『LOST MAN 9』 / 草場道輝
2010.09.07 01:24
※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください
“「今一番オススメしたい漫画」と大絶賛!!!”
漫画好きで知られている方とはいえ、まさかの麻生太郎氏が帯に登場!
『LOST MAN』9巻の感想です。
プレミアムリーグの開幕戦、マンチェスター・ユニオンvsバーミンガム・シティ。
味方GKの退場により10人での戦いが強いられ、先制点も許してしまったマツモトの所属するマンUでしたが、相手の執拗なマークに苦戦を強いられながらもそのセンスを見せ付けたシンプソンのパスによって同点に追いつきます。
マンUは、1人少ないとはいえ、その後も圧倒的に攻めるもなんとか勝ち点1を取るため必死に守備を固め引き分けを狙うバーミンガムをなかなか切り崩せず、残り15分となったところでいよいよマツモト(&ミッコリ)が登場!
9巻では、マツモトたちがピッチに降り立つところから始まっていきます。
※
9巻では、マツモトとミッコリが投入されたバーミンガム戦の決着、途中出場して十分な活躍を見せているにもかかわらずスタメン出場できないマツモトの苦悩、そして、コミュニティ・シールドでも対戦したリヴァプール・シティとの再戦といったあたりの話が描かれていきます。
結論から言えば、9巻もすごく面白かったです。
まず、サッカー描写が面白い!
シーズン5冠を目指すマンUの戦い。
マンUだってマンUと戦う相手チームだって、当然少しでも良い結果がほしい。そのためにお互い戦略や駆け引きを用いていきます。
描かれている戦略的な話そのものも面白いですが、それらを表現する草場先生の迫力ある圧倒的な描写力がまた素晴らしくて、サッカー描写をよりドキドキワクワクさせるものにしてくれます。
で、『LOST MAN』は、サッカー監督マンガというわけではないですが、マンUのチャーチルはもちろん、そのマンUを倒すために指揮を取る相手チームの監督のキャラもまた個性がしっかりと立っていて、それがまたサッカーマンガとしての面白さに彩りを添えてるのではないでしょうか。
そして、コメディ描写が面白い!
『LOST MAN』のコメディの女王と言えば、やっぱり詩乃さん。
(勝手にそう呼んでしまってごめんなさいw)
今回も、マツモトの記憶を取り戻すため催眠術をかけようとしてみたり、サカザキに扮してチャーチル監督にマツモトのスタメン起用を進言してあっさりあしらわれてしまったり、カーリーとじゃれ合ってみたり(違うw)といった行動で私たちを楽しませてくれます。
とはいえ、それらの行動すべては、マツモトのために向けられたもの。
詩乃のそのけなげな言動や喜怒哀楽の表情といったものは、時に予想外の方向性に突き進むこともありますが、とても愛すべき存在でもあります。
そして、サッカー描写と重なる部分もありますが、世界のトップリーグ、ビッグクラブを舞台に描かれていく物語が面白い!
同じポジションを争うマツモトとシンプソンの戦い。
この2人の心の中には、それぞれの思うところがあります。
十分な活躍を見せながらもベンチ生活から抜け出せず苦悩するマツモトに、高いパフォーマンスを示し続けるも接触プレーを避けるという絶対のポリシーを変えることのないシンプソン。
このふたりのポジション争いの鍵を握るのは、監督として起用する選手を選び立場である、サー・アリステア・チャーチルということになるのですが、このチャーチル監督がまたいいキャラを見せてくれているんです。
2人の選手の心理を上手く操り、チームをさらなる高みへと導いていこうとするチャーチルの描写には、ニヤリとさせてくれるものがありました。
マンUの生え抜きでU-13の頃から見てきたというシンプソンに対しては、今後の成長に高い期待感を示しながらも、シンプソンが接触プレーを避けるようになった過去の話に触れ(詳細は10巻あたりで描かれるはず)、接触プレーを厭わないマツモトの存在をチラつかせながら過去の呪縛からの脱却を促す言葉をかけます。
そうして迎えるリヴァプール・シティ戦。
この試合のスタメンは、前年のプール・C戦でシンプソンを封じられて敗れたにもかかわらず、やはりシンプソンのものでした。
1000の戦術を持つという、プール・Cの監督・サッカリーは、負けっぱなしを嫌うチャーチルはもう一度シンプソンを使ってくると思っていたと読み、それならばとこの対戦でも徹底してシンプソンを潰しにかかる策を採ります。
その策とは、GKのスローイングをわざとシンプソンに投げ、ボールをトラップする瞬間を狙いマーカーにコンタクトプレーさせるというもの。
しかし、シンプソンもプール・Cのマキャベリーノの激しいコンタクトプレーを巧みにかわし続け、味方へパスを供給していきます。・・・が、マンUの攻撃は、プール・CのGKバンクスにことごとく止められ得点を奪えず。シンプソンのほうも、タックルをかわしてると言っても、完全にかわしきれているわけではなく、マキャベリーノに足を削られ続けダメージを負っていきます。
