【新連載】 ひとりのサッカー少女の青春ストーリーを描く『さよならフットボール』第1話雑感
2009.06.24 01:39
6月20日発売の、最近新装刊されたマガジンイーノ2号にて、連載がスタートした、『さよならフットボール』(作者:新川直司)の第1話を読んだ雑感をつらつら書いていきたいと思います。
まずは、『さよならフットボール』がどんな作品なのかを書いていきますと・・・。
ひとりのサッカー少女が、一般の(男子)サッカー部を舞台に展開されていく物語です。
主人公の名前は、恩田希(おんだ のぞみ)。
藤第一中学校のサッカー部に所属する2年生(ポジションの記述はなし)。
性格的には、典型的なスポーツ少女そのものだと思います。
希は、先に控える新人戦に出ることを強く望み、「お前がマラドーナならOK」という、監督の言葉を真に受けて、男子部員5人にドリブルで勝負を挑みます。
キレのあるフェイントと、しなやかなステップで、5人目をかわしそうなところまで行くのですが、最後は体を入れられボールを奪われてしまいます。
希は、ファールを主張したり、ほとんど5人抜いたこと主張したりで、なんとかして監督に食い下がりますが・・・
そもそも、希は、れっきとした女の子。
男子サッカー部であること主張する監督は、入部の際にも、「女の子は男の試合に出さない」と、念を押していたこともあり、希の試合出場を一向に認めるつもりはない様子。
それでも、「次の試合だけでいいんです」と、監督に執拗に食い下がるのですが・・・
・・・
その後も、なんとかして、希が望む新人戦の1回戦に出場するために、あれこれ画策してみたり、懸命に練習に励む希。
なぜ、希は、そこまで新人戦の1回戦で対戦する江上西戦に、出場したがっているのでしょうか?
それは、希が抱える根本的な問題と、5年ぶりぐらいに街で偶然会ったとある人物との再会が原因のようですが・・・。
後者については、次回に描かれていくところなのですが、とりあえず、記事ここまで読んで、作品に興味をもった方は、まずはご自身で作品を読んでみてください。
■ 以下私的雑感
サッカー少女がひとり、男子サッカー部員に混じって・・・という設定は、サッカーマンガではたまに見かける設定ですね(野球マンガではわりとある思うのですが)。
ちなみに、舞台は中学校のサッカー部(第3種)なので、女子である希も、監督さえ許可すれば、公式戦に出場することはできます(作品がリアルに準ずるとするなら)。多分、このパターンは、今までにない設定ではないかと・・・思います。
読んだ感想としては、まだ何とも言えない部分も多いのですが、第1話では、希を取り巻く環境や背景、希の心理描写といったものを丁寧に描こうとしている意図が感じられ、少なくとも、希というひとりの少女の青春ストーリーが描く作品としては、それなりに面白くなるのではないかと期待しています。
サッカー描写についても、作画が特別に上手いというわけではないですが、多少の誇張表現的なものはあっても、わりとしっかりと描いてくれそうだという印象を受けました(少なくとも、ぶっ飛んだトンデモになることはないはず)。作画の上手い下手ではなく、希の魅せるテクニックでどれだけワクワクさせてくれるかが、サッカーシーンにおいての鍵(というか、私の期待したいところ)になってくるのではないでしょうか。
1話目で強烈なインパクトを与えるタイプの作りではないので、「これは面白い!」というよりは、「これからもっと面白くなっていくかも!」という、期待させてくれる素地のある作品というニュアンスの方が近いかもしれません。1話目だから未知数な部分も多いけど、とりあえず私の中では、期待値が高めであるということは主張しておきます(笑
※
話のテーマとしては、やはり、希が女の子であるということ。
希がフットボーラーとして抱える問題。
希は、おしとやかさには欠けるけれど、れっきとした女の子です。
テクニック的なものは、決して男子には負けていない。
しかし、男子と女子の絶対的に言い切れるほどに埋めることのできない“フィジカルの差”が、希の行く手を遮ります。
「フィジカルは全てじゃない」
フィジカルの差によるものだけで、「男子の方がレベルが高い」という認識されてしまうことを「違うよ」と大声で否定したい気持ちを持つ希。
けれど・・・
「……でも全ての中の一つなのよね」
サッカーにおけるフィジカルの重要性と、自分の置かれている現実というのも、十分に理解をしている希。
「私はなんで女なの」
希は、女に生まれた自分の運命を呪い、小学生時代は自分よりも体の小さかった男子たちに追い越され続けていく現実に悲しさを感じながらも、現実を受け入れ、何とか自分の願いをかなえるため、サッカーに取り組んでいきます。
「私には たぶん 時間がないんだよ」
希は現在中学2年ですが、この男女間フィジカルの差は、時間が経つほど縮まるどころか開いていく一方。
だからこそ、その差が絶望的となる前に、希は、新人戦の1回戦で対戦する江上西にいる“あいつ”とどうしても決着をつけなければなりません!
このあたりの希の描写というのは、グッとくるものがあります。
彼女の、決して抗うことのできない運命の部分は、切なさを覚えますね・・・。
サッカーマンガにおいて、“テクニックとフィジカル”というテーマは、何度も見てきているものなのですが、この作品は、希の心理描写を丁寧に描いていくことで、(希が女の子だというのもあるけれど)ありきたり感は緩和できていると思いますし、希の青春ストーリーとして面白くなっていくのではないかと、私は期待感を抱いています。
希は、ボーイッシュ系だと思うのですが、本音を見せるときはキュンとさせてくれますし、試合に出せ出せアピールやフットサルで野次った客にカントナキックをかまして出入り禁止させらている事実(←これが一番ツボだったw)があったりというお茶目な一面もあったりと、キャラとしてもなかなか魅力的だと思います。
これに、ピッチの中でファンタスティックなプレーを魅せ、輝いている姿も加われば、青春ストーリーとしての一面だけはなく、サッカーマンガとしても面白くなっていくはずです。
あと、ひとつ気になっているのは、『さよならフットボール』というタイトル名の意味。
ま、まさか、希は結局新人戦に出られず、タイトル名どおりの展開なんてことはない・・・よね??
※
続く第2話では、希がどうしても新人戦の1回戦に出たいと願うきっかけになる人物との再会、その理由が描かれていくことになりそうです(今回の記事では、特に取り上げませんでしたが、“ナメック”と希が呼ぶその人物についての描写もあります)。
スポーツマンガにおいて、数年ぶりに再会する、しかも(希のことを)慕っていたとなれば、今回の最後のコマ、希を呼び捨てしているシーンからして、どんな展開になるのかあらかた見当はつきますが・・・、続きを読むのが楽しみです。
興味のある方は、現在発売中のマガジンイーノをチェックしてみてください。
マガジンイーノは、隔月出版なので、次回は8月20日発売となります(単行本化は、1年ぐらいに先になりそう・・・)。2ヶ月先は長いなぁ・・・。
・・・
ちょっとおまけ。
あのカントナのカンフーキックのことを思い出したら、また見てみたくなったので、動画を探してきました。
(参考リンク:Cantona Kun Fu Kick)
※Youtubeの動画ページに飛びますので、音量にご注意ください
※↑のリンクは、キックのシーンのみものです。その前後のシーンも見たい方は、こちらの動画を。
数年ぶりに見ましたが、今見てもやっぱりすごいわ。
カントナ様は、問題児という一面もあったけれど、それ以上に、プレーで見るものを魅了し、ピッチの中で他を圧倒する存在感が印象的だったと記憶してます。
タグ : さよならフットボール
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