『レッズサポのバイブル 赤菱のイレブンV 2010シーズン』 / 古沢優
2010.12.16 00:42
今年もこの季節がやってまいりました。
12月1週目に発売されるようになり5回目となりました、浦和レッズを題材にした4コママンガ、『赤菱のイレブン』のシリーズ最新となるⅤを読んだ、ごく簡単な感想です。
まぁ、感想と言っても、作品の基本スタンスは変わっていないので、いつもと同じようなことしか書きようがないのですが・・・、浦和レッズのサポーターでいらっしゃる古沢先生なりの愛情のこめられたギャグで今回も楽しませてくれます。
ですが、今回は、日本代表を題材にしたネタが入っていたり、昨年に続いて、エル・ゴラッソに掲載されたマリノスやFC東京といった他クラブのネタを描いた作品も掲載されていたりと、少しずつではありますけど、浦和レッズサポ・ファン以外の人たちにも読んでもらえるような(大義で言えばJリーグ好きに向けた)方向性にシフトしつつあるのかなという気はします。自分は元からの浦和ファンなので、他クラブを応援する人から見てどう感じるのかというのは分からないですが・・・。
今回の巻頭マンガは、リーグ優勝ネタではなく、ましてや優勝阻止ネタでもなく(それどころか、実際は、神戸のJ1残留を助ける結果になってしまいましたけどね)、天皇杯優勝ネタとなっています。
いつもはただの妄想ネタと化しているのが恒例となっていますが、この記事を書いている時点では、まだ夢はつながっている、つながっているぞー! ・・・ということで、浦和を応援する自分としては、妄想ネタではなく予言であってほしいなと願っています。
今回、個人的に好きだったのは、やっぱり啓太かなぁ。
赤菱的には定番なところですが(笑
(ボスゴリラもかなり笑ってしまいましたけどね)
近年は、いろいろオシムジャパンに呼ばれていた頃のような、獅子奮迅の活躍を見せてはいないんですけど、そろそろ復活した姿を見てみたいと個人的には思っています。
今シーズンは、フィンケ監督が2年目を迎えましたが、昨シーズンよりもチームとしては良くなっている部分も感じられたんだけど、いかんせん結果が出なかった、同じようなやられ方を繰り返してしまったというところで、自分が思い描いていたようにはならなくて残念なシーズンでした。
個人的には、フィンケ監督の3年目を見たいと思っていたので、結果という形で証明できなかったことを(勝ち点も順位も昨季以下)、赤菱を読み返してシーズンを振り返りながら悔しく思っています。
それと、毎度のことなんですが、発売日・締め切りの都合上、シーズン終盤のネタが収録されていないのが非常に残念です。
今季限りで退団することが決まったポンテの話が一切ないのは、来年発売分で収録されるだろうとはいえ、少々寂しく思います。
・・・ということで、なんだかただの雑談のようになってしまいましたが(苦笑)、浦和レッズが好きな方をはじめてとして、興味のある方は、各節ごとのネタもありますし、『赤菱のイレブン』を読み返しながら今年の浦和レッズを振り返ってみるのはいかがでしょうか。
タグ : 赤菱のイレブン
『ANGEL VOICE 18』 / 古谷野孝雄
2010.10.21 00:34
※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください
少し遅くなってしまいましたが、『ANGEL VOICE』18巻の感想です。
新人大会の3回戦に挑む市蘭サッカー部。
その対戦相手とは、冬の選手権の県予選で一度勝利したことのある美浜学園幕張。
しかし、今回は、前回対戦した時と違った布陣で戦う美幕に市蘭は後手を踏み、前半のうちから2点のリードを許してしまう展開に。
そこでまずは1点を返すため、黒木は、尾上と百瀬のポジションを入れ替え、美幕ディフェンスが戸惑う一瞬の隙を狙わせるという策に出ますが・・・、果たしてこの作戦は功を奏すのでしょうか?
※
18巻では、美幕戦の決着、そして、その試合結果やチームの戦いぶりがチームの崩壊危機へと招く・・・といった展開が描かれていきます。
今回は、大きく分けると美幕戦の試合描写と敗れた試合後の描写の2つになるのですが、その中でも語りたいこと、見どころがいろいろありすぎる・・・。まぁ、とにかく、今回も登場人物それぞれの想いを濃密に見せてくれていると思います。敗れるシチュエーションがこれまでと違うタイプのものなためか、特に人物の心理描写の深さが感じられたような気がします。
まず美浜戦の描写で言えば、17巻からの続きで、ポジションチェンジで相手守備陣のギャップを作り、そのたったワンチャンスを生かして1点を返すゴールシーンがひとつと、1点を奪った後さらに畳み掛けるように尾上のポジションを彼の心から望んだ左サイドへと移行させ同点を狙いに行く描写、このふたつが大きな見どころとなっていきます。
市蘭1点目のシーンは、黒木の作戦通りに美幕守備陣の混乱を誘うことに成功し、そのワンチャンスをしっかり生かしてしっかりゴールを決めた、これが素晴らしかったと思います。
美幕の守備が崩れるところを丹念に描いたサッカー描写も良いですし、何と言っても、チャンスにワンテンポ遅れた状態でゴール前に飛び込んでくる成田が・・・
「こっ…ここはっ… オレだろ!!」
と、持ち前の驚異的なスピードを生かしまさかのタイミングで、ゴール前に入り込んだ乾を狙ったラストパスをかっさらうように目の前に飛び込みゴールを奪うシーンは、胸を熱くさせてくれるものがありました!
GKとの1対1はいとも簡単に外してしまいけれど、こういうギリギリの飛び込みで奪うゴールには強い・・・、いかにも成田らしいゴールが良かったですね(ただ、この後の展開を思うとアレなのですが・・・)。
そして、同点ゴールを狙いに行くシーン。
ここでは、複数の人物の思惑が絡んでいく描写が、大きなドラマを見せていくことになります。
1点を奪った後、黒木はすぐさま、さらなるポジションチェンジを命じ、ついに尾上は念願かなって左サイドでプレーすることを手に入れます。
尾上が左サイドでプレーを望む理由は、成田のアシスト役ではなく自分でゴールを決めるため。
左サイドにポジションを移した尾上はさっそく特にのミドルシュートを放ちリズムをつかもうとしていきますが、しかし、いくら精度の高いミドルシュートを放てる尾上とはいえ、よりゴールに近い位置でボールを受けられるポジションにいる成田の方が得点の確率が高いと考えるのは道理。成田ばかりか、乾にまでそういう状況ならば成田に渡せと言われ、悔しさを滲ませる尾上。
そうしているうちに、運命の時は訪れます。
両チーム決定機を作れないまま試合は経過し、後半45分近くになった時間帯。
勝利を意識した美幕が、リスクを負わず、時間を使うためにボールを回し始めたところを百瀬がパスカット。
しかし、この時、百瀬の右足には激痛が!
それでも、百瀬は、無理をするなと言う黒木の警告を無視して、ボールを前へと運んでいきます。
なんのために百瀬はボールを前へと進めていくのか?
