『中澤佑二物語』 / 塀内夏子
2009.06.06 01:28
ようやく単行本化となった、『中澤佑二物語』を読んだ感想です。
まずは、作品の概要から。
『中澤佑二物語』は、週刊ヤングマガジンで読み切りとして掲載されたものを単行本化したものです。
単行本では、全6話となっていますが、2006年に掲載された前編後編(1話~2話)とした中澤選手のブラジル時代を描いたものと、2008年に掲載された全4話(3話~最終話)で中澤選手のドイツワールドカップ後から2007年アジア杯までの話を描いたもの、実質2つの物語で構成されています。
この2つの物語についてもう少し書いていきますと・・・
ブラジル時代は、プロを諦めきれず、ブラジルに渡って、孤独にさいなまれながらも、プロになり代表選手としてワールドカップで戦うことを夢見ながら奮闘する物語。
ドイツW杯後の話は、私たちには到底理解できないであろう、深いところでの"痛み"を抱え、自分の進むべき道に迷い、もがき苦しみながらも前進していく姿を描いた物語になっています。
いずれのストーリーにも、中澤選手が慕い、よき相談相手にもなっていた、高校時代の恩師である・村田義昭氏が登場し、両者の絆というのが話の軸となっています。
※
作品を手がけたのは、『オフサイド』や『Jドリーム』と、サッカーマンガファンにはお馴染みとも言える塀内夏子先生(『Jドリーム』については、つい最近書きましたので興味ある方はご覧になってみてください)。
塀内夏子先生と言えば、人間ドラマを描く上手さが光る方ですが、今回の『中澤佑二物語』でも、そんな塀内先生らしさが出ていると思います(サッカー描写に関しては、以前の方が良かったような気も・・・)。
中澤選手と村田氏の絆の深さというのは、わざわざブラジルまで飛んで行ってしまう村田氏の行動力や、村田氏を慕い相談しに来る中澤選手のエピソードを見れば十分伝わってきますし、個人的に一番好きなのが、ブラジルの子供たちで、中澤選手のために誕生日のケーキを用意していた話は本当に泣けました。
メインの話の他にも、『中澤佑二物語』の裏話的なものも掲載されています。
もともと、『中澤佑二物語』は、塀内先生自身の提案で実現というだけあって、その熱意というのは伝わってきます(やはり、こういうものは、やりたいって本気思ってる人が描くべき!)。
※
私は、今日本で一番頼れるDFは、間違いなく中澤選手だと思ってます。
ジーコ時代の代表は、中澤選手にとっては、かなりネガティブなもののようでしたが、まずは、ワールドカップの切符をしっかりつかんで(この記事を書いてる時点では、ウズベキスタン戦まであと22時間ぐらい)、今度こそは(南アフリカ)、"完全燃焼"できる戦いをしてほしいなと思います。
せっかくの4年に1度の大舞台にもかかわらず、結果が出ないこと自体は仕方ないにしても、戦う選手が不完全燃焼なまま終わられてしまうというのは、応援して見守る立場からしても、これほどやるせないことはないですからね・・・。
中澤選手の栄光ではなく、苦しみといったものを描いていった作品ではありますが、中澤選手のファンや、塀内先生の描く人間ドラマが好きな方は、手に取ってみてはいかがでしょうか?
■ 掲載
週刊ヤングマガジン2006年27号28号(1話~2話)
週刊ヤングマガジン2008年17~20号(3話~最終話)
タグ : 中澤佑二物語
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