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ひとりの"サッカー好き"が書く、主観的なサッカーマンガの読書日記。『GIANT KILLING』と『ANGEL VOICE』を猛烈にプッシュ中!

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『コラソン ~サッカー魂~ 1・2』 / 塀内夏子 

2010.09.20 21:34





※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください




1・2巻同時発売というわけではないのですが、1巻の感想を書きそびれてしまってので、2冊分まとめて書いていきます。サッカーマンガでは、『Jドリーム』シリーズが有名な塀内夏子先生の最新作、『コラソン』の1~2巻の感想です。

まずは、『コラソン』という作品について、簡単に書いていきますと・・・

20XX年W杯アジア最終予選の終盤 日本は窮地に陥っていた―――

『コラソン』は、ワールドカップアジア最終予選を戦う日本代表を題材にした作品です。

5チーム中上位2チームが勝ち抜けるリーグ戦において、日本代表は5試合を消化して暫定4位。まだ自力で勝ち抜け可能な状況とはいえ、チームは深刻な得点力不足。さらに監督は、“目指す方向のサッカーはできている”と今ひとつ危機感のない発言に終始するありさま。

そこで日本サッカー連盟は、この状況を打破するため、新監督して欧州のクラブやナショナルチームを中心に(韓国やオーストラリアも含む)、数多の実績と経験を持つヘルマン・ヴィーズラー(72歳・旧東ドイツ出身)という人物を代表監督として招聘。

会長はかなり渋りながらも“全権委任”を条件に新しい日本代表監督に就任したヘルマン。彼は、課題である得点力不足を解決する手段として、あるFWを代表に召集することを示唆します。

そのFWの名は、戌井凌駕。

彼こそがこの作品の主人公。
現在ブラジルのブルメナウという2部リーグに所属。

南米に渡ってからの凌駕は、パラグアイやチリの2部など、どの国でも得点王を獲ってきたという実績がある反面、試合中の暴力行為と連盟会長の顔に泥を塗る態度を示したことから(後者は、会長の凌駕を自らの権力誇示に利用しようとした自業自得な面が強いですが)、日本を追放された過去を持つ身でもありました。

そんな凌駕の代表召集に、当然、サッカー連盟側も難色を示しますが、何しろ“全権委任”を条件にヘルマンと契約してしまった以上、それを拒むことはできず・・・。

果たして、いわくつきのストライカー・戌井凌駕は、得点力不足の日本代表を救うことができるのか?

そして、全てを託された老将・ヘルマンは、日本代表をワールドカップへ導くことができるのか・・・?

・・・と、そんな感じで、『コラソン』という作品は始まっていきます。

単行本1~2巻では、凌駕が代表に召集されるところから、予想通り凌駕が代表チームに加わったことによりあれこれ波乱の展開が巻き起こり、そして、残り3試合のうちの1試合のサウジアラビア戦の様子などが描かれていきます。

素行は悪いが相手DFと荒々しく渡り合いゴールを決めるストライカーの存在、経験と実績が豊富でサッカーの何もかもを知り尽くしているかのような名将が日本代表の指揮を執り、さらには日本サッカーを揶揄するかのような表現が見受けられたり・・・

塀内先生の思い描く日本代表のひとつ理想像というのが、シンプルだけどストレートに心に伝わってくる・・・、そんな作品だなぁと思いながら、現在進行形の連載の方も含めて読んでいます。

そもそもこの作品は、日本代表がワールドカップを戦う前に連載が始まったものでした。その当時日本代表を取り巻く状況は、決して明るい希望が持てるというようなものではなく・・・

まぁ、ぶっちゃけ言うと、もし日本代表がワールドカップ悪い意味で日本らしい戦いをして惨敗してしまった時、この作品を読んで胸をスカッとさせたり、凌駕のようなFWにヘルマンのような監督が日本にもいてくれたらなぁと思いを馳せてみたりする・・・、そういうためにあるんだと思ってた部分もありました(爆

しかし、実際にワールドカップで日本代表が健闘を見せた今となってはそれも過去の話(苦笑

とはいえ、塀内先生が思い描くFW像や日本代表像そのものは私も分かる部分があります。それに加え、人間ドラマを描く名手である塀内先生らしい良さも変わらず健在。それらがあいまって面白さを構築されていく・・・。

『コラソン』という作品もまた、私にとっては心を突き動かしてくれる、素晴らしいサッカーマンガのひとつと言えるものです!