それでも、激しく身体をぶつけ合うイングランドの伝統的スタイルを真っ向から拒むプレースタイルでプレミアムリーグを戦い続けるシンプソン。
そんなシンプソンのスタイルと共にこれまでいくつもの勝利をつかんできた味方のマンUの選手たちは、シンプソンのスタイルに理解を示しています。
だから、自分たちのやることは、先にバンクスの守るゴールを破ること。つまりは、バンクスを破るのが先か、シンプソンが潰れるのが先か。この両者の緊張感が伝ってきて面白いです。
そんなシンプソンのスタイルを否定するのがマツモト。
チャーチルの意向によって隣に座らされたマツモトは、自分だったらシンプソンのように回りくどいことをしなくてもコンタクトプレーで勝負できる。だから、今日の試合は、自分がピッチに立つべきだという主張をチャーチルにするマツモト。
そんなマツモトの主張に対して、チャーチルはこう答えます。
「質のいい嫉妬は人を成長させるものだな…」
シンプソンの当て馬として、マンUに加入したと思われたマツモトではあったけど、そう思わせといて、実はしっかり一選手としてマツモトのことを見ている。そんなチャーチルのサッカー監督としてのスケールの大きさを感じさせる描写がすごくいいんです。
そして、監督と言えば、プール・Cのサッカリー監督の描写もまた個性に溢れていていいキャラを見せてくれます。
シンプソンを潰すと言っても、怪我をさせて退場に追い込もうとしているわけではない(マーカーのマキャベリーノの本心は、まぁ違うところにあるのですが)。執拗にコンタクトプレーを狙い続けることで、シンプソンのメンタルに雑音(ノイズ)を入れるのがその目的。
まるで自分をスタジアムと言う名の劇場の指揮者のように振る舞い、作中でもサッカリーをそのイメージを適切に描いていく草場先生の作画といったものが、またその雰囲気を醸し出し、読む者に高揚感を与えてくれます。
「純白でいられなくなった背中の羽根は…
まさに堕天使(ルシファー)…
その胸のエンブレムに準じて落ちろシンプソン!!」
執拗なサッカリーの戦略によって、感覚を狂わされたシンプソンは、かすかなパスミスを犯し、しかし、そのかすかなミスが決定的となり、電光石火のカウンターを喰らい失点してしまう・・・
このあたりの描写力というのも、本当面白くて、主人公側からすれば失点のシーンなんですけど、鳥肌が立ってしまうほどでした。
しかし、失点を喫しても、チャーチルはシンプソンを代えることはしません。
またシンプソンも、一度ミスはしてしまったものの、そのプライドにかけて自分のプレーを続けていく。
削って削っても信念を貫き戦い続ける。
そんなシンプソンに、マーカーのマキャベリーノは苛立ちを覚える。
その苛立ち、何が何でもシンプソンをピッチから追いやってやりたいというマキャベリーノの意地がとうとう一線を越えてファールをしてしまい、マンUがフリーキックを得ます。
そのフリーキックを蹴るのは、自ら強く志願したシンプソン。
プール・CのGKバンクスとの駆け引きの中、バンクスの重心の逆を突いて、ふんわりとしたボールでフリーキックを決める!
遠藤のコロコロPKじゃないですけど、シンプソンの蹴ったボールって、本当にふわ~っとしたコントロールショットだったと思うんです。作画からも、それを感じさせてくれます。あのゆっくりと時間経過してる感が良いです。
読んだ方向に蹴られる分にはなんてことのないキック。
けど、完全に逆を取られてしまっているバンクスは、どんなにふんわりとしたキックであっても、それに反応できずただ見送るしかできない・・・。そしてゆっくりとゴールマウスに吸い込まれていく・・・
このイメージが頭に描かれた瞬間、鳥肌が止まりませんでした。
スゲーよ、やっぱり草場先生の描くサッカー描写はすごいです。
・・・と、連載を読んだ当時、私はこのように書いていたのですが、とにかくこのゴールの描写は9巻の中でも一番シビれるものだったと思います。
失点をしてもシンプソンを辛抱強くピッチに立たせ続けたチャーチル、神に誓って己の信念を貫き通し自らのミスを取り返したシンプソン、そんなライバルのすごいプレーにワクワク感を抱きつつもシンプソンの伝説を超えるため気を引き締めピッチへと向かうマツモト・・・。なかなか文章のみでは伝えにくいのですが、いやぁ、今の『LOST MAN』は面白すぎるだろと言わずにはいられません!
そして、満を持してマツモト登場となり9巻は終わるのですが、この話が最高に盛り上がってきたところで話が切れるというのがまた上手いなと思ってしまいますね。
これまでも十分面白かったですが、9巻はこれまでの中でも最高の出来だったというのが私の感想です。
本当、草場先生は、その圧倒的な描写力といい、戦略や駆け引きの描写といい、読んでいて本当面白くて、サッカーマンガを描いてこそ最高に輝く方だなということを確信させてくれます(・・・と書いてしまったら、草場先生本人は不本意に思われるかもしれないですが)。
初期の『LOST MAN』が合わずに読むのをやめてしまった方、サッカーが好きな方には、個人的には強く勧めてみたいです。もっと多くの人に読まれる作品だと思うんですよ!
