『MAGiCO 5』 / 佐久間力
2010.04.21 21:04
※ネタバレとなりうる要素も含んでいますのでご注意ください
書くのが少しばかり遅くなってしまいましたが、『MAGiCO』5巻の感想です。
高校総体県予選を戦う撫高。
1次予選の3回戦、閃光の司令塔・脇坂を擁する湘南育英に苦戦を強いられた撫高でしたが、最後は蔵希の魔法(マジコ)が炸裂し2-1で勝利。
5巻では、そんな湘南育英戦の勝利が決まった瞬間後、喜びを爆発させる撫高メンバーたちの様子を描いたシーンから始まっていきます。
そして、話は1次予選の決勝へと話は移っていきます。
1次予選決勝の相手は青葉第一。
青葉第一は、身長が190cm以上あるというセンターバック2人、難攻不落のツインタワー黒田と福島がゴール前に立ちはだかる、本来だったらシード校クラスの実力を持つ相手。
そんな相手に撫高はどんなサッカーを見せてくれるのでしょうか?
※
5巻の見どころは、まるまる描かれていく青葉第一との戦い。
黒田&福島のCBツインタワーは、攻撃でもツインタワーを成し、攻撃時にはゴール前まで上がりFWとして果敢にゴールを狙っていく・・・。
ゴール前で持ち前の高さを活かしたプレーもあれば、レフェリーのジャッジを上手く味方につけようとするクレバー(狡猾)さもあったり、何よりケガすることを恐れない攻守に渡った激しいプレーで撫高を苦しめるツインタワーの2人。
FWのごとくCB2人が同時にゴール前に上がるというのは、漫画だからこそできるプレーではありますが、これはこれで面白いんじゃないかと思います。
じゃあCB2人が同時に上がるなら、上がったそのスペースを突けていけばいい。
しかし、ゴール前の攻防を守り切った撫高が、カウンターで攻めようとしても、CMFの可児小太郎があり得ないほどのスピードとスタミナ、的確なカバーリングで撫高の攻撃の芽を摘んでいきます。・・・いくら漫画とはいえ、これは反則かもしれません(笑
結局は、その可児にもゴールを決められてしまい、0-3とリードされた状況でハーフタイムを迎えることになる撫高。
5巻の本当の見どころはここからにあります。
撫高の苦戦の要因のひとつなっていたのは、撫高の左サイドが再三に渡って破られ、クロスを入れられてしまっているところありました。
蔵希を除き、3点のリードを奪われ意気消沈する撫高のメンバーたちの中でも、特に自分のところを破られてしまった左SBを守るダッキーこと喜田は強い責任を感じています。
そんなダッキーに言葉をかけたのは蔵希。
蔵希は、ダッキーのユニフォームを脱がせると・・・
「こんだけ汗かいてる奴を誰が責めんだよ」
と、ユニフォームを絞ります。
そんな蔵希の行動が、ダッキーばかりでなく、他の選手たちの闘志をも蘇らせていく・・・。このシーンがすごく私は好きですね。
そして後半、前半とは打って変わって意地を見せ始めるダッキーは、相手の突破を止め、相手のスライディングも軸足でブロックしつつキープし、勝利への執念を見せて蔵希へとつなぐ。
蔵希もダッキーの思いに答えるべく、可児のマークが迫る中、魔法(マジコ)ではなくすねに当てた状態で、強引に脚を振り抜いてシュート。それが、思いも寄らぬ軌道を描きゴールが決まる・・・いやぁ、このシーンは熱かったですね。マジコを発動させたのではなく、気持ちで決めたゴールだったところがまた良かったんじゃないかと思います。
その後は、今後のきっちり魔法(マジコ)でもってゴールを決める蔵希。
蔵希の発動する魔法(マジコ)は、やはり読む者をワクワクさせてくれます。
シンプルで王道的はあるけれど少年漫画らしい熱血さと、サッカーというスポーツを崩さない程度に漫画じゃなきゃできないスペシャルな個人プレーを魅せてくれるサッカー描写。このあたりのバランスがひとつの少年サッカーマンガ漫画の形として優れていて、個人的にはリアリティ側にバランスが振られた作品の方が好きではありますけど、これはこれで面白いなぁと思いますね。
サッカーマンガにおけるリアリティとファンタジーのバランス感覚の好みって人それぞれあると思うんですけど、適度にサッカーもしていて、“適度にファンタジーのあるプレー描写もあってほしい”という作品をお求めなら、一度手に取ってみてほしいなと思います。
※
さて、続く6巻では、青葉第一戦の続きが描かれていくことになるはずですが・・・
単行本の帯にもありますが、現在佐久間先生は、『岡崎慎司物語』の読み切りを月刊少年ライバルに掲載中ということで、『MAGiCO』の連載をお休みしています。
なので、まだ6巻収録分も連載されていないですし(別の言い方をすれば、単行本と連載のライムラグがないので、連載を追いかけるなら今ですよ!)、単行本が発売されるのは結構先になってしまうと思われます。
果たして、まだ1点のリードを許している撫高は、同点、そして逆転していくことができますでしょうか。5巻のラストにチラッと登場した謎の少女の正体と共に気になるところです。
■ 掲載
STAGE16~STAGE19
月刊少年ライバル2009年12月号~2010年3月号
青葉第一戦。3点のリードを許している撫高が2点を返すところまで収録。
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