同点ゴールを奪ってくれました!
開幕スタメンでありながらも、すぐさまポジションを奪われ、 これまで作中でもまともな出番すらなかった石神。
飄々とした軽い言動が持ち味(?)の石神ですが、 ディフェンスラインを上げるように声をかけたり(その理由がらしくて笑えます)、 同点ゴールの場面では、サイドの裏のスペースを突いてオーバラップを仕掛け、 ゴールにつながるクロスを上げるなどの活躍を見せてくれます。 ゴールの起点となった堀田のパスを引き出したのも、石神が堀田に声を掛けたからこそのこと。
それから、椿の台頭により、ベンチに居る時間が増えることになってしまった堀田。
決して、実力的に劣っているわけではないですが、いつしか、自分の限界を決めつけ無難なプレーに終始する選手に。 しかし、ポジションを奪われた椿と一緒にピッチに立ちプレーしたことによって刺激を受けた堀田は、 石神の後押しされる言葉もあり、チャレンジする縦パスを送るようになっていく。 同点ゴールの場面では、右サイドの裏をオーバーラップしていく石神に、 起点となる40mぐらいのロングパスを見事に通します。
そして、常にコンディショニングに気を配り、 最もプロフェッショナルな姿勢を見せていた選手でしたが、FWのポジション争いでは3番手という立場で、 出場機会が多いとは言えなかった堺。
その堺は、同点ゴールを決めるという大仕事をやってくれます!
石神のクロスから世良がヘッドを落としたところに走り込み、 飛び出してきた川崎のGK星野の動きを冷静に見極め、ちょこっとボールを右足のアウトサイドでずらし、かわして、がら空きのゴールに落ち着いて流し込みゴールを決める。渋くてカッコいい堺らしいゴールでした。
連載で読んだときも泣きましたけど、
単行本で読み直したときも、この瞬間はやっぱり泣きました。
6巻で堺の言動を見たときから、ずっと活躍してくれることを願っていましたし、この瞬間をずっと待っていましたからね・・・。とにかく、心の底から溢れ出してくるものを止めることはできませんでした。
丹波がゴールに絡んでなかったことがちょっとだけ残念な気もしますが (まぁ、タンさんは彼らより出番多いからね)、 この試合スタメンに抜擢された年長組3人がそれぞれ特徴を活かしてゴールを奪ってくれたことは本当最高でしたね。
椿や赤崎といった、若くて才能のある選手が未知なる可能性を見ていくというのは、 ものすごくワクワクさせてくれるものがあります。
けど、そればかりじゃなくて・・・
「カッコイイとこ見せてくれよ お前らが活躍するってことは……
若手が伸びるのと同じくらい… クラブにとっての希望なんだ」
と、達海も言ってますが、その機会は少ないとしても、 生え抜きのベテラン選手が活躍を見せてくれるというのも、クラブを応援している立場からすれば、それはそれで大きな喜びなんですよ!
そういうところにも、スポットを当てて描いてくれることを嬉しく思いました。
クラブを大切にする選手を“信じる”というのは、監督マンガという視点からすれば、 説得力も何もあったものではないかもしれないですが(現に試合には負けてしまってますしね)、 “クラブで戦う!”という理念の下に行動する、そんな達海を私は支持したいです。
10巻の感想でも少し書きましたが、達海が現役時代ETUでプレーして、サポーターから多くのものをもらってい“クラブで戦う!”ということの意味を身を持って体感しているからこそできることなのかもしれないですね。
現実は、なかなか理想通りにはいかなけれど、こういうのは、とても素敵なことだと私は思いますね。
※
一方で、村越が出場停止のため、キャプテンマークを巻いている椿。
前半は、達海の作戦通り、囮として動いていましたが、後半作戦が相手にばれてしまい、マッチアップしている八谷が本来の動きを取り戻したのをきっかけに、自分の存在を自問する椿。
今までの彼だったら、そこで下を向いたままだったかもしれないけれど・・・
自らの意志でプレーを変え、仕掛けの動きを増やしていくことよって、川崎の傾いた試合の流れを徐々に取り戻していくという、椿のメンタル面でのステップアップを見ることができたのが良かったですね!
試合の流れ的には、いい方向に傾いていきましたが、終了間際に川崎のレアンドロに決められ、結局試合には敗れてしまいます。
まぁ、フットボールなんてそんなもんさー。
悔しいけれど、内容が良くても勝てるとは限らない、それがフットボールの真理というもの。
ですが、負けてしまったとはいえ、得たものも多いです。
椿のメンタル的な成長もそうだし、年長組もさらなる伸びしろを見せてくれたことで、チーム全体の底上げにもなりました。チームとして、ひとつの成長のステップを踏むことができたという点で、大きな意味のある川崎戦となりました。
そのことは、その後の試合で、選手たち自身が証明しています。
いや、本当の意味で証明されるのは、その先の東京ダービーってことになるのでしょうが。
※
毎回の恒例になっている、初版限定ステッカーは、“夏木アクロバティックステッカー”です。
同じく巻頭部分には、『突撃!! となりの松原さん』という、子供が5人と暮す松原家の日常話を描いた5コママンガが掲載されています。「男は…そうある“べき”だ」という松ちゃんの言葉には、ある種の深さが感じられて笑ってしまいました。
おまけカットも合わせて要チェックです。
個人的には、ペペの似顔絵のやつが一番好きです。
※
続く12巻では、まるまる東京ダービーが描かれていきます。
なかなか思うような結果が残せず苦しんでいる王者・東京ヴィクトリーに対し、川崎戦以降いい流れで来ているETU。今回は、アウェイでの対戦ということで、圧倒的な緑色のサポーターたちの前でどんな戦いを見せてくれるのか。
単行本派の方は、巻末の次回予告を眺めながら(いつもながら、この手作り感がいいなぁ)、12巻は講談社のコミック発売予定リストを見る限りでは8月・9月のではなく、いつも通り10月になると思われますが、楽しみに待っていてください!
■ 掲載
#98~#107
週刊モーニング2009年7号~16号
東京ダービー、選手入場シーンまで収録
タグ : GIANT-KILLING
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