『LOST MAN 3』 / 草場道輝
2009.01.31 23:52
※微妙にネタバレ要素がありますのでご注意ください
4ヶ月ぶりの発売となった、『LOST MAN』の第3集。
この第3集から、スピリッツ掲載分となっていきます(とはいえ、話は普通に前巻の続きとなっていますが)。
第2集に引き続き、話の舞台は、ブラジル・ファゼンダ編。
これまで、降格の危機に陥っていたファゼンダFCでしたが、主人公である、さすらいの勝利請負人・マツモトが加入し、勝利を重ね上位進出も狙えるポジションに。
マツモトは、ファゼンダFCではイギータもびっくりの超攻撃的GKとして活躍し、瞬く間にチームの絶対的な中心プレーヤーとなっていくのですが、その裏では、ファゼンダFCを潰そうと目論む、ローカスツのオーナーであるカルロス・ゴードンと接触するマツモトの代理人のサカザキ。
そんなところに、短期集中連載版のヒロイン的存在であった、桂木詩乃がマツモトたちを追いブラジルまでやって来て、おいおい話は一体どうなってしまうんだ?
そんな状況から、第3集は始まっていきます。
※
まず、第3集を読んだ感想の結論から書きますと・・・
"草場先生の描く"、サッカー描写もコメディ・ギャグ描写もどっちも高次元に面白ぇー!
なんですよね(笑
1~2集の感想のところ・・・というか常々書いていることですが、サッカーマンガとして、草場先生の前作である『ファンタジスタ』と同等の、決定機を演出するプレーの創造性へのドキドキワクワク感を求めていくのはちょっと難しいのですが・・・
リスクを負ってでも超攻撃的GKとしてプレーし続けるマツモトを見ているのは面白いですし(ゴール前がガラ空きにして戻りきれず失点してしまうというご愛嬌を描いているところもいい)、また、マツモトがFWとして5秒以上確実にキープできることの意義について描いた場面は、草場先生のサッカーマンガらしい面白さがあったと思います。描写力も高い水準にありますしね。
サッカー描写に見どころは確かにあります。
・・・けど、ピッチの中のサッカー描写が少なめであることと、先程も書いた『ファンタジスタ』のあのフィーリングを求められないことをどう受け取るか。それによって、この作品に対する評価が変わってくるのではないかと思います。
私自身は面白いと思ってますが、ファンタのような高揚感が得られるサッカーマンガをまた読みたいという気持ちがあるのもまた事実・・・。あ、でも、もしかしたら、マツモトの最終形はファンタジスタになるって可能性は残させているんですよね。そのあたりは、今後に期待してみるとしましょう。
※
ピッチの中でのサッカー描写が少なめだけれど、それでも、私がこの作品を毎週楽しみしているのは、草場先生描くのコメディ・ギャグ描写も面白いから!
そのへんのツボというのは、読む人個々の感性によって結構違うところだと思いますが、私は大好きなんですよ!
前編のヒロインの詩乃の登場により、ファゼンダ編のヒロイン的存在のイリアーヌとの間でラブコメ展開になっていかなかったのは、ちょっぴり残念ではありましたが、お互いの本心は知らずとも、同じ人を想うところで気持ちがシンクロするふたりの描写は今回の個人的な密かな見どころです(笑
少し話は横道にそれますが、現在刊行中の『ファンタジスタ』の文庫版を読んでいて思うのは、草場先生はキャラの表情を描くのがすごく上手くなったなぁということ。
それを一番感じさせてくれるのは、マツモトに恋するイリアーヌの表情なんですよね~。
逆にカルロスに対しては、これでもかってぐらいに憎しみの表情を見せたり、時には大胆な行動に出て見たり(第2集参照)、このマツモトに恋するイリアーヌは注目ポイントのひとつに挙げていいのではないでしょうか。
あとは、無駄にゴージャスに作られた"最高級のたこやき"とか、塩じゃなくて砂糖をまいたティアーゴ、えせロナウジーニョがマツモトに絡むところがツボでした(笑
基本的にシリアス系の作品ではあるのですが、この適度なコメディ・ギャグ描写が、アクセントになって、私にとってはすごく面白い作品になっているのだと思います。
※
さて、続く4巻は、まだまだファゼンダ編が描かれていきます。
いよいよファゼンダとローカスツの因縁の対決がスタートしていくわけですが・・・。
ブラジルへと舞台を移した、現在描かれているファゼンダ編では、周囲の人物との関わり合いがよく深くなっています。
マツモトがファゼンダFCで活躍し、ファゼンダの人々との関わり合いが深く描かれているからこそ、マツモトがファゼンダからローカスツへと移籍が決まったときのファゼンダの人々の受けたショックは大きいのだけれど・・・
それが逆にファゼンダFCのメンバーたちの闘志に火をつけていくことにもなり、彼らの意地・プライドと勝利だけが自分の存在証明であるマツモトの命運を賭けた闘いに注目です!
とりあえず、私的には、かなり面白い部類に入る作品ではあるので、興味のある方はチェックして見てはいかがでしょうか。
■ 掲載
第19話~第27話
週刊ビッグコミックスピリッツ2008年第42号~第50号
マツモトがゴードンに頭を鷲づかみにされるところまで収録
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