もし読んだことのないという方は、現在スピリッツの連載の方も面白いので、まずそちらからでも読んでみて下さい。合う合わないはそれぞれあるにしても、一度は目を通してみてほしいなと思います。
現在、面白いサッカーマンガがたくさんありますが、その中でも、 純粋にサッカー描写の部分において、個人的には今一番面白いサッカーマンガだと言います。
※
続く11巻では、リヴァプール・シティ戦の決着が描かれていきます。
満を持してシンプソンと交代でピッチに立つことになったマツモトは、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか。
毎週連載で読んで熱くなっていますが、また単行本として読むのも楽しみです。
■ 掲載
第78話~第87話
週刊ビッグコミックスピリッツ2010年第10号~15号、17号~20号
シンプソン意地の同点フリーキック、そして満を持してマツモトが登場するところまで収録
タグ : LOST-MAN
『龍時 10』 / 原作:野沢尚 漫画:戸田邦和
2010.08.17 15:54
※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください
連載開始から5年以上を経て10巻まで到達、『龍時』10巻の感想です。
アトランティコからベティスへと移籍したリュウジのシーズン2年目。
9巻では、バルセロナ戦でマッチアップしたプジョルにフィジカルの差を見せ付けられ完敗してしまったリュウジ。
そこでリュウジはリーガで戦い抜くための身体作りに励み、練習では少ないタッチでボールを動かして攻めるメニューにもかかわらず、それを無視しあえて強引なドリブル突破を仕掛ける無茶をしますが・・・、その結果ベンチ入りメンバーからも遠ざかってしまうことに。
4試合ベンチ入りできないでいたリュウジでしたが、エドゥが練習のケガのため大事を取って欠場、その代役としてベンチ入りのチャンスが巡ってきます。
対戦相手はバレンシア。
リュウジがU-17選抜チームの一員として出場した、あの国立でのスペインU-17代表として試合に出場し、リュウジにとっては因縁の相手とも言えるビクトル・ロペスが所属するチーム。
10巻では、ほぼまるまるそのバレンシア戦の様子が描かれていきます。
このバレンシア戦、コミック版の方ではしっかりと描かれてますが、原作の小説の方ではあっさりと流されている試合で、つまりは、10巻の大半がコミック版のオリジナルということになります。
試合は、まさにビクトル劇場(ビクトルのプレーをクラシックの名曲になぞらえている表現が面白い)と言わんばかりに展開され、バレンシアが前半のうちに2-0とリード。
両チームの圧倒的なパフォーマンス差に苛立ち、また、ビクトルとの再戦に執念を燃やすリュウジも早くオレを出せと監督に視線を送りますが・・・、なんとか流れを変えたいと考えてたのはチャパーロ監督も同じだったようで、あっさりと前半のうちに出番が訪れます。
リュウジは何とかしようと試みるも、好調バレンシア相手にカウンターを恐れる味方選手たちはチャンスの状況にもかかわらず攻撃に出てこようとせず、強い危機感を感じます。
そして後半、それでも諦めないリュウジは、いくら途中出場とはいえ、そんなに闇雲に全力ダッシュを繰り返したらあっという間に乳酸がたまってすぐに動けなくなるぞってぐらいに走り回ってチームを助けます。
そんなリュウジの動きに触発されたベティスの選手たちは、“動物園の檻”から抜け出し、積極果敢に攻めて1点を返すことに成功。このあたりは、少年マンガ的な熱さが感じられますね。
さらに同点に追いつくため攻め続けるベティスでしたが、再びビクトルが牙をむき、1-3と逆にバレンシアにリードを広げられてしまいます。
この時、リュウジの怒りをさらにかき立てたのは・・・
「捨て身に走ったベティスに反撃する力は残っていない……
確か……日本人は戦争の時帰りの燃料を積まない
“特攻隊”ってので戦ったと聞いたことがある……
今日のベティスはそんな感じ…… だろ“14番”!」
という、挑発的なビクトルの言葉でした。
試合前、以前国立で戦ったリュウジのことなど覚えていないというそぶりを見せたビクトルでしたが、実はしっかり覚えていた・・・!
なんとか、自分の存在をビクトルに刻み付けてやりたいリュウジは、3点を奪って試合への気力をオフしようとするビクトルに対し、イエロー覚悟で思いっ切り削りに行きます。
「……全くもって嫌になるよ……
雑音(ノイズ)がうっとうしくて仕方ない………!」
という態度を示すビクトル。
それでもリュウジは・・・
「……あの日
日本選抜対スペインU-17の試合があったからこそ
今のオレがある!!
そしてビクトル……オマエというプレーヤーと出会い……
オレの求めるサッカーを目の前で見せてくれたオマエとの出会いを……
オレは感謝すらしてるくらいだぜ……
……けどな まだ返してねぇ
オマエから味わった“敗北感”ってヤツを返してねぇんだよ……!!
たとえ今日の試合負けに終わるとしても
オレはこのまま終わるわけにはいかねぇんだ
わずかな傷跡でもオマエに刻み込まなきゃ
終われやしねぇんだよッッ 勝負だビクトル!!」
と、自分の思いのすべてをぶつけるため、1対1の勝負をビクトルに仕掛けていきます。
しかし、リュウジの動きを視線によってしっかり読んでいたビクトルに、軸足にボールを当てて股を抜くとっておきのリュウジのドリブルは止められてしまいます。
それでも諦めないリュウジは、ビクトルの死角から近づいてボールを奪おうとするも、身体を当てられ防がれてしまう・・・。
最終的には、自分の存在を刻み付けるどころか、逆にビクトルに実力差を見せ付けられる形。またもや“敗北感”のみを、血の味を味わわされることとなったリュウジの姿が描かれたところで10巻は終わります。
10巻は、コミック版オリジナルの部分なので、原作ファンの方にとっては、多少見方が分かれるかと思いますが、個人的には単行本としてじっくり読んでいって面白いなと感じました。
『龍時』という作品は、リュウジの(一般な主人公らしからぬ)歪んだエゴイスティックな感性の部分だったり、挫折感の中でそれを飲み込み、踏み越えながらステップアップしていく描写が面白いところだと思ってます。
9巻のプジョルに対する敗北も、今回のビクトルに対する敗北も、原作のもっともっと先が描かれていく時に、今回の描写がきっと生きてくる・・・、そういう今後の布石ということも踏まえて考えていくとより楽しんでいけるんじゃないかと思います。
10巻だけ切り取って読んでいくと、ビクトルが主役クラスで、リュウジは主人公の前に何度もしつこく立ちはだかろうとする小者・・・のようにも見えなくもないんですけどね・・・(苦笑
『龍時』は、原作の小説は今から7年ぐらい前が舞台の話ですが、海外リーグに挑戦していく若者の姿を描いていく作品として魅力的だと思いますし、現在はバルサに移籍しましたがビジャやモリエンテス、ベティス側にもワールドカップで日本戦にも出場したカメルーン代表のエマナといった実名選手たちも登場します(ついでに言うと、原作版のベティスの監督は、この記事を書いてる現在、日本代表監督候補のひとりに挙げられている、ビクトル・フェルナンデスだったり)。
現在、実名の海外クラブ選手たちが登場するサッカーマンガが読めるのは『龍時』だけ!
