『LOST MAN 5』 / 草場道輝
2009.09.01 21:05
※ネタバレ要素となるえる要素を含んでいますのでご注意ください
「漫画のキャラだろうとサッカーでマツモトには負けたくない!!」
という、本田様の帯が目を引く(というか、びっくりしたw)、『LOST MAN』第5集を読んだ感想です。
マツモトが、ファゼンダからローカスツへ電撃移籍をした直後に行われた、ローカスツvsファゼンダの因縁の運命をかけた大一番。
試合は、マツモトに対して私怨の炎を燃やすガイアーナがゴールを決めファゼンダが先制。
その後は、自力で勝るローカスツがボールを支配するも、それに屈せず、ラインを押し上げ中盤の激しいプレスで必死の食い下がりを見せるファゼンダ。
そんな中、ファゼンダを潰そうと目論むカルロスを失脚させるため、裏で動きを見せるサカザキ・・・
第5集では、(ルーマニア編と比べて)長く続いたファゼンダ編が完結。
そして、新天地・イングランド編がスタートしていきます。
※
まずは、完結したファゼンダ編についてから。
私的には、とても面白く読ませていただきました。
それを支えていたのは、ファゼンダの人々(とマツモト)の人間ドラマによるものが大きかったと思います。
4巻でマツモトと約束した通り、ファゼンダFCを守るために、スタジアムの外で署名活動をし、自分たちにできることを実行に移す子供たち。
スタジアムには入れなかったけど、スタジアムの外から、消滅の危機にあるファゼンダFCへ懸命に声を送るサポーター。
その規模は大きくないかもしれないけれど、生まれ育ったファゼンダという土地に対する誇り、その象徴であるファゼンダFCに愛情を示す人々の姿は、心打たれるものがありました。やっぱり、私は、こういう話に弱いなぁ・・・。
試合シーンでは・・・
ファゼンダからローカスツへ移籍したマツモト自身のゴールによって2-1とファゼンダを逆転しますが、それにより心が折れてしまったオルテガを煽るマツモトの言動。
「サポーターが諦めとらんのに、お前らが諦めてどないすねん!!
サポーターに恥かかすなドアホ!!」
4巻の子供たちに対してもそうですが、記憶喪失のマツモトには持つことのできない、故郷の誇りを持てるファゼンダの人々に対して垣間見せた、マツモトの人間味ある言動が私は好きです。
そして、マツモトの煽りによって、闘争心を蘇られた選手たちは、ファゼンダを愛する人々のために、自分たちの誇り、未来のために戦っていきます。
ファゼンダから、ローカスツへと移籍したマツモト。
ファゼンダにとって、マツモトは、いつしかとても大きな存在になり、チームに多くのものをもたらしていた。だからこそ、とてもショックが大きく、“裏切られた”という想いが強くなっていく・・・(若干ひとりの私怨を除くw)。
「その大きすぎたマツモトの存在がくやしいのなら…
オレがマツモトと同じ存在になるしかない!!
それが、チームを去ったマツモトに対する本当の決別だ!!」
メンバーの誰よりも、マツモトに対する思い入れが強かったであろう、チームの大黒柱・ティアーゴのさらなる覚醒から始まった、ファゼンダFCの同点ゴールの場面もまた熱かったですね。
・・・しかし、“勝利請け負い人”であるマツモトは、主人公でもありますし、当然このままでは終わらない。
タイトなマークで自由にプレーさせまいとするティアーゴを一瞬で振り切り、再度ファゼンダFCを突き放すゴールを決めるマツモト!
この見開きを連続させたゴールシーンは圧巻でした!
『LOST MAN』は、全体的にサッカー描写は少なめですが、その中でも草場先生のサッカー描写力は素晴らしいです。
ファゼンダFCは、結局、試合に敗れてしまいましたが、カルロスの失脚により(このへんは、私には茶番にしか見えなかったのですがw)、街の平和は守られることに。
マツモトたちは、ビジネス主体でサッカーをしている流浪の勝利請け負い人なのだから、ルーマニア編のように後味の悪さが残る結末というのは、それはそれでアリだと思います。
ですが、ファゼンダ編のように、周囲の人々に受け入れられ、温かさが感じられる結末というも、やっぱりいいですよね~。
子供たちが「なんでやねん」の地上文字で飛行機で飛び立ったマツモトにメッセージを送る別れの場面はジーンときたなぁ。
これまでの感想の中でも度々書いていることですが、短期集中連載だったルーマニア編と違って、ファゼンダの人々との関わり合いを、しっかりと描いていたからこそ、これだけ胸が熱くなれたんだと思います。
・・・ということで、ファゼンダ編は、人間ドラマ色の強い物語ではありましたが、私的には、すごく面白かったです。
※
ファゼンダの地を飛び立ち、マツモトたちの次なる目的地となるのが、フットボールの母国・イングランド。
今回は1話分、ほんのさわりの部分しか描かれていないのですが・・・
「だからイングランドのサッカーは熱い!!」
マツモトたちが、スタジアムへ試合を見に行った場面で描かれた、スタジアムの臨場感は、なかなか素晴らしいものがあったと思います。
草場先生のコメディ描写も大好きだけど、やっぱり、私はサッカー描写を描いている時が一番好きなので、イングランド編では、もっとサッカーを多く描いてくれることに期待したいですねー(笑
また、巻末では、イングランド編を描くにあたってのちょっとした裏話が描かれていて、そちらも要チェックです。。
※
さて、続く第6集では、イングランド編が本格的に描かれていきます。
次なる舞台は、イングランドのビッグクラブ、マンチェスター・ユニオン(通称・マンU)。
これからチームへの加入を試みようとする段階ですが、『LOST MAN』という作品物語の核心部分に迫っていくことも予感される、イングランドでのマツモトたちの物語に注目です。
■ 掲載
第38話~第47話
週刊ビッグコミックスピリッツ2009年14号~25号
マツモトたちがイングランドへ渡ったところまで収録
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