それはもちろん、チームの勝利のため。
苦痛に顔をゆがめながらも、ボールを前をと運び続ける百瀬は、前方の尾上へとパスを通します。
「勝つぞ!!」
この時の、バランス崩し倒れながらも最後の気力を振り絞り、強烈な勝利へのメッセージをパスを送る百瀬の執念の描写には、本当に胸を熱くさせられます。
そんな百瀬の想いが託されたボールを受け取った尾上は、シュートコースを相手に消されているものの、彼が手に入れていたもうひとつの武器、“クライフターン”を使って相手をかわし、左サイドから中央へと切れ込んで行きます。
そこで乾が相手のマークをひきつけてサイドに流れたことにより中央が空き、尾上のシュートコースができ始めるのですが・・・
そんなところに見えたのは、ゴール前で“フリー”でいる成田の姿でした。
ここで尾上は葛藤します。
点を取れるのは、成田や乾だけじゃない。
自分だって、ミドルシュートを磨き続けて精度を上げてきた。
それもそもシュートを打つために、左サイドでプレーすることを望み続けてきたんだ。
ゴールに近い成田に渡す方が、ミドルシュートを打つよりも精度が高い。
そんな先程の乾の言葉が頭をよぎるも、それでもそんな雑念を振り払うかのように・・・
「オレが決める!!
オレが決める!!
オレが決める…」
自分のエゴイスティックな意志を貫き通そうとする尾上。
けど、そんな尾上の脳内に、もうひとつの言葉が響き渡ります。
「勝つぞ!!」
・・・それは、チームの勝利のために、足を痛めながらもボールを前に運び続け、最後は苦痛のあまり鬼のような形相になりながらも自分にパスを送った、百瀬の強いメッセージでした。
この百瀬の言葉には尾上の意志もぐらつき、自らシュートを打つか、ラストパスを送り成田にシュートを託すのか。
「あああぁ――――!!!
あああぁ――――っ!!!」
究極の選択を迫られ、強く葛藤を見せますが・・・
「勝つ……ためだ!!」
最終的には、チームの勝利のため、ゴールの確率の方、つまりは成田へのパスを選択した尾上。
このあたりのシーンを描くのにまるまる1話を使っているのですが、この百瀬と尾上の心理描写を描いた回は、非常に見応えのあるものでした。これは、実際に、作画とテキスト、彼ら心情を汲み取りながら読んでいくほどに面白さが感じられるもので、とにかく読んでもらうしかないってところでもありますね。彼らの気迫を感じることができはず。
まぁ、これだけボールに思いが込められても、ボールを受ける側にその意識(覚悟と言うべき?)が足りなければ、意図も簡単にシュートを外してしまう・・・。
このあっさりと外れていくシュートシーンも、古谷野先生の作画の空白感とこれによって試合に敗れたという事実も手伝って、読んでいて呆然としてしまいました。こういう描写もまた、読む者の感情を動かすと言う意味では、見どころであると思います・・・。
※
そして、ここからが試合後の描写となってくわけですが・・・
この敗戦が、次なる市蘭サッカー部のドラマへとつながっていくのです。
「取れる点を取らなかったことで――
負ける試合もある」
これは他のスポーツにも言えることでもありますが、1点の重みの大きいサッカーにとっては、特にこの乾の言葉はひとつの真理だと思います。
そうして、市蘭サッカー部は美幕に敗れました・・・。
強く葛藤したうえでシュートを成田に託した尾上はいきなり殴りかかるほどの怒りを見せ、(他校よりも伸びしろが大きくどこよりも成長したはずの自分たちが)一度勝利した相手に敗れた事実を受け止め切れない脇坂、乾の個人技なら何とかできたのでは・・・と、他力本願な姿勢を見せる二宮&万代・・・。
しかし、そんな彼らの行動に、乾のフラストレーションは限界を超え・・・
「これ以上ストレスが溜まるようなことを言ってんじゃねえよ
おめえら全員…… 物足りねえ」
チームの崩壊危機を招く一言を発してしまいます。
もちろん、これには乾なりの純然たる想いがあるからなわけなのですが、そのあたりの描写もこの作品らしいニヤリをさせてくれます。
ただ、このエピソードの解決は、18巻の最後の方から描かれ始めますが、19巻にも続いていくところなので、それはまた次の機会にでも。
しかし、また別な意味で、市蘭サッカー部崩壊の危機となるエピソードがあります。
そこでは、試合に敗れて殺気立つ市蘭メンバーたちが一触即発でケンカを起こしてしまいそうになりますが、なぜかその場に偶然居合わせた尋猶の強さ(カリスマ)に頼るのではなく・・・
「道を空けなさい!!」
市蘭サッカー部を守るために取った麻衣の勇気ある行動。
そして、怖いという気持ちを押し切ってまで、そんな行動に走らせた麻衣の市蘭サッカー部に対する想いが、その場を動かしていく・・・という展開に心揺さぶられるものがありました。勇気を振り絞った後に、力が抜けて、思わず涙を流してしまう描写も含めて、ここもじっくりと読んでほしいポイントです。
あとは、美幕戦で足を痛めたにもかかわらず、勝利への執念を見せていた百瀬が疲労骨折していたという事実。ギャグ描写もありましたが、この時ばかりは、報告する百瀬の落ち込んだ表情から読み取れるその心情を察すると悲しさがこみ上げてくるものがありました。今後の布石となる麻衣の気になる描写も含めて・・・。
ここまで延々と書いてきましたが、つまりは、18巻を迎えた『ANGEL VOICE』もいつもと変わらず、時に効果的なギャグ描写を織り交ぜながらもじっくりと読ませるストーリーで私たちの心を揺さぶってくれる。
ブレることなく読ませる物語を提供し続けてくれる古谷野先生の才能は、今回も本当半端ないなということですね。
18巻は、全体的に前向きな話が描かれた巻とは言えないんですけど、いや、そういう巻だからこそ、個々のキャラクターの心情というのが心に響いた部分もあったような気がします。
やっぱり、『ANGEL VOICE』は面白いです。
18巻まで来ると、なかなか未読の方には簡単に勧めにくくなってきますが、今連載中の作品の中でも、丁寧に読ませてくれる物語という点では間違いなくトップクラスですし、サッカー描写も躍動感という部分では劣りますがこれも地味ながらも丁寧に描いています。
着実に評価はされてきているのだけれど、個人的には本当に面白いと思っているので、もっともっと多くの人に読まれてほしいなと願ってます。なので、未読の方は、是非とも一度チェックしてみていただければなぁと思います。
※
さて、続く19巻ですが、先程書いた乾の一言が発端となった話の顛末がどうなっていくのか。そして、予告にもある通り、すべてが前向きな話というわけにはいかないのですが、『ANGEL VOICE』らしい良い話も見せてくれるので、連載も読んでますが単行本としてまたじっくりと読み返したいなと思っています。
□ 掲載
第151話~第159話
週刊少年チャンピオン2010年27号~35号
乾が成田を味方に入れ他の部員たちと勝負、華麗なループシュートを決めるところまで収録
タグ : ANGEL-VOICE
『ANGEL VOICE 17』 / 古谷野孝雄
2010.08.18 22:45
※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください
ひたすらに面白くあり続ける、『ANGEL VOICE』17巻の感想です。
千葉県新人大会の1回戦。
市蘭サッカー部は、六原学館を相手に残り5分で8-0と圧倒。
一方で高い目標を持って戦う“強い”市蘭を相手に、自分たちの再出発のため何とか1点を取ってやろうと懸命に戦っていた六原学館のメンバーたちでしたが、さすがにこの状況には心が折れそうになっていたところで・・・
「キっ…… キミたちっ!! 頑張りなさい!!」
と、声をかけたのは、名目上監督という立場であるだけで、実質サッカーに関して素人である窪田先生でした。
敵役側のエピソードではありますが、この窪田の言葉をきっかけに、六原学館の“何か”が変わるのか・・・といったところから、17巻の話は始まっていきます。
そして、17巻では、六原学館戦の決着に、冬の選手権予選で戦い六原学館戦の偵察にも来ていた美浜学園幕張と再戦することになる3回戦の様子が描かれていきます。
いやぁ、今回も面白いです。面白すぎです!