・・・ということで、個人的にも好きな作品の一つですし、読んだことのない方は一度手にとってみてはいかがでしょうか。
※
続く11巻では、ベティスでプレーするリュウジの姿が描かれていくわけですが、ピッチとは関係のないところでひとりの人物と出会うことになっていきます。
リュウジがベティスでその地位を確立していくのは、まだまだ先のお話ですが、続きを読んでいくのが楽しみです。
■ 掲載
第114節~第125節
ワールドサッカーキング2010年1/22号(No.134)~7/1(No.150)号
リュウジがビクトルに圧倒的な力の差を見せ付けられるところまで収録
タグ : 龍時
『YATAGARASU 23』 / 愛原司
2010.07.06 00:44
※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください
単行本感想がなかなかできなくてごめんなさい。
まずは、『YATAGARASU』23巻の感想です。
全日本クラブユース選手権地域大会準決勝。
森村と同等の才能を持つ緑川魁が実力を示し、夙沢サザンを相手に1-3とリードを許しているグランヴォーチェ。
しかし、後方からのタックルにトラウマがあり神経質になる魁は、イージーなミスを連発し始め、自分のプレーを見失っていきます。
試合の残り時間は15分を切り、諦めるには早いですが、かといって残された時間は決して多くない状況の中で、グランヴォーチェは2点差をひっくり返し勝利を収めることができるのでしょうか。
※
23巻では、夙沢サザン戦の決着がつきます。
魁のミスからの流れで、まずは1点を返し2-3とするグランヴォーチェ。
後方からのタックルに対するトラウマが想像以上に深いもののようで、自分を見失い苦悩しながらもプレーを強いられる魁。
そんな魁の心を動かすことになる、茂木&森村の恐れることのない勝利への執念を見せるプレーに、読んでいて胸が熱くなってきました。
1点を返したのは茂木のゴールだったのですが、その茂木はゴールを決めるとき、相手GKと強く接触し、その後ゲーム中に左目が塞がってしまうほどに腫れあがってしまいます。
魁が不調のままで、グランヴォーチェに試合の流れがある状況。
治療を終え、いち早くピッチに戻りたい茂木ではありますが、目を塞ぐほどに腫れあがってしまったとなっては、いくら冷やしたところで簡単に腫れが引いてくれるわけがありません。
でも、今のままではプレーに戻ることができない・・・。
そこで、総監督である伊集院のじっちゃんがある提案をします。
「マブタを切ってしまえっ」
・・・考えるだけでも私はゾッしてしまうのですが、茂木は何のためらいもなく「なんでそれを早く言わねーんだよっ じいさんっ!!」と返し、まばたきひとつせずマブタを切られ、溜まった血を抜き、治療してピッチへと戻っていきます。
痛い痛い・・・と思いつつも、勝利のためならこんな程度のことは恐れないというその執念には、ただすごいとしか言えません。
ピッチに戻った後も茂木は、治療した箇所を気にせずヘディングをするなどして・・・、とにかくそんな彼のハートの強さに胸が熱くなってします。
おまけに、魁のフェイントを真似しようとしてミスったけど、包帯がゆるく一瞬見えなくなったことが幸いして、思わぬスーパープレーからゴールを決めるシーンも見せてくれました。
一方、森村の方も。
試合中相手のタックルを受け、右足を痛めた状況でも勝利のために戦い続けます。
トラウマを抱える魁の、無理をしてもしプレーできなくなったらどうするんだという問いにも・・・
「ケガを怖がって100%の実力(ちから)を出してプレー出来ないなら……
それは俺にとってプレーしてないのと同じことだ!!」
と、魁の心を直接動かす後押しにもなる、カッコよすぎる言葉を返す森村。
そして、魁がトラウマを抱えるきっかけとなったのと同じ角度からタックルを受けそうになった森村が、“あえて痛めた右足”でブロックし、決勝ゴールとなるシュートを放つ。
そんな森村のケガを恐れないプレーも、私の胸を熱くさせてくれるものがありました。
ここまで茂木に森村のふたりをメインで取り上げましたが・・・
1枚イエローカードをもらっていても、決して怯むことなく魁を止めに行こうする長谷部や(結果的に、2枚目のイエローをもらってしまいますけどね)、そんな長谷部の2枚目のイエローの判定にボールを叩きつけて抗議する宮など・・・
彼らも含めた、勝利のために恐れることなく勇敢に戦っていく姿勢が、とにかく今回は熱かったです。
魁の側から話を見ても、何とか魁にトラウマを克服させてやりたいとあえて交替させなかった夙沢サザンの監督や、最後は修復される親子関係の描写も良くて、ここまで2巻以上に渡って描かれてきた夙沢サザン編でしたが、最後はスッキリとした気持ち読み終えることができた・・・そんな23巻だったと思います。
※
さて、続く24巻以降についてですが・・・。
準決勝を勝ち抜き、Jユースとの決定戦を戦えることが確定したグランヴォーチェ。
先の展開は、全然知らないので何とも言えないですが、まずはトーナメントの決勝戦が描かれることになるのでしょうか。次はどんな試練が待ち受けているのか、続きを読むのが楽しみです。
■ 掲載
vol.88~vol.91
月刊少年マガジン2010年2月号~5月号
夙沢サザン戦の決着まで収録
タグ : YATAGARASU
『LOST MAN 8』 / 草場道輝
2010.05.30 02:42
※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください
「マツモトの成長していく速さには驚いているが、
俺のほうが上にいくよ」
本田圭佑選手が帯に登場(2度目)している、『LOST MAN』8巻の感想です。
イングランド・プレミアムリーグのビッグクラブ、マンチェスター・ユニオンの一員になったマツモトは、リーグ開幕前のコミュニティーシールド、リバプール・シティ戦に途中出場。マツモトと交替したチームの絶対的とも言える司令塔、アルバート・シンプソンと遜色ないプレーを見せ、観客の喝采を受け一躍注目を浴びる存在となったマツモト。
8巻では、試合翌日、センセーショナルなデビューを果たしたマツモトのことが過熱的に報じられている様子を描き、マツモト、サカザキ、詩乃の3人が、これまでのホテル暮らしからマンチェスターに新たな拠点へ移り住むところから始まっていきます。
※
8巻で描かれていく主な内容は、いよいよここに来て明かされることとなったマツモトとサカザキの過去を描いた話と、プレミアム・リーグ開幕戦のバーミンガム戦。
8巻の前半で描かれていく過去編では、15年前マツモトが記憶喪失になってしまうきっかけとなった出来事から現在に至るまでの過程が、その期間をともに過ごしたサカザキの口から語られていきます。
当初、短期集中連載という形で始まった、初期の『LOST MAN』とは、若干設定のニュアンスが変わってしまっているように感じられる部分もあるのですが、作品の本筋、核心に迫ったお話として要注目のエピソードだと思います。
結果、マツモトとサカザキとの間で交わされていた代理人としての契約は、マツモトがビッグクラブでプレーし賞賛を浴びるようになったことにより契約は終了。そしてマツモトはサカザキと別れることになっていきますが、まだサカザキの野望が達成されたわけでもなく、マツモトのことを狙っていたデビッド・トラウズマとパートナーを組むという展開にもなり、まだまだ物語に深く関わる重要人物で話を面白くしていく存在であり続けるでしょう。
そして、8巻の後半では、プレミアムリーグの開幕戦のバーミンガム戦の様子が描かれていきます。
コミュニティ・シールドで活躍は見せたものの、シンプソンからポジションを奪うまでには至らなかったマツモト。
ピッチの中に主人公の姿はありませんが、それでもやっぱり、草場先生の描くサッカーマンガの面白さは健在です!
