『オーレ! 4』 / 能田達規
2007.09.10 22:50
市役所で勤務していた公務員の主人公が、プロサッカークラブに出向し奮闘する姿と、貧乏サッカークラブのシビアな現実を描いた、個人的にも大好きなサッカーマンガのひとつである『オーレ!』の4巻です。
横浜キングスに勝利し、かろうじてアマチュアリーグへの自動降格を逃れることはできたオーレですが、それだけでは、まだ終わりません。N2残留を果たすための最大の山場、サンガイア宮崎との"入れ替え戦"が、今回のメインとなっています。それと、来シーズンへ向けての部分も少し。
もうとにかくですね、内容的に濃密で熱いです!
喜怒哀楽、さまざまな感情に駆られます。
喜:芝田さんの活躍や入れ替え戦の結果、何より、連載が続いてくれそうな展開へと向かっていってくれたこと(何気に、入れ替え戦で連載終わるかもと思ってましたw)。
怒:チェアマンの言動のすべて、後輩のお役所仕事ぶり。
哀:入れ替え戦で活躍した、芝田さんや竹内がチームを去ってしまうこと、「夢では食べていけないのよ」の中島母の発言。
楽:そんな『オーレ!』というサッカーマンガを楽しんで読んでいる自分(笑
う~ん、ちと強引だったかな( ̄▽ ̄;)
まぁ、とにかく、全体に渡って、テンション高く、感情移入して読めました。
そんな中でも、一番自分を熱くさせてくれたのは、やっぱり、ミスターオーレ・芝田さんの活躍です!
オーレ在籍12年、アマチュア時代からの生え抜き選手で、オーレが5年前にN2へ昇格したときの中心選手だったDFの選手なのですが、近年は怪我に悩まされ、とうとう戦力外通告を受けてしまった芝田さん。
アマチュア時代から在籍し、苦楽をともにしたクラブに対し、強く愛着を持っていて、たとえ、戦力外通告を受けようとも、契約期間が切れるまではオーレの一員だからと、本来選手がすることではない雑用もこなす芝田さん。
そんな姿を見るだけでも、心を打たれるのですが、そんな芝田さんに、味方選手の怪我という理由とはいえ、もう1点を取らないと降格してしまうような状況の中で出番が訪れます。
交代出場する直前、佐倉監督を握手を交わすシーンがあるのですが、実はその佐倉監督も元はオーレの生え抜き選手(コーチからシーズン中に監督へ)。 この同期のふたりの握手のシーンは、さりげなく描かれているんですけど、とても言葉じゃ言い表せないような、強い想いが感じられます。
この土壇場での、ミスターオーレの登場に、スタジアムのボルテージは高まり、スタジアムの雰囲気を変えていく芝田さんの存在感には、鳥肌が立ちました(個人的には、レッズがJ1昇格を決めた試合、延長前の岡野がダッシュしたときをイメージしてますw)。
そして、入れ替え戦は最高のクライマックス迎えます。
アウェイゴールの1点を守り逃げ切ろうとするサンガイアから、体を張ってボールを奪った芝田さんは、右サイドにロングパス。そこから、上がったクロスボールはキーパーに弾かれますが、そのこぼれたボールの先にいたのは・・・
「この一蹴りにオレが上総にいた全てをかける!!」
芝田さんが、全身全霊を込めて放ったシュートは、ゴールマウスに吸い込まれ、オーレが逆転!
本当、最高ですよね。
それ以外に、言葉が見つかりません。
戦力外通告を受けた選手が、味方選手の負傷退場で出番が巡ってきて、なおかつ、勝負を決定付けるゴールを決めてしまう・・・。
なんとなく、そんな予感はしていた、リアリティの観点から見れば出来すぎた展開だ(十分アリではありますけどね)、それでも、それでも・・・、アマチュア時代からクラブを支えてきた生え抜きの芝田さん(選手の入れ替えが激しい2部の下位チームだからこそ、その存在感はひときわ輝いていると思う)の活躍はすごく嬉しかったし、本当に泣けました。スタジアムが盛り上がったときの臨場感も、たまらないですね。のー先生は、そこの描き方が上手いですよね。
途中、チェアマン絡みの話が出たとき、本当に嫌で、連載を立ち読みしてた当時は、一時的にテンションが下がったりもしたんですけど、芝田さんのおかげで、そんな感情も吹っ飛んでしまいました(笑
で、芝田さんは、オーレを戦力外となってしまいましたが、現役を続けるために、トライアウトに参加することになります。
「あの入れ替え戦で火がついてしまいました
まだ自分はプロでいたい――
現役を続けたい――
オレはまだ自分を諦められない」
くぅーーー(川平風にw)、めちゃくちゃカッコいいじゃないですか!
芝田さんが、その後どうなったのかは、現段階では描かれてませんが(そのうち出てきますよね、のー先生?)、どこか移籍先が見つかればいいな~と思います。
てか、オーレと再契約というのもアリですよ?(笑
(実際に戦力外通知を受けた選手が元クラブと再契約するパターンはあります、札幌の川崎健太郎とか)
さて、つい芝田さんのところに力を入れすぎてしまいましたが(苦笑)、他にも、のっけから出てくる某県知事とか、1億のスポンサーマネーを得るために究極の選択を迫られる中島(主人公)の苦悩だとか、巻末のおまけまんがなど、他にも見どころは多いです。
次の5巻は、今回のレビューでは存在感が薄かった主人公・中島に触れることが多くなると思います。
今回の掲載範囲が、リアルタイムの連載にだいぶ追いついてきてしまったので(休載が多いのでやむなしか)、ちょっと間が開いてしまいそうなんですが、 5巻の発売を楽しみにしてます。
『GIANT KILLING』とは、ノリが違いますけど、サッカークラブを舞台にした、熱いドラマを描いたものが好きな方は、ぜひ読んでみてください。
■ 掲載
27話~35話
週刊コミックバンチ2007年5月11日・18日合併号~8月3日号)
1億円条件に苦悩する中島のシーンまで収録
タグ : オーレ!