エンボイらしいドラマを描いた部分にギャグ描写、そしてサッカー描写も地味なんですけど丁寧に練られていて面白かったですねー。
17巻は、“成長して強くなった市蘭サッカー部”というのをテーマに読んでいくと面白いかなと思いました。
※
まずは、六原学館戦の決着。
名目上監督という立場であるだけで、実質はサッカーに関して素人である窪田ではありますが、16巻のラストに続き17巻でも何とか生徒たちの力になりたいと、素人なりに自分にできることをやろうとしていきます。
・・・しかし、その気持ちは空回りする結果となり、生徒たちを落ち着かせるため残り試合時間を勝手に水増しして伝えた行為が相手チームを惑わす言動と取られ、主審から警告を受けてしまいます。
それだけならまだしも、自分の誤解を解きたいがために、主審の警告に対し思わず抵抗してしまった窪田は、なんと退席処分をも受けることになってしまうのです。
・・・本当すごいですこの作品。
悪意なき行動がきっかけで監督が退席処分とか・・・、そんな前代未聞の出来事を上手く物語の中に絡めてしまうんですから。その発想に驚かされます。
ですが、そんな窪田先生の思いは生徒たちに伝わったようで、六原学館は何とか一矢を報いる1点を市蘭から奪います。
喜びを爆発させる六原学館のメンバーたちの姿を見て、敵役ながら心打たれるものがありました。
そして、さらに試合を偵察に来ていた“美幕の江崎”(美幕の1年間出場停止のきっかけを作った男)が、退席処分となった窪田先生に1点を取ったことを伝え、試合を見るように促す・・・、この心憎い描かれ方がまたたまらなかったです。
窪田先生にとっても、六原学館のメンバーにとっても報われる結果となった結末。
そして試合終了後、「ありがとよ」という言葉を伝える六原学館のメンバー。
この“ありがとう”の持つ意味・・・。
市蘭イレブンもかつて船学から9点を取られた後に1点を取り返し、それが希望の光となったという経験があります。
なぜそこまで心から喜べるのかと言えば、それは相手が強いから。
「そうっ!! 相手が強いから」
対戦相手の六原学館を通じて・・・
「オレたち…… 強くなったんだなあ」
自分たちが“強者”の側に立ったことを実感する市蘭イレブン。
この描写がまたいいんです。
六原学館戦のその圧倒的なスコアを見れば、そればかりか、試合中に練習で取り組んでいたサイドチェンジを実戦の中で初めて成功させた描写を見たって、十分すぎるほどに市蘭イレブンが成長したことが見て取れますし、読む方も胸が熱くなりました。
しかし、古谷野先生はそれだけにとどまらず、六原学館という相手チームを通じて、敵役を上手く立てた物語で魅せながらも別の視点から市蘭サッカー部の成長をしっかりと見せている・・・、この2段仕掛けの見せ方がまた素晴らしかったです!
本当、古谷野先生は、どこまでも丁寧で読ませる物語を創り出してきますよね~。
※
六原学館を破った市蘭は、続く中山工業を4-0とサクッと打ち破り、3回戦へと進んでいきます。
3回戦の相手は、冬の選手権予選でも対戦した美浜学園幕張。
しかし、相手は決して弱くない相手なはずなのですが、メンバーたちのモチベーションがどこか噛み合わない。
その理由は、一度美幕を倒しているという事実からくる自信、そして、“初心者ばっかり”だった自分たちの方があの時よりも成長しているし伸びしろもあるという自負からくる自信でした。
そして、いざ蓋を開けてみると、嫌な予感が的中してしまう展開に・・・。
美幕戦では、サッカー描写の部分の面白さを見せてくれます。
前回対戦時とは違い、4-3-3の布陣で挑んでくる美幕。
4-3-3の布陣のメリットを活かしつつ積極的な攻撃を仕掛けてくる美幕に対して、初めて4-3-3の布陣と対峙し戸惑う市蘭守備陣は、相手の攻撃に上手く対応できず早々に先制点を許し、さらに2点目までも許してしまいます。この布陣の差と対応力が序盤の戦況が決めていったという描写は面白かったと思います。
そして、市蘭のサッカーが上手く働かない理由はもうひとつありました。
4-4-2の市蘭と4-3-3の美幕。中盤で数的有利を作れるはずなのにもかかわらず、攻撃の形がまったく作れないでいるのは、中盤特に両ワイドの尾上と二宮がボールを持ちすぎて球離れが悪くなっていることにありました。いくら練習を積んでボールを持てるようになったとは言っても、全体のレベルで見ればそれは決して高いものでもない。それが攻撃のリズムを崩してしまっている。
それには、新人戦前ひたすら個人技を磨き続け成長させたことがボールを持てるような状況を生んだという背景があり・・・、成長したことが逆作用をもたらすようになったという部分が面白いなと感じました。
しかし、個人技を身につけて、ボールを持ちたくなってしまうという、その心理を快く容認する黒木。
ボールをキープすることは楽しい・・・
楽しさを知ることが成長の原動力にもなるし、サッカーを楽しませてやりたいからボールを持つなとは言わないという黒木の親心みたい部分もまたいいなーと思います。
その後、ハーフタイムでの黒木は、いつも通りのプレーができてない者がいると指摘し、それは右サイドでボールを持ちすぎ無謀な突破を繰り返す尾上に対してかと思いきや、「今日のお前からは熱いモノを感じない」と百瀬のことを叱りつけるところを見せます。もちろん、ボールがキープできるようになった彼らの成長についての指摘も忘れません。
そして、ボールを持ちすぎる尾上に対しては、左サイドでシュートを打ちたいという彼の野望に理解を示し、の試合中での左サイド起用を約束して後半のピッチに送り出します。
本来のプレーを取り戻した市蘭が、中盤で人とボールが動き始め主導権を握り、ハーフタイムでお叱りを受けた百瀬が積極的に攻撃に絡みシュートを放つシーンも見られ、1点を返すのも時間の問題と思われた後半。
その状況を見た美幕の監督が布陣を本来の4-4-2に戻し、市蘭と布陣を合わせることで中盤での数的不利を消しにかかる。この采配は、実に的確なものだと思います。
これに対し黒木も動き、尾上には右サイド深くのスペースへ走り込むように指示。
何度か尾上を使った突破を狙ったところで、広能に代えて丹羽を投入。そして、まずは尾上と“百瀬”のポジションチェンジを指示する黒木。
これに尾上は納得いってない様子ですが、それは置いておくとして、右サイド深く突破した尾上のイメージを美幕ディフェンスに植えつけたところでポジションチェンジ。そこに尾上を中盤の底に位置取らせることで、相手のわずかなポジショニングのズレを突いて仕掛けていこうとする市蘭。
この攻撃が成功するのかどうかは、18巻で描かれるところですが、このあたりの両監督の見せる采配。試合の主導権をめぐる追いかけっこというのは、サッカーマンガとして見応えがあるところで個人的には楽しめました。
エンボイのサッカー描写も本当地味なんですけど丁寧で、面白いものを見せてくれます。サッカーマンガの中では、最も現実的なレベルのサッカー描写なのも好きなところです(もちろん、誇張部分も少なからずありますけどね)。
美幕戦は、サッカー描写の部分をクローズアップしましたが、もちろん人物描写やギャグ描写といったものもいつもながらに面白いです。
また長文になってしまうので細かくは取り上げられませんが、ハーフタイムで黒木からお叱りを受けた後の百瀬の言動、尾上の野望の深層部分、過信と受け取るべきかは分からないですが自分を持って戦う脇坂の描写やCBとしての頼もしさ、ギャグ描写も丹羽がバンダナを取ったら・・・とか、華麗にスルーされ続けるじっちゃんとか・・・、とにかく、今回も語りきれない魅力がいっぱいありました。
『ANGEL VOICE』って面白いです。
大事なことなので何度でも言いますけど、『ANGEL VOICE』って面白いです。
今、面白いサッカーマンガはたくさんありますが、その中でも個人的には強い推したい作品のひとつという思いは変わらずに持ち続けてますし、本当もっと多くの人に読まれるといいなと願っています。
※
さて、続く18巻は、美幕戦の続きが描かれていきます。
市蘭のポジションチェンジは成功するのか、尾上の願いはかなうのか、先の展開は知っていますが、また単行本としてまとめて読むのが楽しみです。
■ 掲載
142話~150話
週刊少年チャンピオン2010年17号~26号
市蘭vs美浜学園幕張、丹羽投入、尾上と百瀬のポジションチェンジ発動まで収録。
タグ : ANGEL-VOICE
『イナズマイレブン6』 / やぶのてんや
2010.07.06 19:13
※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください
講談社漫画賞の受賞、コミックの累計発行部数も100万部を突破と、コミック版の方も着実に勢いが増してきている、『イナズマイレブン』6巻の感想です。
フットボールフロンティア全国大会決勝戦、世宇子中と戦う雷門中。
大好きだったじいちゃんが影山によって殺された事実を知り、心を乱したまま試合に臨んでいた円堂は、ゴッドハンドが発動できなくなるピンチに陥りますが、壁山と栗松のフォローを受け、トリプルディフェンスを形成しピンチを凌ぐことに成功。
支えてくれる仲間たちの存在に、自分を取り戻した円堂。 果たして、雷門中は、世宇子中を相手にフットボールフロンティア全国大会優勝を勝ち取ることができますでしょうか。
※
6巻では、世宇子中との決着が描かれていきます。
ひとつの話のクライマックスを迎えていくだけに、普段以上に『イナズマイレブン』らしい熱い展開が怒涛の如く押し寄せてきます!