マンUは、試合序盤こそシンプソンを中心に攻勢に出るもののなかなかゴールを奪えず、逆にちょっとした不運もあり、カウンターから味方GKが相手選手を倒してPKを献上。そして、先制点を許してしまった上に、ファールしたGKも退場となり、10人で戦うことを強いられてしまいます。
さらに、なぜか接触プレーを極端に嫌うシンプソンの弱点(欠点)を徹底的に突いてくるバーミンガム。この展開に観客も焦れますが・・・、それでも動く気配をまったく見せないマンUの監督のチャーチル。
「ウィークポイントの一つや二つ… 誰にでもあるだろう。
それを補って余りあるストロングポイントを備えているからこそ……
王者のチームで不動の司令塔を張れるというものだ」
このチャーチルの言葉通り、シンプソンは欠点を吹き飛ばして余りある、己のプレーの本領を発揮します。
自身の右サイドを走るロジャーズ(C・ロナウドがモデルっぽい人)にパスを出すような動作を見せつつ、相手DFの意識を重心をロジャーズへと向けておき、そのコンマ数秒の時間を突いて左サイドを走るコンラッド(ルーニーがモデルっぽい人)にパスを送るシンプソン。
パスとしては凡庸のように見える・・・けど、かすかに見えるコンマ数秒の駆け引きによって逆を突かれてしまっているバーミンガムの選手たちは、反応したくてもすることができない。そして、そのパスがコンラッドのゴールをアシストする結果となりマンUが同点ゴールを奪う。
言葉で書くと上手く伝えられないのですが、このシーンを描く草葉先生の描写力は素晴らしいのひとことです。
作画の表現力も素晴らしいのですが、それにナレーションのテキストと組み合わさることで、さらに想像力をかきたたせてくれて・・・、本当にドキドキワクワクさせてくれるなと思います!
8巻では、そういったシーンはこれのみですが、今後もっとこういう展開を魅せてくれるんです。残念ながら、先のネタバレはここではできませんが・・・(興味があれば、連載雑感を辿ってみて下さい)。
連載初期の『LOST MAN』は、『ファンタジスタ』のサッカー描写が好きだった人に、(作品としての方向性の違いから)必ずしも勧められるというものではなかったのですが、今の『LOST MAN』だったらそういった人たちにも堂々と勧められる、むしろ読まないと損するぞと言って伝えたいほど私はすごく気に入っているという状態です(笑
個人的に、純粋にサッカー部分の描写においては、今一番輝きを放っている作品だと思っています。だから、もっと多くに人に読まれてほしい・・・、そう願っています。
少し話はそれましたが、その後、さらに逆転ゴールを奪うため、マツモトとミッコリを投入する決断をするチャーチル・・・ですが、その先は9巻を読んでのお楽しみとなります。
※
『LOST MAN』の単行本を買う時、ひとつのお楽しみとなっているのが、巻末のおまけまんがです。
そのおまけまんが、今回は2ページでもOKとのことだったのですが、とある事情によって10ページ分を描かざるを得なくなってしまった草場先生。
それは、、8ページ分増やしてまで(=単行本の製作単価が上がる)草場先生が描いた“20万円のネタ”については・・・、是非とも単行本で、ご自身の目でご覧になっていただきたいと思います。
・・・草場先生、こんなところでまんがの神様が光臨させなくたって・・・。
※
さて、続く9巻では、プレミアムリーグ開幕戦・バーミンガム戦の続きから描かれていきます。
シンプソンとマツモトを同じピッチの上に立たせる決断をしたチャーチル監督。
その采配はどんな結果をもたらすのか、ここからさらに面白いサッカー描写が多く見られるようになっていくので、単行本派の方は楽しみにしておいて下さい。私も単行本で読み返すのがすごく楽しみです。
■ 掲載
第68話~第77話
週刊ビッグコミックスピリッツ2009年49号~53号、2010年2号~8号
プレミアムリーグ開幕戦、マツモトが交替出場のためにジャージを脱ぐところまで収録
タグ : LOST-MAN
『龍時 9』 / 原作:野沢尚 漫画:戸田邦和
2010.03.09 00:46
※ネタバレとなりうる要素を含んでますのでご注意ください
今回から“第2部”として、スペインに渡ってから2シーズン目の様子が描かれていく・・・、『龍時』9巻の感想です。
念願だったリーガ・エスパニョーラの舞台に立ったリュウジは、リーグ戦最終節のバルセロナ戦で見事なドリブルシュートを決めた・・・!
