今週の連載雑感(2010年5月24日~5月30日)
2010.05.30 23:55
時間がなかったり、更新すべき記事が溜まってたりなのでサクサクいきます。
■ 今週の雑感リスト
- ANGEL VOICE
- LOST MAN
- コラソン ~サッカー魂~
『LOST MAN 8』 / 草場道輝
2010.05.30 02:42
※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください
「マツモトの成長していく速さには驚いているが、
俺のほうが上にいくよ」
本田圭佑選手が帯に登場(2度目)している、『LOST MAN』8巻の感想です。
イングランド・プレミアムリーグのビッグクラブ、マンチェスター・ユニオンの一員になったマツモトは、リーグ開幕前のコミュニティーシールド、リバプール・シティ戦に途中出場。マツモトと交替したチームの絶対的とも言える司令塔、アルバート・シンプソンと遜色ないプレーを見せ、観客の喝采を受け一躍注目を浴びる存在となったマツモト。
8巻では、試合翌日、センセーショナルなデビューを果たしたマツモトのことが過熱的に報じられている様子を描き、マツモト、サカザキ、詩乃の3人が、これまでのホテル暮らしからマンチェスターに新たな拠点へ移り住むところから始まっていきます。
※
8巻で描かれていく主な内容は、いよいよここに来て明かされることとなったマツモトとサカザキの過去を描いた話と、プレミアム・リーグ開幕戦のバーミンガム戦。
8巻の前半で描かれていく過去編では、15年前マツモトが記憶喪失になってしまうきっかけとなった出来事から現在に至るまでの過程が、その期間をともに過ごしたサカザキの口から語られていきます。
当初、短期集中連載という形で始まった、初期の『LOST MAN』とは、若干設定のニュアンスが変わってしまっているように感じられる部分もあるのですが、作品の本筋、核心に迫ったお話として要注目のエピソードだと思います。
結果、マツモトとサカザキとの間で交わされていた代理人としての契約は、マツモトがビッグクラブでプレーし賞賛を浴びるようになったことにより契約は終了。そしてマツモトはサカザキと別れることになっていきますが、まだサカザキの野望が達成されたわけでもなく、マツモトのことを狙っていたデビッド・トラウズマとパートナーを組むという展開にもなり、まだまだ物語に深く関わる重要人物で話を面白くしていく存在であり続けるでしょう。
そして、8巻の後半では、プレミアムリーグの開幕戦のバーミンガム戦の様子が描かれていきます。
コミュニティ・シールドで活躍は見せたものの、シンプソンからポジションを奪うまでには至らなかったマツモト。
ピッチの中に主人公の姿はありませんが、それでもやっぱり、草場先生の描くサッカーマンガの面白さは健在です!
マンUは、試合序盤こそシンプソンを中心に攻勢に出るもののなかなかゴールを奪えず、逆にちょっとした不運もあり、カウンターから味方GKが相手選手を倒してPKを献上。そして、先制点を許してしまった上に、ファールしたGKも退場となり、10人で戦うことを強いられてしまいます。
さらに、なぜか接触プレーを極端に嫌うシンプソンの弱点(欠点)を徹底的に突いてくるバーミンガム。この展開に観客も焦れますが・・・、それでも動く気配をまったく見せないマンUの監督のチャーチル。
「ウィークポイントの一つや二つ… 誰にでもあるだろう。
それを補って余りあるストロングポイントを備えているからこそ……
王者のチームで不動の司令塔を張れるというものだ」
このチャーチルの言葉通り、シンプソンは欠点を吹き飛ばして余りある、己のプレーの本領を発揮します。
自身の右サイドを走るロジャーズ(C・ロナウドがモデルっぽい人)にパスを出すような動作を見せつつ、相手DFの意識を重心をロジャーズへと向けておき、そのコンマ数秒の時間を突いて左サイドを走るコンラッド(ルーニーがモデルっぽい人)にパスを送るシンプソン。
パスとしては凡庸のように見える・・・けど、かすかに見えるコンマ数秒の駆け引きによって逆を突かれてしまっているバーミンガムの選手たちは、反応したくてもすることができない。そして、そのパスがコンラッドのゴールをアシストする結果となりマンUが同点ゴールを奪う。
言葉で書くと上手く伝えられないのですが、このシーンを描く草葉先生の描写力は素晴らしいのひとことです。
作画の表現力も素晴らしいのですが、それにナレーションのテキストと組み合わさることで、さらに想像力をかきたたせてくれて・・・、本当にドキドキワクワクさせてくれるなと思います!
8巻では、そういったシーンはこれのみですが、今後もっとこういう展開を魅せてくれるんです。残念ながら、先のネタバレはここではできませんが・・・(興味があれば、連載雑感を辿ってみて下さい)。
連載初期の『LOST MAN』は、『ファンタジスタ』のサッカー描写が好きだった人に、(作品としての方向性の違いから)必ずしも勧められるというものではなかったのですが、今の『LOST MAN』だったらそういった人たちにも堂々と勧められる、むしろ読まないと損するぞと言って伝えたいほど私はすごく気に入っているという状態です(笑
個人的に、純粋にサッカー部分の描写においては、今一番輝きを放っている作品だと思っています。だから、もっと多くに人に読まれてほしい・・・、そう願っています。
少し話はそれましたが、その後、さらに逆転ゴールを奪うため、マツモトとミッコリを投入する決断をするチャーチル・・・ですが、その先は9巻を読んでのお楽しみとなります。
※
『LOST MAN』の単行本を買う時、ひとつのお楽しみとなっているのが、巻末のおまけまんがです。
そのおまけまんが、今回は2ページでもOKとのことだったのですが、とある事情によって10ページ分を描かざるを得なくなってしまった草場先生。
それは、、8ページ分増やしてまで(=単行本の製作単価が上がる)草場先生が描いた“20万円のネタ”については・・・、是非とも単行本で、ご自身の目でご覧になっていただきたいと思います。
・・・草場先生、こんなところでまんがの神様が光臨させなくたって・・・。
※
さて、続く9巻では、プレミアムリーグ開幕戦・バーミンガム戦の続きから描かれていきます。
シンプソンとマツモトを同じピッチの上に立たせる決断をしたチャーチル監督。
その采配はどんな結果をもたらすのか、ここからさらに面白いサッカー描写が多く見られるようになっていくので、単行本派の方は楽しみにしておいて下さい。私も単行本で読み返すのがすごく楽しみです。
■ 掲載
第68話~第77話
週刊ビッグコミックスピリッツ2009年49号~53号、2010年2号~8号
プレミアムリーグ開幕戦、マツモトが交替出場のためにジャージを脱ぐところまで収録
タグ : LOST-MAN