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サッカーマンガを読もう!

ひとりの"サッカー好き"が書く、主観的なサッカーマンガの読書日記。『GIANT KILLING』と『ANGEL VOICE』を猛烈にプッシュ中!

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『LOST MAN 9』 / 草場道輝 

2010.09.07 01:24




※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください




“「今一番オススメしたい漫画」と大絶賛!!!”

漫画好きで知られている方とはいえ、まさかの麻生太郎氏が帯に登場!
『LOST MAN』9巻の感想です。


プレミアムリーグの開幕戦、マンチェスター・ユニオンvsバーミンガム・シティ。
味方GKの退場により10人での戦いが強いられ、先制点も許してしまったマツモトの所属するマンUでしたが、相手の執拗なマークに苦戦を強いられながらもそのセンスを見せ付けたシンプソンのパスによって同点に追いつきます。

マンUは、1人少ないとはいえ、その後も圧倒的に攻めるもなんとか勝ち点1を取るため必死に守備を固め引き分けを狙うバーミンガムをなかなか切り崩せず、残り15分となったところでいよいよマツモト(&ミッコリ)が登場!

9巻では、マツモトたちがピッチに降り立つところから始まっていきます。

9巻では、マツモトとミッコリが投入されたバーミンガム戦の決着、途中出場して十分な活躍を見せているにもかかわらずスタメン出場できないマツモトの苦悩、そして、コミュニティ・シールドでも対戦したリヴァプール・シティとの再戦といったあたりの話が描かれていきます。

結論から言えば、9巻もすごく面白かったです。

まず、サッカー描写が面白い!

シーズン5冠を目指すマンUの戦い。
マンUだってマンUと戦う相手チームだって、当然少しでも良い結果がほしい。そのためにお互い戦略や駆け引きを用いていきます。

描かれている戦略的な話そのものも面白いですが、それらを表現する草場先生の迫力ある圧倒的な描写力がまた素晴らしくて、サッカー描写をよりドキドキワクワクさせるものにしてくれます。

で、『LOST MAN』は、サッカー監督マンガというわけではないですが、マンUのチャーチルはもちろん、そのマンUを倒すために指揮を取る相手チームの監督のキャラもまた個性がしっかりと立っていて、それがまたサッカーマンガとしての面白さに彩りを添えてるのではないでしょうか。

そして、コメディ描写が面白い!

『LOST MAN』のコメディの女王と言えば、やっぱり詩乃さん。
(勝手にそう呼んでしまってごめんなさいw)

今回も、マツモトの記憶を取り戻すため催眠術をかけようとしてみたり、サカザキに扮してチャーチル監督にマツモトのスタメン起用を進言してあっさりあしらわれてしまったり、カーリーとじゃれ合ってみたり(違うw)といった行動で私たちを楽しませてくれます。

とはいえ、それらの行動すべては、マツモトのために向けられたもの。
詩乃のそのけなげな言動や喜怒哀楽の表情といったものは、時に予想外の方向性に突き進むこともありますが、とても愛すべき存在でもあります。

そして、サッカー描写と重なる部分もありますが、世界のトップリーグ、ビッグクラブを舞台に描かれていく物語が面白い!

同じポジションを争うマツモトとシンプソンの戦い。
この2人の心の中には、それぞれの思うところがあります。

十分な活躍を見せながらもベンチ生活から抜け出せず苦悩するマツモトに、高いパフォーマンスを示し続けるも接触プレーを避けるという絶対のポリシーを変えることのないシンプソン。

このふたりのポジション争いの鍵を握るのは、監督として起用する選手を選び立場である、サー・アリステア・チャーチルということになるのですが、このチャーチル監督がまたいいキャラを見せてくれているんです。

2人の選手の心理を上手く操り、チームをさらなる高みへと導いていこうとするチャーチルの描写には、ニヤリとさせてくれるものがありました。

マンUの生え抜きでU-13の頃から見てきたというシンプソンに対しては、今後の成長に高い期待感を示しながらも、シンプソンが接触プレーを避けるようになった過去の話に触れ(詳細は10巻あたりで描かれるはず)、接触プレーを厭わないマツモトの存在をチラつかせながら過去の呪縛からの脱却を促す言葉をかけます。

そうして迎えるリヴァプール・シティ戦。

この試合のスタメンは、前年のプール・C戦でシンプソンを封じられて敗れたにもかかわらず、やはりシンプソンのものでした。

1000の戦術を持つという、プール・Cの監督・サッカリーは、負けっぱなしを嫌うチャーチルはもう一度シンプソンを使ってくると思っていたと読み、それならばとこの対戦でも徹底してシンプソンを潰しにかかる策を採ります。

その策とは、GKのスローイングをわざとシンプソンに投げ、ボールをトラップする瞬間を狙いマーカーにコンタクトプレーさせるというもの。

しかし、シンプソンもプール・Cのマキャベリーノの激しいコンタクトプレーを巧みにかわし続け、味方へパスを供給していきます。・・・が、マンUの攻撃は、プール・CのGKバンクスにことごとく止められ得点を奪えず。シンプソンのほうも、タックルをかわしてると言っても、完全にかわしきれているわけではなく、マキャベリーノに足を削られ続けダメージを負っていきます。

それでも、激しく身体をぶつけ合うイングランドの伝統的スタイルを真っ向から拒むプレースタイルでプレミアムリーグを戦い続けるシンプソン。

そんなシンプソンのスタイルと共にこれまでいくつもの勝利をつかんできた味方のマンUの選手たちは、シンプソンのスタイルに理解を示しています。

だから、自分たちのやることは、先にバンクスの守るゴールを破ること。つまりは、バンクスを破るのが先か、シンプソンが潰れるのが先か。この両者の緊張感が伝ってきて面白いです。