ところまで8巻では描かれましたが、9巻では“第2部”のスタートということで、何の前触れもなく新シーズンへと話が移っていきます。
「日本人プレーヤー志野リュウジ ベティスへ移籍!」
・・・というわけで、9巻からは、アトランティコFCからレンタルでレアル・ベティスに移籍したリュウジの物語が描かれていきます。
※
8巻でバルセロナの選手たちが実名登場してるとはいえ、それはあくまで特例的で、個人的には版権関係がいろいろとあるし、リュウジがアトランティコ(架空)からベティス(実名)に移籍する話は読むことができないのではないか・・・と、ずっと考えていたので、今回こうして続きを読んでいくことができることを素直に喜びたいです!
ただ、原作である小説は、'02-'03シーズンを描いたもの。
8巻のバルセロナのメンバーは、2008年ぐらいのデータのものということからも察しがつくように、登場するメンバーが原作でる小説版とは違います。
そのあたり、あまりにメンバー古すぎても・・・という部分は確かにあるんですけど(今から7年も前のもの)、小説版ファンでもある立場からすると、ホアキンが登場しないのは残念だなぁと思ってしまいますね。ずっと先の展開を描いていくにあたって、ホアキンだからこそ意味があるシーンもありますし。
それに、メンバーが2008年ぐらいものということで(多分、ロナウジーニョのいるバルサを前巻で描きたかったからなんだろうなぁ)、9巻で登場するレアル・マドリードには、C・ロナウドやカカといった選手たちが登場しません。そのへんは、ちょっと中途半端な形になってしまっている感もあります(ロッベンやラウールなど、普通にレアルの選手が実名登場してるだけでも最近においては凄すぎる話なんですけどね!)。
ストーリーの方は、ベティスに移籍したリュウジが時折素晴らしい個性を見せるものの、現実を突きつけられる部分もあったりで・・・、本格的にチームに認められていくようになっていくためのプロセスを描いていくといったものになっています。
8巻でリュウジは、プジョルをフェイントでかわしてシュートを決めているわけですが、2度目の対戦が描かれる9巻ではプジョルの圧倒的なフィジカルを前にドリブルが通用せず、挙句はリュウジがボールを奪われ発動したカウンターが逆転ゴールにつながってしまうという苦い思いをさせられています。
バルセロナとの再戦では、小説版とは少々違った展開になっていて、コミック版では1回目の対戦でリュウジにかわされてしまったプジョルがリュウジのことを強く意識している描写があるといった、少年マンガ的なアレンジがなされてたりします(小説版だと、1回目の対戦でリュウジにかわされてたのはフランク・デブール)。
コミック版のオリジナルということで言えば、かつてシティオで一緒にプレーしていて、トップチーム入りをかけた紅白戦の中でリュウジが骨折させてしまったエミリオが再登場します。
どういった形で登場するかはご自身で読んで頂きたいのですが、プジョルに潰され悔しい思いをしたリュウジが、チーム練習としてやってることを無視してまでドリブル突破を挑み続ける姿を見て、刺激を受けるエミリオのシーンはすごく良かったと思います。
リュウジの方も、今回は少年マンガの主人公っぽいところも見せていますが(笑)、そんな我を通しつつひたすらストイックにサッカーに取り組んでいく姿というのは私は好きです。
そんなリュウジのメンタリティ、挫折感と反骨精神の描写を読み取っていくのが面白いな~と思います。
「願わくば迷わないでくれ 前に進むことを抗うことを!!
君のあの強気なプレーはたとえ今至らなくても
いつか必ず……… 必ずスタジアムも血脈となる日が来る!!
……そして 日本サッカーにも」
と、リュウジを取材に来た記者も言ってましたが、私も同じ気持ちで読んでいます。
話のベースをなっているのは数年前に書かれた小説ですが、スペインで挑戦を続けるリュウジの物語は、今でも色褪せるものはないですし、実在のリーガ・エスパニョーラを舞台に実名選手たちが登場するという点でも価値はあると思うので、もし未読の方がいらっしゃれば読んでみてほしいなと思います。私は、純粋にサッカーを主体に楽しめるサッカーマンガのひとつだと思ってます。
※
続く10巻では、ベティスで奮闘するリュウジの日々が描かれていくことになります。
小説はひと通り読んでいるので、先の展開は知っているんですけど、コミック版ではここからリュウジが成長していくプロセスをどのように描いていくのか、コミック版ならではのオリジナルの部分も含めて楽しみにしています。
■ 掲載
第102節~第113節
ワールドサッカーキング2009年7/16号(No.121)~2010年1/7号(No.133)
リュウジがベンチ入りすらできなかったアンダルシアダービーまで収録
タグ : 龍時
『LOST MAN 7』 / 草場道輝
2010.03.01 23:24
※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください
サッカーの本場・イングランドを舞台にしての物語が展開中!
