『GIANT KILLING 12』 / ツジトモ 原案・取材協力:綱本将也
2009.10.24 18:14
※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください
※連載を読んだ当時の感想を読みたい方は、今週の『GIANT KILLING』アーカイブから辿ってみてください。
私にとっては、今一番のサッカーマンガであり続ける、『GIANT KILLING』12巻の感想です。
リーグ戦はちょうど折り返し地点の第17節。
ETUvs東京の東京ダービー。
12巻では、ちょうど試合がキックオフされるところから始まっていきます。
※
12巻は、まるまる東京ダービーの様子が描かれています。
(決着はつきません)
今度こそ東京Vに勝ちたいと、アウェイでの戦いに臨むETUと、2年連続のリーグ戦王者ではあるけれど、今シーズンは不振にあえぐ東京V。
ETUサポ視点で読んでいると、(特に初見なら)段々とドキドキが止まらない展開になっていくと思います。
試合序盤は、椿が素晴らしいミドルシュートにより先制し、その後も達海のスカウティングの成果もあり、チーム全体が集中して守り、時折効果的なカウンターも発動させ、いいサッカーを見せていたETU。
しかし、東京Vも前半の終盤あたりから、攻撃の形を作り始め、さらに後半は選手同士の話し合いによってウィークポイントを解決し、徐々にETUのことを押し込んでいきます。
攻撃は、起点の王子が三雲のマンマークにより封じられ、その王子は達海の指示により、三雲をサイドへと引き連れ、空いた中央のスペースを椿の仕掛けで突破しようと試みるも、チームで対応され形を作らせてもらえず。
守備でも、バーを叩くシュートを打たれたりなど、さらに東京Vの勢いが増し、読む側のドキドキ度も増していきます(苦笑
「良い方向に回り始めたように見えるかもしれんがね……
我々が欲しいのは過程ではなく結果なのだよ
このスコアのまま笛が鳴れば我々の検討など意味をなさない」
と、名門クラブとして、あくまで結果を求める監督の平泉は、ここで怪我による欠場が続いていたエース・持田をピッチへと投入。
誰よりも鬼気迫る持田の勝利への欲求は、東京Vの選手たちにも刺激を与え、エースの復帰を待ち望んでいたホーム東京Vのサポーターたちも、持田に呼応しスタジアムのボルテージ上げていきます。
さらにさらに勢いを加速させETUを圧倒していく東京Vに、読む方のドキドキ度にさらに拍車をかけてくれます(苦笑
達海は達海で、監督として修正を試みようとしているのだけど、ここは東京Vでホーム、持田劇場と化していくスタジアムで、それを押し返していくのはなかなか難しい・・・。
でも、このあたりの、(達海の言葉を借りれば)「主導権をめぐる追いかけっこ」は、緊迫感があって、見応えあったと思います。
東京Vが押しているとはいえ、まだスコアは前半の1点のリードを守れている。
怪我明けでも、その実力を誇示する持田のマンマークを命じられた椿は、今後どう対峙していくのか。この東京ダービーの決着は、13巻でのお楽しみとなります。
※
個人的に、12巻で一番好きな場面は、椿のゴールシーンでした。
ツジトモ先生の描くゴールシーンは、本当、キレイなものが多いと思います。
(5巻の椿もそうですし、9巻の世良や10巻の堺なども、それに当てはまるでしょう・・・)
漫画の表現の手法についてよく分かってない私が言うのもアレなんですが、
ツジトモ先生のダイナミズムを感じさせてくれる構図やカメラワークのセンス、時間の空間の操り方が好きです。吸い込まれそうになるほど美しい・・・と、私は思います。
絵柄は正直言うと、5巻あたりのものが好きだったりするのですが、小さなコマでも選手の見分けがつきますし、細かい選手のポジションニングやプレー意識もしっかりしていて(#108の19ページ目の引いた画など)、そういった部分もツジトモ先生の描くサッカー描写の好きなところです。
あと、好きな場面というか、インパクトがあったのは・・・
やっぱり、持田のあれ?(笑
モーニング本誌で初めてカラーで見た時、素でビクッとなってしまいましたが、単行本のモノクロもモノクロなりの怖さがありますね・・・。
※
あとは、本編以外のお話。
まずは、毎度恒例となっている初版限定のステッカー。
非常にシンプルな出来となっています。
巻頭部分には、コータの作文が!
「いいかげんけっかを出してほしいです。」には笑ってしまいましたが、いつかETUの選手になれるように頑張ってほしいですね。
おまけカットは、レオナルドも地味に好きなのですが(そんなイメージがあるのでw)、ガミさんのを推しておきたいと思います。ガミさん、10巻までほとんど出番なかったのに、完全にポジションを確立しましたね(笑
※
さて、続く13巻も東京ダービーの続きが描かれていきます。
持田がピッチに登場し、さらに勢いを増していく東京ヴィクトリー。
ETUは、数年ぶりに東京ダービーを制することができるのか。
13巻は、巻末の予告にヒントがありますが、東京ダービーの決着以外にも、私たちに様々な感情を感情を与えてくれるものになっていると思います。単行本派の方は、楽しみに待っていてください。一時期に比べれば勢いが落ちてきた感も否定はしないですが、次回は(ある部分では)大いに期待してもらっていいと思ってます。
■ 掲載
#108~#117
週刊モーニング2009年17号~27号
東京ーダービー後半、持田投入、いきなりその力を見せ付けるところまで収録
タグ : GIANT-KILLING