『龍時 3・4』 / 原作:野沢尚 漫画:戸田邦和
2007.08.05 20:07
おおよそ、1年2ヶ月ぶりの発売となった、『龍時』の続刊は、今回も2巻同時発売となっています。なので、レビューの方も、同時に行きます(笑
U-17の選抜チーム(代表ではない)として、スペインU-17と戦いで活躍し、それがリーガエスパニョーラ所属する、アトランティコFCのオーナーの目に留まり、その下部組織・シティオでプレーすることになった主人公・志野リュウジ。
そのリュウジが、いよいよスペインへ渡る・・・というところから、3巻はスタートします。
3巻の見どころとしましては、スペインへ旅立つ前、リュウジに関わるさまざまな人たちとの別れのシーンは、胸を打つものがあると思います。それから、スペインへ渡ったリュウジが受ける洗礼の数々。特に、リュウジのシティオでの初めての試合なんかは、実際はどうなんだか知りませんけど、想像を絶するものが・・・(^^;
それから4巻の方は、いよいよシーズンが開幕したものの、チームメイトとの軋轢もあり、スタメンではなくベンチスタートに。何もかもが上手くいかず、精神的に腐っていってしまうリュウジの心情というのが、まずひとつ。
ですがそこから、リュウジが覚醒したことを機に、すべてにおいてバラバラだったチームの歯車がかみ合い始め、本来のポテンシャルを発揮し始めていく、その流れ、チームのビフォー・アフターの変化が見どころかと思います。
全体的な雑感として、ときどき、「あれ??」と思うような表現もあったりしますが、原作の小説のよさをベースにしたリアリティのあるサッカー描写は、いいなと思います。
逆に、原作のテキスト部分に、頼りすぎな感もするのですが(そのあたりのバランスは難しいところではありますが、原作は小説ってのもありますしね)、サッカーのロジック的なところも丁寧に描かれているのが私は好きです。
それと、主人公・リュウジの性格面ですね。
少年マンガに多い熱血漢というタイプではなく、ましてや、素直な優等生タイプもない、それとは対極のひねくれたというか歪んだメンタリティ持ち主というのがまたいいんです(笑
リュウジがスペインへと旅立つ前、所属していた高校のサッカー部のラストゲームでのエピソード。
「・・・・これが全国との差
・・・・これが世界との距離だ
よく覚えておくんだな!
とりあえず世話になった武原高(アンタら)への・・・・・・
オレからの置き土産(プレゼント)だ!」
と、プレーで説教をたれる(『エリアの騎士』で例えるなら、1巻の紅白戦のシーンで、駆以外の選手にも、(無理と確信していながらも)容赦なく本気パスを出し続けるような感じ・・・かな?)、けど、最低限の仕事はするという、リュウジの感性は、マンガの主人公らしくなくていいなぁと思います。たまには、こんなタイプがいてもいいでしょう?(笑
サッカーマンガは数あれど、海外に渡ってサッカーをするという舞台設定の作品は、意外にも少ない(キャプツバもそうですが、海外リーグでプレーすることが主体の作品ではない)ですし、個人的にも、現在進行形のサッカーマンガの中では、『GIANT KILLING』『オーレ!』に続いて好きな作品でもありますので、まだ読んだことのないという方は、試しに読んでみてもらいたいなぁと思います。
マンガよりも小説の方が好きという方は、最初から原作の小説から入った方がいいでしょう。マンガ版も、原作をベースに比較的忠実に作られているので、面白いですけど、やはり、原作にかなうものはないかなって思いますので。
それから、帯についてなのですが、3巻は播戸竜二選手、4巻は玉田圭司選手となっています(ちなみに、1巻は戸田先生の師匠である高橋陽一先生、2巻は稲本潤一選手)。播戸選手は、『やんちゃぼ』の2巻の帯にもコメントしてたのですが、意外・・・と言っては失礼ですが、カッコいいこと言ってます。
次の5巻は、順当にいけば、半年後ぐらいには出せるはずなので、今後は2巻同時発売とかもったいぶらないで、出せるタイミング発売してくれることを、強く希望します!
■ 収録
3巻
ワールドサッカーキング2006年4/20号~10/19号、26節~38節
開幕前アトランティコFCホアキン会長との対面まで収録
4巻
ワールドサッカーキング2006年11/2号~2007年6/7号、39~52節
アルカラ戦の後半途中まで収録
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