円堂が復活し、さらなる成長を見せたことで、世宇子中の攻撃を抑えていた雷門中でしたが、アフロディの“ゴッドノウズ”が炸裂して先制を許してしまいます。
そればかりではなく、さらに風丸が負傷し、治療の間10人での戦いを強いられる雷門中。 そんな中、豪炎寺が健闘を見せるも・・・ゴールを奪えず、風丸もケガの状態が悪くプレーするのが難しい状況の中で登場したのが・・・
鬼道有人だぁーーー!
細かいところで突っ込みたくなりますが、そこは華麗にスルーするとして(笑
鬼道が加わった雷門中は、その鬼道が中盤で時間を作り味方を上がらせ、上がった壁山へ“相手ゴール前でザ・ウォールを発動させ”パスを送ります。
ザ・ウォールが相手GKのブラインドになっているところを、豪炎寺がファイアートルネード・・・?
いや違う。
鬼道のダークトルネードも合体させた、“ダブルトルネード”で同点ゴールを奪う雷門!
しかし、このまますんなりと逆転といくわけもなく・・・
神のアクア(要はドーピング)を飲んだアフロディが、さらなる力を解放させ、フルパワーの“ゴッドノウズ”で雷門ゴールに襲い掛かります。
片手の“ゴッドハンド”では防げなくても、みんなの思いを乗せたもう片方の手で“ゴッドハンド”、つまりは、“ダブルゴッドハンド”で雷門ゴールを守る円堂。
世宇子中優勢の中で試合が進んでいく中、なんとかゴールを守る雷門中でしたが、いよいよ勝負のときが訪れます。
たまごろうの顔面ブロックからボールを奪った雷門中は、豪炎寺へとつなぎ攻撃へと出て行きます。そんなとき、円堂に対して、お前も上がってこいと声をかける鬼道。
GKである自分が自陣ゴールを空けて上がることにためらいの表情を浮かべる円堂でしたが、味方に背中を押され、ゴール前と駆け上がっていく・・・。
豪炎寺、円堂、鬼道・・・
3人のキックが合わされば、きっと相手ゴールを打ち破ることができる!
そう信じみんなの想いが集結した“イナズマブレイク”
シュートは、相手GKを打ち破ることに成功したものの、ゴール前にはボールよりも先回りしたアフロディの姿が・・・
ゴールを奪えそうもない。
悲観的な空気が流れる中、どうしても勝利することを諦められない男がいました。
(何度も何度も挫折をのりこえ仲間を増やしたくさんの練習をして…、
やっと… やっとここまでたどりついたんだ…、だから…。だから…!!)
「あきらめてたまるかぁー!!」
諦めないことで、ここまで勝ち上がってきた雷門中。
その想いが円堂を突き動かし、ゴールに転がり込むようにダイビングヘッド・・・
このゴールが決まり、雷門中は勝利し、フットボールフロンティア全国大会の優勝を手に入れることがでました!
・・・と、ここまでひたすらに話の流れを綴ってきただけですが、これらの展開が怒涛の如く押し寄せ胸を熱くさせる。とにかく熱い、熱いとしかいいようがありません。
私はもういい大人ですし、決してこういったタイプのサッカーマンガを多く望んでいるわけではないですが、『イナズマイレブン』のような児童誌らしい熱血王道展開というのも、今読んでもこれはこれでよいものです。
※
こうして、フットボールフロンティア全国大会は、幕を閉じたわけですが、これで6巻が終わりというわけではなく、新展開へと続き、話は“フットボール フロンティア インターナショナル (FFI)”編に突入していきます。
ゲームやアニメを知っていると、ずいぶんごっそり話をカットして、吹雪や不動などをここで普通に新キャラとして持ってくるんだなと思ってしまうのですが、続く7巻では、新展開が本格的に動き出していきます。
コミック版では、ゲームでは3に相当する部分をどのように描いていくのか気になるところです。
『イナズマイレブン』は、コロコロ年代を越えてしまうと、読む人を選ぶ作品だとは思いますが、今の少年たちに多大な影響を与えているものとして、作品の世界に触れてみるのも悪くないんじゃないかと思います。
『イナズマイレブン』の存在が、日本サッカーの10年ぐらい先に何かしらの軌跡を残しているのか、個人的には興味深く見ていきたいテーマですね。
■ 掲載
第21話~第24話
月刊コロコロコミック2010年2月号~5月号
新展開、FFI代表メンバー選抜テストが行われるところまで収録
タグ : イナズマイレブン
『ANGEL VOICE 16』 / 古谷野孝雄
2010.06.16 23:19
※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください
先日、ダ・ヴィンチのサッカーマンガの特集にも取り上げられ、注目される存在になつつある・・・と思いたい(苦笑)、『ANGEL VOICE』16巻の感想です。
・・・
抱えていた問題(植草たちのこと)も解決し、迫る新人戦に向けて練習に取り組む市蘭サッカー部。16巻では、その新人戦が始まっていき、内容もほぼまるまる千葉県新人大会の1回戦・六原学館戦の様子が描かれていきます。
今回も見どころがいろいろ多くあるのですが・・・
初戦の相手・六原学館は、ファールが多く相手に自分たちの戦いをさせないラフなサッカーを仕掛けてくるチーム。同じく六原学館と過去に戦った船学は、ファールから得たフリーキックを古川→ユゥエルのラインだけで4点を奪い、戦意を喪失させていったという話がある中、市蘭はどんな戦いをしていくのかということ。
その鍵となるのは、市蘭の攻撃の軸である乾。
成田は、古川→ユゥエルのラインで決めた船学同様、乾→成田という形でフリーキックを自分に合わせるのが市蘭の必勝パターンである信じていた・・・わけですが(そのパターンで何度か点取ってますしね)、古川と同じレベルのプレーをしても意味がないと、乾は、成田の願いも虚しく直接フリーキックを叩き込み、なんと3ゴールも奪っていきます。
フリーキックだけでハットトリックを決める乾も圧巻ですが、そんな乾と結局ボールを合わせてもらえなかった成田、この噛み合わない考えの2人のやり取りもまた面白くて笑えます。併せて楽しいんでほしいところです(笑
それにしても、今回は、乾が非常に感情豊かなところを見せていたな~と思います。
成田とのやり取りもそうですし、ラフプレーを繰り返し挑発的な発言をしてくる相手に「足もそれぐらい動きゃ もっとまともなサッカーできんのによ」と言い返してみたり、何より本気で打倒船学を目指していることに笑う六原学館の選手を相手に・・・
「本気だ だから弱えチーム……
おめーらごときに負けてるヒマはねえ」
と、(見開きで)言い切ったその姿は、本当にカッコよくてシビれましたね!