『LOST MAN』7巻の感想です。
イングランドのビッグクラブ、マンチェスター・ユニオンのトライアルを受けたマツモト。デキレースとも言われるトライアルでしたが、シンプソンのコピーとしてばかりではなく、それなりに自分の色を見せることができたマツモト。
果たして、マツモトは無事マンUに加入することができるのか。
その結果待ちの状況から、7巻は始まっていきます。
※
7巻では、サカザキが敏腕ぶりを発揮し無事マンUに加入することができたマツモトとチーム加入後のマンUでの様子を描いた話、そして、記憶喪失で謎の多いマツモトの過去に関する外郭がさらに見えてくる描写といったところが見どころかと思います。
ファゼンダ編までの話も私は好きですが、やっぱり、イングランドに舞台を移してますます面白くなっているなと感じますね。
その背景には、サッカーの部分での魅力がより増してきているからなのかなと思います。
草場先生の描くコメディ描写が好きだということは過去の感想の中でしつこく書いてきましたが、その言葉に何ひとつ偽りはありません(今巻だって、ギボンさんの見せるいい親父キャラぷりや、ミッコリの中に国旗を仕込んでる場面とかは好きですw)。でも、やっぱり草場先生はサッカーを描いてこそ一番輝く人だと思うんですよ。
今巻、サッカー描写で魅せてくれたのは、後半の方で描かれた、コミュニティー・シールドのマンチェスター・ユニオンvsリヴァプール・シティの試合シーン。
マツモトと同じポジションのライバルであるシンプソンのプレーのすごさを描きつつも、シンプソンと交替で出場したマンUの観客からすれば「誰?」と言いようがないマツモトも決して引けを取らないプレーを見せる。
ここで魅せてくれる迫力あるサッカーシーンの数々は、やはり草場先生だから描けるものだと思いますし、読んでいて面白かったです。
(このへんの具体性については、後々の巻の感想で書きたいと思ってます)
そして、さらに圧巻だったのは、どこの誰だか分からない謎の人物だったマツモトが、チームの絶対的司令塔であるシンプソンと遜色ないプレーができると知った時のサポーターたちが示した反応です。
試合が終わって、「あの66番は一体何者なんだ?」というサポーターたちの純粋な疑問に、「彼の名はマツモト」と思わず立ち上がって口にした詩乃。それによって、マツモトという名を知ったひとりのサポーターが・・・
「groly~ UNION♪
There's only one・・・ MATSUMOTO!」
と、タオルマフラーを掲げ、マツモトの歌を歌い出す。
そのひとりのサポーターの行動が呼び水となり、たちまちスタジアム全体に「MATSUMOTO」コールが広がっていく・・・
所詮は想像でしかないんですけど、無名だったマツモトが多くのサポーターたちに認められた・・・このシーンの映像のイメージが頭の中に浮かんだ瞬間、ぶわーっと鳥肌が全身を駆け巡っていく感覚がありました。本当、このシーンは最高でしたね!
詩乃さんも思わずこんな表情を見せてしまう・・・。 このシーンは必見です。それも、その前のサッカーシーンがしっかり描かれていてこそだと思います。
序盤の頃の『LOST MAN』は、個人的には大好きなんだけど・・・という言い方にどうしてもなってしまってしまいますが、現在の『LOST MAN』だったら、サッカーマンガとしてサッカー好きな人にもお勧めできるかなと思います。興味のある方はイングランド編以降の『LOST MAN』をチェックしてみてほしいです。
※
今回、もうひとつ取り上げておきたいのが、本編ではないんですけど12ページもあるおまけまんがが、いろいろと裏話的なものが聞けて興味深く面白かったです。
やはり今の時代実名を使うには権利関係がいろいろあるんだなぁとか(そういう意味では、実名選手が普通に出てくる『龍時』はすごい)、イングランドのフットボール事情については漫画として分かりやすくアレンジしているんだなぁなど。
それと、個人的に笑ってしまったのは、6巻の表紙がシスターだったことについて・・・
のちのち主要キャラとしてしゃしゃり出てくるかもしれせんが、
6巻では端役もいいとこ。それなのに6巻の表紙だとゆうのは、
“萌え”を求めてジャケ買いしてもらおう!!
というあさましい考えからでした…
と、コメントされていたことです。
・・・草場先生、あなたの作品の魅力はそこじゃないですし、努力の方向が間違っていると私は言いたい!(笑
・・・思いっきり失礼極まりないことを書いてしまいましたが(苦笑 ちなみに、私の手元の資料によると、(シスター萌え効果によるものかは定かではないですが)5巻から6巻の売り上げは伸びています。
ただ、前髪出したがかわいいには同意ですし、出番こそ少ないかもしれないですが、作中のシスターはちょっと天然っぽさがあって好きですし(神父様のお姉さんですけどねw)、のちのち主要キャラとしてしゃしゃり出てきてもいいと本気で私は思ってますよ?
っと、話がどうでもいい方向に脱線しかけましたが(苦笑)、7巻はおまけまんがも面白いということで、興味のある方は是非単行本を買ってご自身の目で確認してみて下さい。
※
さて、続く8巻では、無事マンUに加入し、着々とその地位を築きつつあるマツモトの過去話が描かれていきます。
記憶喪失となってしまったマツモト、そしてサカザキにはどんな過去があるのか。
その鍵を握るメディア王・デビット・トラウズマとの関係は?