今回は、私が『コラソン』を読んで面白いと思っている部分を、2つのポイントに中心に書いていこうと思います。

まずひとつは、ストライカーが主人公であり、その描写は作品のキモであるということで、凌駕が代表初ゴールを奪うサウジアラビア戦の先制ゴールのシーンについて。

この試合、4-3-3のセンターフォワードとしてスタメン出場した凌駕。
そんな凌駕が始まった試合でまず最初にしたことは、サウジのCB2人に身体(というか肘)を当てて倒したことでした。

凌駕見せたいきなりのラフなプレーに観客からはブーイング、チームの司令塔で凌駕にパスを供給する中神も怒りを露にします。しかし、凌駕はまったく悪びれる様子もなく、俺はここにいるぞと挨拶してやったと返します。

ヘルマンが言うFWの条件として、相手CBにいかに意識させ存在感を見せるか。要は、相手にとって自分が危険であることを認識させるが大事であると言います。

そこで、ヘルマンは凌駕を危険なプレーヤーであることを認識させるための手段として、最前線から少し引き気味の位置でプレーするよう凌駕に要求していました。

なぜなら、相手CBのマークのないところでボールを受け、強烈なブレ球ミドルシュートを打たせるため。

そんな凌駕のミドルシュートは、サウジDFに脅威を与え、それを警戒するあまり凌駕との距離を詰めるためディフェンスラインを上げ始めます。これによって、サウジDFの背後にスペースを作ることにまず成功します。

そして、司令塔・中神にボールが渡ります。
そこには、タイミングよくサウジディフェンスラインの裏に走る凌駕の姿が。

暴力的な凌駕のことを嫌う中神ですが、先程のプレーで凌駕のFWとしての可能性は感じ始めており、その答えを確かめるべく前線にパスを送ります。

しかし、凌駕の欲しいポイントからは少し短く、ボールの動きに合わせてワンテンポ待つうちにサウジDFに追いつかれボールを失ってしまいます。

シュートにつながらなかったとはいえ、攻撃としては可能性の感じられるもので、普通だったら意図は合っていたプレーに拍手をしてもよさそうなシーンですが、凌駕はそんな味方を労うようなことはしません。

「おせぇぞ! 中神っ
見て確かめてからじゃおせぇんだよ!!
トロいパス出してんじゃねぇっ このヘタクソ!!」

と、むしろ、味方を罵倒する凌駕。

しかも、このシーンは、運悪くカメラにもバッチリと収められていて、エース中神を罵る凌駕に観客からはブーイング。

そんな観客に対し、飲んだ水をスタンドに向かって吐き捨てるという前代未聞の行動を取る凌駕。もちろん、そんな凌駕に対してはさらなる大ブーイングの嵐となります。

普段はクールという中神も、パスを出したのにヘタクソ呼ばわりする凌駕に怒り心頭。けど、これも何と言いましょうか、面白さのひとつのエッセンスでもあるんです。

「FWのほうが偉い もっといいパスをよこせ」(凌駕)
「司令塔に逆らうな 文句言うなら決めてみろ」(中神)

このパスを出す側と受ける側の関係性。

2度目に中神からパスが出た時は、凌駕がサウジDFとの競り合いに敗れボールがゴールラインを割ってしまいます。その時には・・・

「追いつけよ!」

と、中神が凌駕に厳しい言葉をかけ、そんな中神を凌駕は睨みつける。

お互い人間的に合うもの同士ではないけれど、1点を取るために必要なことを主張しぶつかり合う。そのぶつかり合い、反発し合う力こそがプレーのエネルギーにもなっていく・・・。

もっと飢えろ!
もっと!!
もっと!!
でなければ「肉(ゴール)」にはありつけないぞ!!

・・・そんな描写に、ニヤリとさせられるものがあるんです。

そして、“その瞬間”が訪れます。

この試合、右ウイングとして、ヘルマンによって初めてスタメン抜擢された青野が執拗にボールを追い回した結果カットし、そのこぼれ球を中神が拾って凌駕へパスが送られます。

目の前には、サウジDFひとりとGKのみという状況で、ゴールに向かってドリブルする凌駕。

凌駕は、つかみかかろうとするサウジDFを腕で振り払い、左脛を削られても蹴られても倒されずに前進して行く。 さらに、凌駕を突き飛ばそうとするサウジDFの目を左手で塞ぎ視界を遮らせたところでGKと1対1になります。

そして、凌駕は冷静にシュートをゴール左隅に決め、サウジから先制ゴールを奪います!

凌駕が相手DFと戦いながらも、荒々しくも力強く前進しゴールを決めるシーンというのは、やはり胸を熱くさせてくれるものがありました!

塀内先生の作画は、女性漫画家さん特有の弱さみたいなものがあるとは思うのですが、その中でも身体をぶつけ合い、泥臭く荒々しく前進していく描写というのは、しっかり表現できているのではないかと思います。

また、凌駕のゴールに、凌駕を嫌っていた面々も思わずバンザイしてしまっている描写もまた痛快。

スタジアムの観客達たちも湧き上がりますが、ここはやはり凌駕、普通のゴールパフォーマンスを見せてくれるはずがありません。

「マヌケども見たかっ どうだあっっ
バッキャロ――――」

あらー、中指まで立ててしまって・・・(苦笑
けど、これが戌井凌駕という男なのです!