それだけでなく、相変わらずキーパーと1対1のシュートを外す成田に対して、アドバイスをする場面もあったりなど、連載初期に比べて徐々に自分の感情を表に出すようになってきたあたりに、今の乾はすごく気持ちが充実しているんだなというのが感じられて、思わずニヤリとしてしまいます。
それと、16巻で好きなところは、今回も黒木が好指導者ぶりを見せてくれていることです。
六原学館と対戦する前のミーティングで、普通だったら、ラフなプレーを仕掛けてくるチームを相手に、“ファールされてもやり返したりなんかするなよ!”と言いたくなってしまうところですが(ましてや、血の濃い連中の多い市蘭の面々ですからね)、黒木は報復行為を禁じる発言(ネガティブベースの発言)をするのではなく・・・
「そういうお前たちの取り組み方を
オレはどんな名監督にも堂々と言うことができる
こいつらは私の自慢です――――と」
ファールが少ないという市蘭イレブンのポジティブな部分を取り上げ、そのことにプライドを持たせる言葉をかける!
このやり方は、『GIANT KILLING』の達海猛なんかも見せていましたが、こういったところが見ていていいな~と思いました。現に、そのやり方が効いてた描写もあったりしましたしね。
あともうひとつ、取り上げておきたいのは、新人戦を戦うために取り組んできていたサイドチェンジが、初めて実戦の中で成功させたシーンについてです。
サッカー描写として、サイドチェンジから一気に攻めていくスピード感がいまひとつなかったのが残念と言えば残念なのですが、右から左にサイドを変えて、左サイドの二宮から左に流れてきた乾、そして、乾がニアに速いボールを入れたところを成田が飛び込んでゴールを決めたシーンは、胸が熱くなりました。
で、このシーンの何が好きかって、ゴールが決まった後・・・
「サイドチェンジ……
毎日練習を見ていてサイドチェンジが一番好きなプレーなんだよ
誰か1人でも失敗しちゃうと成り立たない……
みんなの力を集結するプレーだもん」
マネージャーとしてピッチの外から試合を見つめる麻衣が、そのように言っていたシーンもあったからです。個性派集団が意思統一してみせるチームプレーに、麻衣も思うところがあるんだろうなって思います。
練習で取り組んでいたサイドチェンジを成功させたことによって、チーム全体が強くなったというイメージを完全につかんだ市蘭のメンバーたち。噛み合わず失敗した描写があったことも含めて、この彼らの成長にこれまたニヤリとさせられてしまいます。
※
こうして、さらなる強さを手に入れた市蘭が前半を5-0の大量リードを得て、ハーフタイムを迎えるわけですが・・・
これは『ANGEL VOICE』という作品。
このままでは、決して終わることはありません。
前半だけで5点をリードされてしまった側の六原学館にもドラマがあります。
六原学館がなぜラフなサッカーをするようになってしまったのかという理由もしっかりと描かれ、目標を高く持ち戦う市蘭のサッカーに感化され、自分たちもやり直そうと気持ちを新たに挑む後半・・・。
彼らがいじけて情熱を失ってしまった間、耐えない努力で前進し続けた市蘭を相手に、やはり歯が立たないという現実を突きつけられてしまうのは道理といったところでしょう。それでも、せめて1点、なんとか一矢を報いるために、リスクを負って攻め続ける六原学館。
そんな彼らの姿に心打たれたのが、六原学館の素人監督・窪田。
サッカー部の強化計画が中止となり、顧問の役割を“押し付けられた”窪田は、これまでの自分の姿勢を反省し、指導者になることを誓います。
とは言っても、窪田は、現段階ではただの素人。
彼にできることは、ごく限られているわけで・・・
「キっ…… キミたちっ!! 頑張りなさい!!」
と、素人なりに指示を送る窪田。
連載を追ってた頃は、まさかこの人にこんな出番が来るとは思ってなかったのですが、それもまたこの作品らしくて、これらの描写の数々は好きですね。
・・・この続きは、17巻の話となっていくわけですが、敵役のドラマまで丁寧に描き魅せてくれるところは、さすが古谷野先生としか言いようがありません!
とにかく、16巻も、地味だけどじっくり丁寧に描かれたストーリーは、ニヤリとさせられたり胸を熱くされてくれたりで素晴らしく、ギャグを挟むタイミングも絶妙で、存分に『ANGEL VOICE』らしさを堪能することができました。
最近は、『ANGEL VOICE』関連でコメント(ツイッターなども含む)を頂くことも増えて、すごく嬉しかったりするのですが、まだまだこの作品の秘めている力はこんなものではないだろうという思っているので、引き続きプッシュしていければなと思っています。
まだ読んだことがないという方も、今からでも遅くないです、少しでも興味を持ったなら、作品の世界に触れてみることを個人的には強くお勧めします。
※
さて、続く17巻では、六原学館戦の続きが描かれていきます。
市蘭大量リードといった状況下。でも、せめて一矢を報いるために戦い続ける六原学館の選手たちに、素人監督の窪田の言葉はどのように響いていくのか・・・?
