『マイスター 2(完)』 / 加地君也
2009.05.04 23:41
※ネタバレとなり得る要素を含んでいる可能性がありますのでご注意ください
※ネガティブ気味な内容になっているので、読むかどうかは自己責任でお願いいたします(念のために、記事をたたんでおきます)。
週刊少年ジャンプにて、10週打ち切りとなってしまった、『マイスター』の完結となる2巻の感想です。
インターハイ予選千葉県大会に臨む、総海高校の初戦の相手は、前年準決勝で対戦し敗れた、千葉四強のひとつの黒嶺高校。鉄壁(カテナチオ)を誇る黒嶺からゴールを奪い、前年のリベンジを果たすことができますでしょうか?
※
単行本を読んで、実に興味深い話がありました。
それは、本編ではなくて、単行本用に描き下ろされたキャラクター紹介に加地先生が描かれていた話なのですが・・・
私は、Play.3で頼歩が錦に言った、「ふざけるなァ」が作品を悪い方向に加速させていってしまったのではないかと考えているという旨のことを以前にも書きました。
で、この件について加地先生は、錦のキャラクター解説のところで、このようにコメントされてました。
実を言うと連載当初のネーム(絵コンテ)では錦はいませんでした。当初のネームでは3話でギャグっぽい練習をして、即4話で黒嶺戦にいくという内容で頼歩のブチ切れとかもありませんでした。ただそれだと展開が急すぎるし、ひきが弱いという編集部からの指摘が入り「じゃあ新キャラでも出そうか」ということになったのです。ただ初回が62Pの大増なのに加え新連載3つの1発目ということで極端に時間がなくなり、ネームをよく練ることが出来ず個人的に錦編は不本意な形になってしまったと後悔しています。
この後、加地先生は、いい訳をしてもしょうがない、実力がないのがすべて悪いということを発言されていたのですが、この話をどう受け取るかは人それぞれだと思います。
私としては、やはりこの錦のエピソードが、打ち切りへの分岐点になったように思えてならなかったので、「もし、当初の加地先生の構想通りに話が進んでいったとしたらどうなったんだろう?」と、今となっては戻ることに出来ないもうひとつの道の行方がどうしても気になってしまいます。
まぁ、結局のところ加地先生が空回りしすぎてコケるのがオチだった予感もしますが、テコ入れのために加えたはずものが、かえって逆方向へ加速させてしまったというのは、何とも皮肉な話だなと思いました。
※
「楽しんで勝つ!」
・・・という、『マイスター』という作品が提示したテーマそのものは良かったです。
Play.1の松戸のエピソードをはじめ、説得力は十分ではなかったにしても、その片鱗を感じられる部分はありました。
ですが、これは1巻の感想で書いたことの続きの話になりますが、"楽しさ"を強調するサッカーマンガなら、やるべきではなかったと感じたものもありました。
2巻を読み返して、改めてそれは思ったんですけど、それは、頼歩が黒嶺高校の守って守ってカウンターという彼らの伝統のスタイルを、「それって楽しい?」と"安易な"否定してしまったこと。
「楽しんで勝つ!」を作中で示すのに、相手の存在を否定する必要は一切ありませんし、"敵役の存在をきちんと立たせながらも、自分たちのスタイルもしっかりと示すことができているサッカーマンガが他にきちんと存在している"からこそ、その点には強く不満を感じてしまいました。
さらには、敵役を立たせるどころか、黒嶺の監督なんかは、悪の化身かのうように描き、挙句の果てには、辱めるような描写も必要なかったんじゃないかなと・・・(このあたり、打ち切られるの当たってヤケクソになっていたのかなとも感じられたり)。
※
単行本の描き下ろしの話。 ,/p>
1巻に引き続き、某ウ○イレの能力値付きキャラクター紹介と、読みきり作品2つ(サッカーマンガではないので、感想はスルーします)、それと、『マイスター』Play.0、頼歩の「楽しんで勝つ!」の原点となるエピソードが描かれています。今回は、ギャグの元ネタ話はありませんでした。個人的には、もうちょっと、こういうものが描きたかったというものを書いてほしかったかなぁ(4話で黒嶺戦にいくならどう試合を描こう思っていたのかなど)。
あとは、カバーをめくると何かあります。
ひと通り読み終わった後に見ると、何とも微妙な気分になりますが・・・。
※
久しぶりの週刊ジャンプでのサッカーマンガの連載ということで注目していましたが、残念な結果となりました。10週打ち切りは、妥当だったと思います。週刊ジャンプには、もう一度ぐらいサッカーマンガにトライしてほしいなぁ。加地先生には次・・・があるかは分からないですが、もしチャンスを得ることができたなら頑張ってほしいなと思います。私には、それ以上のことは言えません。
加地先生のファンの方や、いろんな意味でコレクターの方以外には、お薦めしにくい部分はありますが(10週打ち切りという事実は多くの人にとってはそういう意味なわけでありまして・・・)、興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか。
■ 掲載
Play.6~Play.10
週刊少年ジャンプ2009年8号~12号
最終話まで収録
【特別読切】『childeren of symphony』
赤マルジャンプ2000年冬号
【特別読切】『スカルジャッカー』
赤マルジャンプ2006年春号
タグ : マイスター
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