『オーレ! 2』 / 能田達規
2007.04.15 20:29
市役所で勤務していた主人公・中島順治が、架空のプロサッカーチーム・上総オーレに、ドイツ語通訳兼アドバイザーとして出向するという、珍しいタイプのサッカーマンガ『オーレ!』の2巻です。
ドイツ人DFレネ・ヴォルフガングの通訳を通じて、サッカーの魅力を、オーレのフロントの一員として、N2(J2に相当)リーグ下位の貧乏チームの過酷な現実を知るにつれて、少しずつオーレに対する愛着というか、感情を強めていき、チームのために本気で動く中島の姿が見所だと思います。
作中の、とあるシーンの中島のセリフ。
ちょっと長いですが、引用させてもらいます。
みんななんのために上総でプロサッカーをやってるんだ?
他に行くところがないからか?
プロでいたいからか?
個人成績を上げて年棒増やすためか?
違う!!
そんなことのために上総市にクラブがあるんじゃない
あんたたちプロは上総市を幸せにするためにサッカーをやるべきじゃないのか!?
だったら試合前日にでも何でも市民を幸せにするために働いたらどうなんだ !?
サイン会やサッカー教室だって立派なプロの仕事じゃないか!!
もう、すごい熱の入りようです。
私は、この中島の言葉に素直に感動しました。確かに感動しました。
・・・なんだけど、市役所からオーレに来て、たった数ヶ月の人間の発言と考えてしまうと、少々軽いというか、説得力に欠けるのもまた事実な気がします。
"たった数ヶ月しかチームを知らないお前なんかに言われたかない"
って、反発があっても、不思議はないですし。
中島の本気は、十分理解できるんですけどね。
これが、『GIANT KILLING』の村越が言うんだったら、そのセリフの重さ・深さがまた違ってくるのでしょうが・・・。
中島は、実行力があり(市役所で市民の声を聞きます課にいたときは、自分の本来やりたいことができずに腐っていたのでしょう)、すごく優秀な男だと思いますが、マンガの主人公としては、読む者を感情移入させるような魅力に、いまいち欠けるのかなぁ、なんて私は思いました。別に、嫌いって訳では全然ないんですけどね。けど、この男に対しては、どこか熱くなりきれない何かが自分の中にあります。
それから、(トップチームと比べて)プロとは思えないような、華やかなさからは程遠い、N2リーグの降格争い圏内の、資金難にあえぐクラブチームの現実は、改めて見て、痛々しさを感じてしまいますね・・・。
能田先生の過去作『オレンジ』にもありましたけど、上総から鳥栖までバスで15時間もの長距離移動(これ、長距離バスに乗ったことある方なら分かりますよね?)、ホペイロや栄養士など必要であるべき人員さえも不足している現実、めちゃくちゃ汚い選手寮など(これは、選手たち個人の問題な気もするけどw)。
だけれど、強いだとか面白いサッカーをするとかが理由じゃない、弱かろうが貧乏だろうが、クラブチームを本気で愛してやまない人々の存在、N2残留をかけて選手・フロント・サポーターたちが、それぞれの想いでもって戦っていく姿は、Jリーグのサポーター層だけではなく、むしろ、レベルが低いからとかって理由だけで国内リーグに目を向けすらしない方々に、ぜひとも読んでほしいです。
サッカーという競技そのものの魅力を描く要素はほとんどないですが、ひとつの弱小クラブチームをめぐるそれぞれの想いは、よく伝わってくる作品だと思います。
できることなら、中島がクラブに愛着を持つようになっていく過程は、もっとじっくりと描いてほしかったですけどね~(^^;
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