今ここではその内容について言及できないですが、『ANGEL VOICE』らしいさ面白さを次回も見てくれることは確かなので、単行本派の方は期待して待っていてほしいなと思います。もちろん、私自身も単行本で読めるのを楽しみにしています。
■ 掲載
第133話~第141話
週刊少年チャンピオン2010年8号~16号
六原学館・窪田監督が突然選手たちに指示を出し始めるところまで収録
タグ : ANGEL-VOICE
『ANGEL VOICE 15』 / 古谷野孝雄
2010.04.19 21:32
※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください
地味ではあるけれど面白さが止まらない、『ANGEL VOICE』15巻の感想を今回は時間の都合上なるべく手短にまとめます。
物語は、高校サッカー選手権千葉県大会決勝戦。
ピッチに市蘭の姿はないですが、船和学院vs八津野の決勝戦をスタンドから観戦に行くメンバーたち。
15巻では、他校同士の対戦ではありますが、前巻からの続きで船学と八津野の決勝戦の模様から描かれていきます。
※
15巻では、ストーリーの大きな山場というのはありませんが、今回も地味ではあるけれど丁寧で、時に心憎さが感じられる物語が描かれていきます。ブレることのない面白さは健在です。
船学と八津野の決勝戦は、敵役同士の試合ではあるんですけど、とても見応えがありました。
特に、八津野の天城の心理描写が胸を熱くさせてくれましたね。
これまでチームを支えてくれた権藤のために国立を目指すことを胸に秘めて戦う天城。その頑張りが仇になって失点してしまうのはあまりに無情・・・。その後、気持ちを鬼にして戦うも最後は敗れることになる天城。チャラチャラした感じのキャラの天城が本気で涙を流すシーンは、強く印象に残っています。
また、試合中、本来なら強者の側である八津野が船学相手にひたすらに泥臭く戦う姿に、市蘭のメンバーたちが目を奪われ応援するといった描写にはニヤッとさせられましたし、船学と八津野両者の戦いから市蘭がサイドチェンジをチーム戦術に取り入れるという新たな目標を選手たちに伝え、メンバーたちが気持ちを高めるというシーンも良かったと思います。
※
そして、15巻もうひとつの見どころとなっていくのが、旧サッカー部の負の遺産に関するエピソード。
そこでは、新生・市蘭サッカー部設立前に百瀬がなぜフットサルをしていたのかや、百瀬と尋猶の過去話。負の遺産の清算すべく旧サッカー部員にひとりで立ち向かっていく尋猶の姿が描かれていきます。
前者は、また心憎い古谷野先生らしいエピソードの描き方でニヤッとさせてくれますね~。純粋なサッカー小僧である百瀬に感化された今園と、なぜ尋猶がサッカーボールを誰にも触れさせようとしなかったのかという、作品序盤の伏線ともなっている話は必見です。
後者については、前者とのつながりがあるわけですが・・・、ヒロナオ△としか言いようがないですね(笑
いやぁ、『ANGEL VOICE』って本当面白いです。
何度も何度もしつこいようだけど、<大事なことなので何度でも言ってやります、『ANGEL VOICE』って本当に面白いです。
この作品は、まだまだ伸びていける子だと思うので、過小評価が解消されたと感じるまでは、私は今後もしつこく応援していきますよ?(笑
※
続く16巻についてですが・・・
15巻ラストのところで、麻衣に関して、悲しい展開がいずれ起こってしまう・・・ということが、改めて示唆されて何とも言えない気持ちになってしまうのですが、ひとまずそのことは忘れて、新人戦を戦う市蘭サッカー部の物語を見守っていってほしいなと思います。
■ 掲載
第124話~第132話
週刊少年チャンピオン2009年49号~2010年7号
新人戦が始まろうとするところまで収録
タグ : ANGEL-VOICE
『イナズマイレブン 5』 / やぶのてんや
2010.03.01 23:23
※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください
オリジナルであるニンテンドーDS用ゲームソフト『イナズマイレブン2 脅威の侵略者』の出荷本数が110万本を越え、アニメも予定の期間を延長して放送中、またゲームの最新作も発表され、ますますその勢いが増していく印象のある『イナズマイレブン』のコミック版5巻を読んだ感想です。
フットボールフロンティア地区予選で帝国学園を破り、全国大会出場の切符を手に入れた、主人公・円堂守が所属する雷門中。5巻では、そのフットボールフロンティアの全国大会の様子が描かれていきます。
※
今回も、コロコロらしいというか、『イナズマイレブン』らしい王道的な熱血ストーリーで魅せてくれます。このあたりの作品のベースとなっている部分にブレはありません。
(今回ようやく登場となった)響木さんが思わず守のおじいさんの姿をダブらせてしまう爆裂パンチでシュートを止めるシーンや、豪炎寺と鬼道が協力してプレーする場面、じいちゃんが殺されたという真実を知り(戦う気持ちは見せるけど)今ひとつ精彩を欠くプレーを見せる守のために協力して“トリプルディフェンス”を発動させる壁山と栗松のシーンなんかは、やっぱり胸を熱くされてくれます。
そういう描写がある中・・・
「じいちゃんが好きだったサッカーでぶっとばす!!!」
と、真実を知った守が静かに闘志を見せるシーンには、また違った意味で心揺さぶられるものがありました。
ただ、いい意味を見せてくれる反面、全国大会を勝ち進んでいくプロセスがコミック版では大幅に端折られてしまっているのは、ちょっと残念かなぁと思います。それによって、戦国伊賀島戦なんかもただのかませ犬的存在になっている印象を受けますし。
このあたりのことは、前巻の感想でも書いているのですが、現状の連載ペースを考えると仕方のない部分はあるんですよね。ゲーム版はすでに最新作「3」が発表され、それどころかアニメ版の方ではすでに「3」のストーリーに入っている中、コミック版はまだ「1」の終盤を描いているわけですから。
そのあたり、やぶの先生は適度にアレンジしつつ上手くまとめようと頑張ってらっしゃると思います(きっと苦心されてることと思います)。それでもやっぱり、私としてはもっとじっくりと読んでみたいないう気持ちの方が強いです。ここは割り切るしかないのですが・・・。
その他には、今回も本編の他に恒例となってきている特別ギャグ編が収録されていたり、ゲームやアニメをご存知の方ならお馴染みであろう吹雪士郎のストーリーを描いた読み切りも掲載されています。
コミック版は、ゲームやアニメほどの存在感は示せていない印象もありますが、もし興味があるならコミック版の方もチェックしてみてはいかがでしょう。
※
続く6月末に発売予定の6巻では、フットボールフロンティア全国大会決勝戦、世宇子中戦の決着がつくようです。コミック版では、フィナーレの部分をどのように描いていくのか、注目していきたいと思います。
■ 収録
第18話~第20話、イナズマイレブン特別編 吹雪士郎外伝、イナズマイレブン特別ギャグ編
2009年10月号~2010年1月号、別冊コロコロコミック2009年12月号
フットボールフロンティア全国大会決勝、円堂たちがトリプルディフェンスで相手シュートを止めるところまで収録
タグ : イナズマイレブン
『ANGEL VOICE 14』 / 古谷野孝雄
2010.02.15 21:44
※ネタバレとなりうる要素も含んでいますのでご注意ください
実質、サッカー部の存続をかけた戦いでもある、東京の名門・帝稜高校との練習試合。一時は、1-4と3点のリードを許すものの、その後は巻き返し、試合は4-4の同点のまま後半ロスタイムに突入。
試合の残り時間も押し迫りラストワンプレーかといったところで、水内、所沢、脇坂、乾とつなぎ、そこから乾は坪井しか残っていない帝稜の最終ラインの裏をめがけて成田を走らせるパスを送る・・・
坪井さえかわされば、独走して相手GKと1対1になれる状況の中、成田は逆転ゴールをあげることかできるのか・・・といったところから、14巻は始まっていきます。
※
んで、感想なのですが・・・
いやぁ、本当に困ってしまいますね。
今回も内容が濃く、書きたいポイントが多いので、記事をどうまとめていこうか頭を悩ませてしまいます(苦笑
帝稜戦のクライマックスは、成田が坪井を振り切り独走し、完璧に“自分の型”を習得したシザースで逆転ゴールをあげたシーンや、他のメンバーたちもこぼれ球を押し込むためゴール前へと詰めていく勝利への執念を見せた部分は本当に熱い気持ちになれましたし・・・
「オレが予言してやる!! サッカー部を残したら―― 一年後―― お前らはこいつらのこと自慢するようになる!!」 ・・・市蘭サッカー部廃部の危機を知った坪井が、廃部を願っていた一般生徒たちに対して言った言葉は、一部ギャグっぽい描写もありましたが、やっぱり胸を熱くされてくれました。
「良い人」という周囲の評判を捨てる覚悟をしてまで、市蘭サッカー部存続の署名に“一番最初にサインをした”野球部の元主将・吉沢啓太のエピソードもすごくいい話です。
瑠華姐さんと校長の関係もいつも結局スルーしちゃってますけど個人的には好きだし、14巻の最後の方から始まっていく船学vs八津野の決勝の話も触れたい・・・
古谷野先生は、ひとつひとつのエピソードをいちいちじっくり丁寧に描いてくれるので、語ろうと思えばいくらでも語れてしまう。なので、いざ単行本の感想として記事を書いていこうとすると、本当にどうまとめていけばいいのか困ってしまうんですよね(笑
でもやっぱり、14巻の感想を書いていくにあたって、一番取り上げるべきところは、サッカー部の存続の可否が決まる職員会議が行われている時の話になるでしょう!
