『ANGEL VOICE 4』 / 古谷野孝雄
2008.03.16 21:55
Amazonおすすめ度:

※バレ要素がありますので注意!
今年、個人的に躍進してほしいなぁと思っている、『ANGEL VOICE』4巻のレビューです。
今回の、全体を通してのテーマは、"現実と可能性"だと思います。
3巻のラストのところで、乾が11人抜きというスーパープレーで先制したものの、サッカー初心者がほとんどで、ましてやメンバーが足りず10人で戦っている市蘭が、実質2軍のメンバーが中心とはいえ、強豪・前橋北を相手に、たちまち逆転を許し、失点を重ねていってしまうのは必然といえるでしょう。
これが、今現在の彼らの現実。
・・・ですが、そんな中でも、「あと1点取って来い」という監督・黒木から与えられたの宿題ひとつ果たすため(もうひとつの宿題は3失点以内ですでにミッションは失敗)、諦めないで戦おうとする意志を示すキャプテンの百瀬。
不良たちばかりの市蘭サッカー部の中では、その清々しさは一際異彩を放っている百瀬のその言葉に(いわゆる、闘将と呼ばれるようなタイプとは違う、百瀬のキャプテンシーは個人的に好きですね)、他のメンバーたちも心を動かされ、せめて1点を取るために体力を振り絞って戦う市蘭のメンバーたち。
相手は余裕の大量リードで、引いて守り始めたため、それまでの一発カウンター狙いから、リスクを犯して全員攻撃で、1点を奪いに行く市蘭のメンバーたち。
その、前へと突き進もうとする気持ちが、自分たちの可能性を切り開いていくことになります!
"人の動きに合わせた正確なパスは蹴れなくても
ボールにあわせて人が走ることでパスをつなぐ"
そして、ブランクはあるが、チーム内で唯一"ホンモノ"と言える実力の持ち主、乾にパスが渡り、仕掛けようとしますが、あっという間に3人に囲まれてしまう・・・。
(このときの、自分もゴール前に走り込むことによって、なんとか乾をマークするDFの意識を逸らせようと必死に走るけど、結局足がつって前へ進めない二宮の描写がすごく効いてると思います)
そこで、ボールをキープするのに必死で、確認してる余裕はないけど、そこに走りこんできていると信じて、ボールをキープしてタメを作り、成田へラストパス→ゴールのシーンまでの全体の流れは、私はすごくよかったと思います。11人抜きのシーンは、ワクワクしないと書きましたが、こっちはちょっと、ゾクッときました(笑
結果としては、確かにボロ負けだったかもしれません。
けど、その中で、乾ひとりの個の力だけに頼るわけではなく、チーム全体でボールを奪ってパスをつないでゴールを決めることができたという、"今はまだ弱いかもしれないけど、この先きっと強くなる!"という可能性を見せてくれた、それが今回の一番の見どころだと思います。
※
んで、もうひとつの見どころは・・・
試合は、2-14という、まるで野球のようなスコアでの大敗だったわけですが、この惨敗の結果が、サッカー部を廃部させたいと目論む、悪意ある教師によって、学校中に広められてしまいます。
"県内最強軍団(ケンカという意味でですが)とか言ってさんざん威張ってたけど
サッカーじゃ県内最弱だったりして・・・"
など、一般生徒にも、サッカー部を快く思わない人間も多く、バカにされ、笑い者にされてしまったりして・・・、実質二軍相手に惨敗した結果と合わせて、普通だったら、「もうやめたい・・・」ってことになってもおかしくない。
だけれども、彼らはそれにもめげにずに戦い続ける!
その後も、惨めに黒星を重ね続けても、強くなれると信じて戦い続ける!!
その彼らのハートが、私を熱くしてくれるんですよ!
そのあたり、読んでない人は、ぜひともご自身で読んでいただきたいです。
二宮は、相変わらず、カッコよすぎることを言ってますので(笑
そのあたりの、ちょっとクサイかもしれないけど、カッコいいこと言ってる的な感覚は、ある部分では、私の大好きな綱本先生のサッカーマンガが好きな自分と通じるところがあると思うんですよね(ニュアンス的に上手く伝わってるか分かりませんが、自分的には、だからこの作品に惹かれていったんだと納得はしていますw)。
※
あとは、11人目のメンバーとなる万代のエピソードとか、33話のセットプレーをテーマにした話も面白くワクワクさせてくれて(5巻への伏線にもなってます)、私は好きですね。
全体としては、本当の意味で、ここからが市蘭高校サッカー部が、強くなり始めていくための道を歩み始めたといった感じで、これまで以上に内容の濃いものになっていると思います。
まぁ、何かの二番煎じっぽい感じがあったり、作画のスピード感が・・・
ってところは、確かにあると思います。
だけど、それ以上に、地味にじわじわっとかもしれないけど、作品の世界に引き込ませるだけの"何か"があると思うので、じっくり読ませる系のスポーツマンガに興味があるなら、ぜひとも読んでほしいなぁって思います。
普段、あまり取り上げることはできませんが、個人的には、プッシュしたい作品です。
※
さて、次の5巻は、同じ県内の強豪高と戦います。いよいよ11人メンバーが揃っての試合。
そこで、どんな可能性を見せてくれるのか・・・
作品が好きな人なら、期待を裏切らない展開になっていると思いますので、お楽しみに。
私自身も、立ち読みでパラッとしか読んでいないので、単行本でじっくりと読み直すことを楽しみにしています(笑
■ 収録
第25話~第33話
週刊少年チャンピオン2007年47号~2008年2・3合併号
セットプレーの回まで収録
タグ : ANGEL-VOICE
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