『龍時 5・6』 / 原作:野沢尚 漫画:戸田邦和
2008.08.12 22:33
※多少のネタバレ要素がありますので注意
「また一年も待たせやがって!!」(笑・5巻の巻末近況報告のページを参照)
またもや1年ぶり、2巻同時発売となった、『龍時』の5巻と6巻一緒に、(他の記事との兼ね合いもあってなるべく簡単にですが)感想を書いていきたいと思います。
5巻は、4巻に続いて、主人公・リュウジの所属するシティオ(アトランティコFCの下部組織)vsアルカラ から始まっていきます。
これまでチームに馴染めないでいたリュウジが、ちょっとしたきっかけでチームメイトたちとの歯車がかみ合い始め、チーム全体が本来持っている高いポテンシャルを発揮していき、チーム全員が一丸となって戦っていくところが見どころであり、個人的にも好きなところです。
そこから6巻にかけては、リュウジが下部組織ではなく、アトランティコのトップチーム昇格を目指して、戦っていく姿を描いていくことになっていきます。
※
その中で、ストーリー的に大きなドラマとなっていくのが、トップチーム昇格を懸けた紅白戦。
シティオからアトランティコBへとステップアップしたリュウジは、同じくシティオからステップアップしてきた、エミリオ、アントニオらとともに、たったひとつのトップチームへの椅子をめぐって、紅白戦を戦います。
リュウジ、エミリオ、アントニオ・・・
シティオの頃から同じチームメイトとして一緒に戦ってきた3人。
・・・ではあるけれど、それと同時にトップチームへのステップアップを争うライバルでもあり、紅白戦ではエミリオ、アントニオとは敵チームとして戦うことに。
特に、エミリオは、スペインへ渡ってきたばかりでチームに馴染めない頃のリュウジに親切に接してくれ、普通のチームメイト以上の関係とも言える存在。
けれども、生存競争に勝ち抜いていくために、例え友人であっても、いや友人以上の存在だからこそ、エミリオに対してでも決して手を抜かずに全力で戦おうとするリュウジ。
・・・しかし、サッカーの神様は、リュウジに残酷な試練を与える。
全力で戦ったがゆえのアクシデントとはいえ、リュウジは自らの脚でエミリオのことを負傷退場させてしまいます。
"友をけがさせて蹴落としてまでトップを目指す
これがオマエが日本を捨ててまで求めてきたものなのか……?"
エミリオの想いを知るリュウジは、自分のしてしまったことの事の重大さに我を失う中、残りの試合時間をどう戦っていくのか・・・と、いったところで、ストーリーの行方はご自身で読んでいただきたいのですが、リュウジの人間味のある激しく揺れ動く感情の変化は、私の感情も強く揺さぶられるものがありました。
原作の小説を読んだときから、ここはマンガでどう描かれるんだろう?
と、注目していたところだったのですが、エミリオにスポットを当てた描写があった分だけ、リュウジの心の痛みも自分に伝わってきた気がしました。
けど、それ以上に、マンガ版を読んで涙したのは、試合後リュウジがエミリオの病院へ行ったとき、ロビーで検査の結果を待っているエミリオの父親が、どんな顔をしてエミリオの家族に接していいのか戸惑い立ち尽くすリュウジのもとへ歩み寄り、ただ黙ってリュウジを抱きしめたときでした。
「何も言わなくていい」と言わんばかりにリュウジの気持ちを察し、決して感情的に非難などせず、そっと抱きしめるエミリオの父親のその優しさは、リュウジの心に強く突き刺さったんだろうな。
そんなことを考えていたら、自然と涙が出てきました。とにかく、このあたりのストーリー展開は必見です。
その他のシーンについては(主に5巻のところ)、時間的な都合で割愛させてもらいますが、そのあたりは、書ける余裕のあるときに、連載雑感の中で触れていければなぁと思ってます。
※
『龍時』は、原作の小説をベースにした、リアリティのあるサッカー描写と心理描写が魅力だと私は思っています。
やはり、原作もののマンガということで、"原作の方が面白い"という真理は確かにこの作品にも当てはまりますが、マンガ版にはマンガ版なりの良さもあり(私個人としては、リュウジ視点で描かれる場面は原作と遜色なく好きです)、まぁ、うちはサッカーマンガのブログなので、マンガ版の方にスポットを当てますが、どちらでもお好みの方を選んでいいのではないでしょうか(笑
※
さて、7巻に向けては、いよいよトップチームへと上がり、原作小説1巻目'01-'02のクライマックスへと突き進んでいきます。それらは、連載の方でもこれから描かれていくところのため、どのように描かれていくのかすごく楽しみにしています。
次の単行本の発売時期は、今度こそは、1年間も待たせないようにしていただけると嬉しいのですが、戸田先生もいろいろと大変そうなので、あんまりプレッシャーをかけずに、のんびりと発売されるときを待つとしましょう(笑
■ 掲載
5巻
第53節~第64節
ワールドサッカーキングH19年6/21号(No.060)~12/6号(No.074)
手紙のやりとりのシーンまで収録
6巻
第65節~第76節
ワールドサッカーキングH19年12/20号(No.075)~H20年6/19号(No.090)
紅白戦終了後、エミリオの病院のシーンまで収録
タグ : 龍時
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