そんなシンプソンのスタイルを否定するのがマツモト。

チャーチルの意向によって隣に座らされたマツモトは、自分だったらシンプソンのように回りくどいことをしなくてもコンタクトプレーで勝負できる。だから、今日の試合は、自分がピッチに立つべきだという主張をチャーチルにするマツモト。

そんなマツモトの主張に対して、チャーチルはこう答えます。

「質のいい嫉妬は人を成長させるものだな…」

シンプソンの当て馬として、マンUに加入したと思われたマツモトではあったけど、そう思わせといて、実はしっかり一選手としてマツモトのことを見ている。そんなチャーチルのサッカー監督としてのスケールの大きさを感じさせる描写がすごくいいんです。

そして、監督と言えば、プール・Cのサッカリー監督の描写もまた個性に溢れていていいキャラを見せてくれます。

シンプソンを潰すと言っても、怪我をさせて退場に追い込もうとしているわけではない(マーカーのマキャベリーノの本心は、まぁ違うところにあるのですが)。執拗にコンタクトプレーを狙い続けることで、シンプソンのメンタルに雑音(ノイズ)を入れるのがその目的。

まるで自分をスタジアムと言う名の劇場の指揮者のように振る舞い、作中でもサッカリーをそのイメージを適切に描いていく草場先生の作画といったものが、またその雰囲気を醸し出し、読む者に高揚感を与えてくれます。

「純白でいられなくなった背中の羽根は…
まさに堕天使(ルシファー)…
その胸のエンブレムに準じて落ちろシンプソン!!」

執拗なサッカリーの戦略によって、感覚を狂わされたシンプソンは、かすかなパスミスを犯し、しかし、そのかすかなミスが決定的となり、電光石火のカウンターを喰らい失点してしまう・・・

このあたりの描写力というのも、本当面白くて、主人公側からすれば失点のシーンなんですけど、鳥肌が立ってしまうほどでした。

しかし、失点を喫しても、チャーチルはシンプソンを代えることはしません。

またシンプソンも、一度ミスはしてしまったものの、そのプライドにかけて自分のプレーを続けていく。

削って削っても信念を貫き戦い続ける。
そんなシンプソンに、マーカーのマキャベリーノは苛立ちを覚える。

その苛立ち、何が何でもシンプソンをピッチから追いやってやりたいというマキャベリーノの意地がとうとう一線を越えてファールをしてしまい、マンUがフリーキックを得ます。

そのフリーキックを蹴るのは、自ら強く志願したシンプソン。

プール・CのGKバンクスとの駆け引きの中、バンクスの重心の逆を突いて、ふんわりとしたボールでフリーキックを決める!

遠藤のコロコロPKじゃないですけど、シンプソンの蹴ったボールって、本当にふわ~っとしたコントロールショットだったと思うんです。作画からも、それを感じさせてくれます。あのゆっくりと時間経過してる感が良いです。

読んだ方向に蹴られる分にはなんてことのないキック。
けど、完全に逆を取られてしまっているバンクスは、どんなにふんわりとしたキックであっても、それに反応できずただ見送るしかできない・・・。

そしてゆっくりとゴールマウスに吸い込まれていく・・・
このイメージが頭に描かれた瞬間、鳥肌が止まりませんでした。
スゲーよ、やっぱり草場先生の描くサッカー描写はすごいです。

・・・と、連載を読んだ当時、私はこのように書いていたのですが、とにかくこのゴールの描写は9巻の中でも一番シビれるものだったと思います。

失点をしてもシンプソンを辛抱強くピッチに立たせ続けたチャーチル、神に誓って己の信念を貫き通し自らのミスを取り返したシンプソン、そんなライバルのすごいプレーにワクワク感を抱きつつもシンプソンの伝説を超えるため気を引き締めピッチへと向かうマツモト・・・。なかなか文章のみでは伝えにくいのですが、いやぁ、今の『LOST MAN』は面白すぎるだろと言わずにはいられません!

そして、満を持してマツモト登場となり9巻は終わるのですが、この話が最高に盛り上がってきたところで話が切れるというのがまた上手いなと思ってしまいますね。

これまでも十分面白かったですが、9巻はこれまでの中でも最高の出来だったというのが私の感想です。

本当、草場先生は、その圧倒的な描写力といい、戦略や駆け引きの描写といい、読んでいて本当面白くて、サッカーマンガを描いてこそ最高に輝く方だなということを確信させてくれます(・・・と書いてしまったら、草場先生本人は不本意に思われるかもしれないですが)。

初期の『LOST MAN』が合わずに読むのをやめてしまった方、サッカーが好きな方には、個人的には強く勧めてみたいです。もっと多くの人に読まれる作品だと思うんですよ!

もし読んだことのないという方は、現在スピリッツの連載の方も面白いので、まずそちらからでも読んでみて下さい。合う合わないはそれぞれあるにしても、一度は目を通してみてほしいなと思います。

現在、面白いサッカーマンガがたくさんありますが、その中でも、 純粋にサッカー描写の部分において、個人的には今一番面白いサッカーマンガだと言います。

続く11巻では、リヴァプール・シティ戦の決着が描かれていきます。

満を持してシンプソンと交代でピッチに立つことになったマツモトは、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか。

毎週連載で読んで熱くなっていますが、また単行本として読むのも楽しみです。

■ 掲載

第78話~第87話
週刊ビッグコミックスピリッツ2010年第10号~15号、17号~20号
シンプソン意地の同点フリーキック、そして満を持してマツモトが登場するところまで収録

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