会議室では、サッカー部存続派と廃部派の教員たちが激論を交わし、話が平行線を辿り続け、延々と時間が経過していく中・・・
「待ってるだけってのは…… つれえなあ」
という万代の言葉が示すように、“その時”をひたすらに待ち続ける市蘭サッカー部員たち。部員たちにとって永遠とも思えるほど長く感じられる時間。この張り詰めた空気には、見ているこっちまでもが息が詰まりそうになっています。
そんな、話を読み進めていくたびに緊張感がどんどん高まっていく描写がある一方で、ここでも古谷野先生がシリアスな局面の中にギャグを織り交ぜていくという半端ないセンスを見せてくれます。
シリアスとギャグの局面が交互に織り交ぜ、またシリアスな局面がヒートアップしていけばギャグ描写もヒートアップしていくという・・・。
会議室では、教員たちの投票によってサッカー部存続の可否を決めていて、思わぬ人が存続に投票してくれたり、味方だと思ってた人が寝返ったりと進行していく中、存続・廃部の投票が同数の状態での最後の一票。
その開票される最後の一票は、廃部推進派の最先鋒とも言える間宮のもので、物語の緊張が最も高まっていこうとするところで、ギャグシーンもまた最高のオチの瞬間を迎えていくんです。
そのあたりの詳しい描写については、連載を読んだ当時のものでも読んで頂きたいのですが・・・
成田がサッカーを辞めた理由を話す経緯として、まずはイメージをつかんでもらうために、辞めるきっかけを作った宮地先生という人のモノマネを始める成田。
「あ~~~~ 相手の攻撃はフォルテシモ(強く)~~~~
う~~~~ うちの守備はピアニシモ(弱く)~~~~」
この成田の宮路先生のモノマネは、顔芸も含めて必見です!
それで、とにかくイメージをつかんでもらうのが大事だからと、1時間かかると言う成田の過去話のうちの59分をモノマネに費やしてきたのに・・・
「なんだ? シンゴ 宮地のモノマネかぁ?
相変わらず似てねえなあ」
と、あっさり瑠華姐さんに否定されてしまい・・・ まぁ、人それぞれ笑いのツボは違うと思うのですが、ここでのシリアスと対比であまりに破壊力のありすぎるオチに声を出して笑わずにはいられませんでした。本当、古谷野先生のこのへんのセンスは半端ない!
・・・と、さんざん笑うだけ笑い、笑いの涙で満たされているところで話が戻り、間宮の投票は存続に入れられていてサッカー部の存続が決まったというシーンで締めくくった119話は、いろんな意味ですごい回だなぁと思いました。
その直後(120話)には、市蘭サッカー部と間宮の関係が明らかにされるエピソード、そして、サッカー部の存続のが決まり、新たな目標を胸に再出発するメンバーたちの描写(見開き)も、本来だったらじっくりと書きたい『ANGEL VOICE』らしい素晴らしさのある場面でしたね。
全体の感想としてハッキリと言えるのは・・・
今回もブレることのない、安心して読んでいける、完成された面白さを保っているということです!
『ANGEL VOICE』を好きで読み続けてる人にとってはやっぱり面白いと言ってくれると思うし、最近連載を読んで興味を示した人でも1巻から読み始めていけば、今ある面白さに納得してもらえるのではないかと思います。
昨年末、『こすヨメγ2010』という企画に参加させていただいた時、私は『ANGEL VOICE』を1位にしたことからもお分かりいただけるように、個人的にはプッシュしたい作品のひとつということで、しつこいと思われるかもしれないですが、少しでも興味があったら是非読んだいただければなと思います。
とにかく、14巻も私にとっては大満足な1冊となりました。
※
さて、続く15巻では、船学vs八津野の県大会決勝戦の続きから描かれていきます。
1点を先行することに成功した八津野は、万年2位の座を返上することができるのか?
で、この決勝戦の話の後には、これまたこの作品らしいエピソードが・・・。
『ANGEL VOICE』の面白さはとどまることを知りません!(笑
毎週連載を読んで楽しんでいますが、単行本として15巻を読むのが楽しみです。
■ 掲載
第115話~第123話
週刊少年チャンピオン2009年40号~48号
選手権県予選決勝・船学vs八津野、八津野が先制したところまで収録
タグ : ANGEL-VOICE
『レッズサポのバイブル 赤菱のイレブンⅣ 2009シーズン』 / 古沢優
2009.12.16 22:18
今やすっかり毎年の恒例行事となりました、浦和レッズを題材にした4コママンガ『赤菱のイレブン』の、最新刊の感想を簡単に書いていきます。
冒頭部分、恒例となっている優勝ネタ・・・ではなく、今年は優勝阻止ネタへと変更を試みたものの(さすがに今年は妄想レベルでも優勝ネタにはできないか)、結果としてそれさえも叶わず・・・orz
以前と比べて、すっかり毒気が抜けてしまっていますが、今回も古沢先生なりのレッズへの愛が込められたギャグで楽しませてくれます。
個人的に好きなのは、いろいろありますが、和み系のキャラで赤菱の中では異彩を放っていた直輝を挙げておきます。
レッズにとって今年は、フィンケ新監督を迎え、コンビネーションサッカーを掲げて新たな一歩を踏み出した年でした。
発売日の都合上31節までの収録となっていますが、各試合を題材にしたネタには、その当時、古沢先生がレッズプレスで書かれたコメントが掲載されていて、今年1年を振り返るという意味でも最適かと思います(積極的に振り返りたいかどうかは別にして)。
今年は、春先は順調なように見えましたが、そこからなかなかステップアップしていけず、8連敗してしまったり、実質4部のセミプロチームに負けてしまったり・・・など、ひいき目にも満足といえるシーズンではなかったです(レディースの優勝はまた別な話ですが)。
フィンケ体制2年目となる来期は、メンバーの入れ替わりもありますが、もっと観ていて手応えや希望が感じられるシーズンであってほしいなぁと切に願っています。まだ、この記事を書いている段階では、来期の動向は固まってないですが、とりあえず、柏木が浦和で見られるのはすごく嬉しくて楽しみです(赤菱的な意味でもw)。
基本的には、タイトルから見てもレッズが好きな人向けの作品ですが、マリノスやFC東京、フロンターレといった他クラブのネタ(エルゴラッソに掲載されたもの)も極々わずかですがあり、レッズがお嫌いでないJリーグ好きの方なら楽しめるかもしれません。もし、興味のあれば、手に取って見て下さい。
タグ : 赤菱のイレブン
『ANGEL VOICE 13』 / 古谷野孝雄
2009.11.09 00:14
※ネタバレとなりうる要素も含んでいますのでご注意ください
部の存続を賭け、市蘭の全校生徒・全教員が見つめる中、名門・帝稜高校と試合を行う市蘭サッカー部。
試合は、前半10分、コーナーキックから成田がヘディングで決め先制点を奪うことに成功します。しかし、脇坂たちが一般生徒たちの目を意識し、より高いレベルのプレーを目指しプレーしますが、それが仇となり、チームとしてのバランスを崩し同点に追いつかれてしまう市蘭サッカー部。
市蘭ディフェンス陣に不穏な空気が流れ始める中で、試合の行方はどうなってしまうのでしょうか・・・と言ったところから、13巻は始まっていきます。13巻は、まるまる帝稜戦が描かれていきます。
※
面白いですね。
いつも、ありきたりな言葉ばかりで、ほんっと申し訳ないんですけど、ひたすらに面白いです!