凌駕の日常の素行の悪さに加え、プレーも相手にガツガツ肘を入れたりかなりラフ。そんな凌駕の性格なので、好き嫌いはクッキリと分かれるかもしれません。

ですが、凌駕が力強く前進していく姿は熱くさせてくれるものもあると思います。 もし、そんな凌駕の姿を見たいのであれば、サッカーマンガとしての基本的な部分は面白いですし、その描写は是非ご自身で読んでいただきたいなと思います。

そして、もうひとつのポイントは、経験と実績を兼ね備え、サッカーの何もかもを知り尽くす老将、ヘルマン・ヴィーズラーが見せる魅力です。

数々の語録も生み出していくヘルマンは、渋いけど本当にカッコいい!

代表監督として初めての練習。
具体的に指示を出さず、ただ紅白戦をさせるヘルマン。

どんなプレーをすればいいのか、やり方が分からず顔色を窺いながら不安そうにプレーする代表選手たちに対して・・・

(‥‥いちいち顔色なんかうかがうな!
しっかりと「大人のケンカ」をやってみろ!!)

と、直接言葉には出さず、無言のプレッシャーをかけてみたり・・・

サウジアラビア戦を前に緊張した面持ちを見せる選手たちに対しては、W杯に出場するすべての国が日本のW杯出場を願っていると、一見優しい言葉のように見せかけておいて・・・

「なぜなら
皆 W杯の予選リーグで日本と同じグループに入りたいからだ!」

と、選手たちの気持ちを逆撫でしておいて、その顔でピッチに入れと戦闘モードへと仕立て上げてから送り出す。

先制ゴールを決めるという結果を残したものの、観客に対する態度の悪さを見せてしまった凌駕に、謝罪させようと息巻く連盟の会長に対しては・・・

「‥‥‥‥‥‥NO!
FWが『謝罪』しなければならない理由は
何一つありません―――― 」

と返し、その場を立ち去るヘルマン。

(‥‥‥‥FWがゴールを取るためにする行動に
謝罪など何一つ――――
『代償』はすでに払っている)

FWとして結果を出し、相手DFに厳しいマークを受け、身体がボロボロになるほどまでに戦った凌駕を擁護一面を見せます。まぁ、余計なイエローをもらった凌駕本人に対しては、厳しく叱り付けてたりするのですが。

そして、個人的に2巻までのヘルマンに関する描写の中で一番痺れたのがこれです。

「『サッカー』は…… 賭けなんだよ
私は『試合』に『私の名前』を賭けるんだ
栄光やキャリアや私の人生すべてが詰まった 『男の名前』をBETする
(中略)
私はね今まですべての賭けに勝ってきたんだよ
だから今『現場(ここ)』に居る!」

サッカー監督として数々の実績を残し名声を高めてきた男だからこそ、説得力を持たせられるこの言葉。所詮はマンガのキャラのひとりかもしれないけど、どこか吸い寄せられるように、その言葉に耳を傾けてしまうんですよね。

そんなヘルマンが相手なので、凌駕がいくら反発心を見せようとしても、結局はすべてを見透かされ掌の中で泳がされてしm・・・いや、凌駕の素行の悪さは時にヘルマンの計算を超えることもありますが、そんな2人のやり取りは見ていて面白いところでもあります(笑

緊迫したワールドカップアジア最終予選を舞台に、塀内先生が理想とするFW像、日本代表像といったものを乗せて、その中に塀内先生らしい人間ドラマを織り交ぜて描かれていく・・・それが『コラソン』という作品だと思います。

今回は、凌駕とヘルマンにしかスポットを当てられませんでしたが、ヘルマンによってスタメン抜擢された青野に崎谷、前回ワールドカップの呪縛に苦しみ続ける中神に醍醐、かつて凌駕との接触プレーによって大怪我から苦労を乗り越え代表まで登りつめてきた赤城など、脇役たちの物語もまた熱く読ませてくれます。

『Jドリーム』をはじめとした、塀内作品が好きな方には迷わず買い。
個人的にもすごく好きな作品のひとつに挙げられるものですので、もし、内容に興味があれば、一度手に取ってみてほしいなと思います。

ただ、凌駕のようなタイプのプレーヤー(というか人間性?)が嫌い、不快に感じそうであるのなら、少し様子を見た方がいいかもしれません。これだけは、付け加えておきます。

続く3巻では、グループリーグ首位を走るオーストラリアとの対戦が描かれていきます。

ヘルマンがかつて率いたチームでもありますが、日本代表が前回のワールドカップで対戦して屈辱の逆転負けを喫した相手。

特に、その代表チームで戦った中神、醍醐の2人は強い想いを抱いていますが、一体どんな試合になっていくのか注目です。

■ 掲載

【1巻】
第1話~第9話
週刊ヤングマガジン2010年第13号~第21・22合併号

【2巻】
第9話~第18話
週刊ヤングマガジン2010年第23号~第30号、第32号
オーストラリア戦前日、醍醐と凌駕が1対1をするところまで収録

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