あまりに内容が濃すぎて書きたいことだらけなんですが、それだとまた収拾がつかなくなってしまうので、大きく分けて2つのことについて書いていくことにします。
※
「一度(ひとたび)くるい始めたリズムを元に戻すのは 容易なことではなかった」
12巻のラストにあった言葉の通り・・・、同点に追いつかれ、さらに逆転され、ディフェンスのやり方を戻したにもかかわらず失点を重ね続け、リズムを取り戻せないまま1-4というスコアで前半を終了した市蘭。
連携が取れず、互いに苛立ち、殴り合い口論をする脇坂と所沢。
そんな、最悪なハーフタイムを迎えましたが、ここで存在感を見せてくれたのが監督の黒木と、すっかり市蘭ファミリーの一員となった臨時GKコーチの関根のじっちゃんでした。
まず、黒木は脇坂に対して、これまでは百瀬と半々の割合でディフェンスラインのコントロールを・・・
「――後半からは
ラインコントロールをお前1人に任せたい」
と、大役を任せることで責任感を持たせます。
それにより、百瀬のディフェンス面での負担が減ってより攻撃に絡んでいきやすいというメリットもありますが、何より、このことが脇坂に自信を与えることができたことに大きな意味があったと思います。今の脇坂は、百瀬の次にキャプテンマークが似合う男と言えるほどに成長しましたね~。黒木のDF出身の監督ならではの視点というのも良かったです。
そしてもうひとつ、関根のじっちゃんは、所沢に対して、これまでの欠点であったコーチングの部分についての指導をします。
コーチングと言っても、指示の内容そのものが悪いのではなく、上級生(脇坂、万代、水内など)に対して、丁寧に“さん付け”で呼ぶことで時間的なロスを生んでいたというのが何とも所沢らしい理由です。
さらに、じっちゃんは、ディフェンスラインの4人を・・・
「ブンタ(広能)、ワッキー(脇坂)、バン(万代)、ジミー(水内)」
と、呼ぶように厳しく指導します。
まぁ、この部分だけでも、普通に納得できてしまうものなのですが、これだけで終わらせないのが古谷野先生の恐ろしいところです。
“地味だからジミー”だと呼ばせたことに対して、軽く凹んでいた水内を尻目に、実戦を想定して所沢に練習をさせるじっちゃん。
「ジミー ゴールをカバー」
「そんな小さい声で聞こえるか!!」
「ジミー!! ゴールをカバー!!」
「まだまだ小さい!!」
「ジミ――!! ゴールをカバー!!」
「もっと!!」
「ジミー!!
ゴールをカバ―――!!!」
「そ…そんなに
地味なのか……? オレは||||||」(by水内)
所沢が頑張って声を張り上げれば張り上げるほど、それに比例してジm・・・いや、水内が凹んでいくという・・・、すごくシリアスな局面なはずなのに、笑っちゃ水内に悪いだろ・・・と思いつつも、この場は声を出して笑わずにはいられませんでした。
乾や尾上がシリアスな表情をしている中、あれが延々と繰り返されてるところがまたシュールさも誘っていて、違った意味で笑えます。
このシリアスな局面の中、じっちゃんの指導内容にサッカーマンガとして普通納得してたところから、しれっとギャグ描写に持っていく古谷野先生。
で、その後、さらに水内は、ジミーと連呼したことを謝る所沢に対して・・・
「水内じゃねぇ ジミーだ」
と、振り返りなら言います。
・・・え、なに、この謎のカッコ良さは?(笑
このあたりの古谷野先生のセンスが大好きです。
天賦の才を感じずにはいられません。
えーっと、何だっけ・・・、気が付いたら水内がメインの話になってしまいたが(笑)、じっちゃんの指導を受けた後の所沢は、自身の欠点を克服し、大きな成長を見せてくれました。
水内の方も、あわやゴールかというところを間一髪クリアしてサムアップするなど、これまでの地味キャラから一転、13巻で一番輝きを放つ活躍を見せていたと思います。このジミーの場面だけでも、420円以上の価値があったと、私は言い切りたいです!
※
もうひとつ取り上げておきたいのは・・・
後半1-4から乾と二宮のゴールで3-4と1点差に迫った市蘭。
市蘭イレブンの勢いが増し、イケイケモードになったところで帝稜は、前巻でもやたらと目立っていた坪井を投入。
持ち前の高い戦術眼とディフェンス技術で成田を封じる坪井。
それによって、他のDF陣たちの動きの良くなり、徐々に攻撃の糸口を失っていく市蘭。
部の存続のためには、どうしても勝利が必要で、あと2点を取らなければならない状況。試合の残り時間の減り、焦りの色濃くなっていく時間に差し掛かってくる局面ですが・・・
「オレたちは知っている―― 最後まで全力で走れることを
オレたちは知っている―― 走り抜けば何かが起こせることを
船学戦がそうだったじゃねーか!!」
船学戦での成功体験を胸に、自分たちを信じて最後まで全力で走り続けようとする市蘭イレブン。
このシーンを見て、期待する気持ちが自然と沸き起こってくるのは、私自身も、船学戦で疾走し続ける市蘭イレブンたちの姿を見てきて、心の底から熱い気持ちになったからだと思うんですよ。
ここまで地味にだけど丁寧に描き続け、着実に積み上げたものがあるからこそ、強い説得力を持たせることができるわけであり、このあたりにも、古谷野先生のストーリー構成の上手さを感じることができました。
1巻の頃は、期待する気持ちはあるけれど、「絶対に面白くなる!」という確信を持てないでいましたが、その後、着実に面白さを増していき、今では圧倒的な面白さを実感しています。ここまで右肩上がりで上昇し続ける作品も珍しいと思います。
サッカーシーンの躍動感のなさに若干の不満を持っているのは確かなのですが、それを差し引いて余りある魅力が他にありますし、もっともっと売れてほしい作品だなと思いますね。もっと評価されるべきです!
※
他にも、帝稜の坪井についてだとか、サッカー部の練習を隣で見続け、サッカー部に「勝ってほしいなあ」と言ってくれた野球部部長の話だとか、1-4にされて試合を観るのをやめようとした教員を必死に引き止める校長先生だとか・・・語りたいことはいっぱいあります。
けど、それらをひとつひとつ拾って書いていくと、とんでもなく長文になってしまうので、そのあたりは、毎週書いてる連載雑感と併せて読んでいただければと思います。
※
さて、続く14巻では、13巻のラストを見ても分かるように、帝稜戦の最後の最後、最大のクライマックスから描かれていきます。
ラインを割りそうなところを必死に食い止めたジミーから所沢、脇坂とつなぎ、乾が前方へとフィード・・・その先には、成田と坪井。ラストワンプレーの結末はどうなるのか。
そして、サッカー部の行く末は・・・?
先の展開は知っていますが、改めて単行本で読むのが楽しみです。単行本派の方も、楽しみに待っていて下さいね!
■ 掲載
第106話~第114話
週刊少年チャンピオン2009年30号~39号
市蘭vs帝稜、同点のまま後半ロスタイムを迎えるところまで収録
タグ : ANGEL-VOICE