サッカー描写の面白さが増していく一方で、物語の核心に迫っていくエピソードにも注目です。
■ 収録
第58話~第67話
週刊ビッグコミックスピリッツ2009年38号~46号、48号
マツモトがサポたちに認められ、MATSUMOTOコールが起こるところまで収録
タグ : LOST-MAN
『YATAGARASU 22』 / 愛原司
2010.02.21 21:40
※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください
高円宮杯全日本ユース選手権への出場を目標に掲げ、全日本クラブユース選手権の地域大会を戦う、主人公・茂木但馬が所属するグランヴォーチェ城ヶ丘SC。
準決勝の対戦相手は、全員が各カテゴリーでトレセンなどを経験し、Jユースチームの撃破に執念を燃やしている、高い実力を持つ夙沢サザン。
試合は、(父親とは複雑な関係であるものの)森村と同等のズバ抜けた才能を持つ緑川魁のドリブルを長谷部がエリア内で倒し、夙沢サザンにPKを与えてしまいます。
そのPKの行方どうなるかといったところから22巻は始まっていきます。
※
22巻は、まるまる夙沢サザン戦の様子が描かれていきます。
今回は、収録のタイミング的に、物語の大きな盛り上がりというのはそれほどないですが、いつもながらにサッカー描写が上手く、サッカーシーンに魅力のある作品として安定した面白さがあるなぁと思いました。
本当、サッカーをしている身体の動きの描写が素晴らしく、フェイントから逆モーションを取る時なんか思わず「上手い!」って言いたくなってしまいますね(私的に愛原先生の切り返しの描写がすごく好き)。
魁がPKを蹴る時、ボールを見ずにGKの動きだけを見てボールを蹴るシーンなんかも、地味なんだけど魁のプレーのすごさを宮の視点からよく表現できているのではないでしょうか。
別の言い方をすれば、それだけサッカー描写が上手く表現できるだけに、プレーシーン中でのセリフの量はもう少し減らしてもいいようにも個人的には思ったりもします。
物語の方では、森村と魁、両チーム一の実力者それぞれがお互いを意識してプレーしている描写が結構好きだったりします。21巻で森村が見せたラボーナを魁が見せれば、森村も茂木がさんざん失敗してた魁のフェイントで突破してみたりなど・・・。
森村と魁で言えば、魁を高く買っているがゆえに、森村の実力を素直に認められないで憎まれ口を叩き続ける夙沢のキャプテン・設楽の描写には、ある種の微笑ましさを感じましたね。
一方で、茂木の方は、今回も見事な外しっぷりを見せてくれていました。
決して、シュートそのものは悪くないのにどころか、シュートに持って行くまでの形まではすごくいいのにな~。
「クソ――ッ
なんで俺のシュートはいいところで外れやがんだよ――っ!」
「クソッ あのGK俺に恨みでもあるのかよ」
という茂木のセリフもそうなのですが・・・
「相変わらず気前よく外しやがって」
と、つぶやく反町のシーンは、見て思わず笑ってしまいました。
このへんは、もはや恒例のネタと化してますね(笑
※
さて、続く23巻では、夙沢サザン戦の続きが描かれていきます。
再び2点差へと広げられてしまったグランヴォーチェですが、ここから逆転していくことができるのでしょうか?
脳裏に過去のトラウマが頭によぎる魁の今後のプレーへの影響や緑川親子問題、22巻では思ったより話に絡んでこなかった印象の長谷部、茂木のフェイントを成功させられるのか、さりげに通算2枚目のイエローを受け次の試合出場停止となってしまう塚口の描写は今後に向けてどのようなフラグとなっていくのか・・・など、気になるところもいっぱいです。
話のタイミング的に大きな盛り上がりのない21巻でしたが、物語的にここから面白くなってくると思われるので、次はまた4ヵ月後になるのかな、23巻を読むのが楽しみです。
■ 収録
Vol.84~Vol.87
月刊少年マガジン2009年9月号~12月号
過去のトラウマを意識した魁が簡単なコントロースミスをしたところまで収録
タグ : YATAGARASU
『LOST MAN 6』 / 草場道輝
2009.12.02 20:31
※ネタバレとなりうる要素も含んでいますのでご注意ください
「僕もマツモトも結果を求める思いは同じ!!!」
今回は、中澤佑二選手が帯に登場している、『LOST MAN』第6集の感想です。
※
物語の舞台は、フットボールの本場イングランドへ!
マツモトたちの次なるターゲットとなるクラブは、世界的ビッグクラブであるプレミア“ム”リーグのマンUことマンチェスター・“ユニオン”(他の巻にはないのに、この巻には「※この物語はフィクションです(以下略」の表記があって吹いてしまいました)。
今回の第6集では、そのマンUへの加入を目指す話が描かれていきます。 物語が本格的な動きを見せるという巻ではないのですが、今後の布石となる描写がちらほら見られ、毎週の連載(この記事を書いてる時点で、7巻の終盤に収録されるあたり)を追いかけている私からすると、いいタイミングで振り返ることができるものになっていました。
※
私の『LOST MAN』評は、“『ファンタジスタ』と比べるとサッカー分は少ないけど、草場先生の描くサッカー描写もコメディ描写もどっちも好きだー!”というものですが、今回もそれにたがわぬ面白さでした。
まず、今回はヒロインっぽさを見せる場面もありますが、コメディ要員としていつも私を笑わせてくれる詩乃さんが最高です。
カーリー(ブラジル編にも登場していた某華道家っぽい人)とのやり取りも好きなのですが、やっぱり、連載雑感の時にも書きましたけど、神父&シスターと出会うきっかけになるあのトラブルの件が単行本で読み直してもツボでしたね~。
草場先生の描くこのへんのノリが好きな人は、今回も期待していいと思います。
詩乃には、笑いの神が宿ってますね(笑
そんな詩乃が私は好きです。
そして、試合の描写がメインの作品性ではありませんが、やっぱり草場先生は面白いサッカー描写を描いてくれます!
マンUに加入するため、トライアウトを受けたマツモトは、一次選考を通過し最終テストに臨みます。 今回のマツモトのポジションはボランチ。しかし、そのポジションには、マンUの不動の司令塔アルバート・シンプソンという選手がいます。
このトライアウトでのマンUの本命は、右ウイングのマリオ・ミッコリ(マリモッコリ)。
100mを9秒台で走るという(!)ミッコリの裏のスペースに抜ける才能は、現在のマンUにはいないタイプで獲得を狙っているとのこと。
すでに“デキレース”の様相を呈した最終テストで、マツモトは仮想マンUとして構成されたチームのボランチ(=仮想シンプソン)として紅白戦に臨みます。
この“デキレース”という事実を知った詩乃は、試合のハーフタイムにテストを受けるのをやめるようにマツモトに言いますが・・・
「最後の最後まで何が起こるかわからんのがフットボールちゃうんか!!」
と、詩乃の助言を拒否し、試合の後半へ臨むマツモト。
もちろん、マツモトもそのまま終わるわけがなく・・・
シンプソンのコピーとしてマンUのサッカーにフィットすることを証明した上で、マンUが必要としているミッコリとの相性の良さ(その段階では、シンプソンには見せられないもの)をアピールしていきます。
このシンプソンとは違う部分をアピールするマツモトのプレー。
狭いスペースに絶妙なタイミングでパス出しをするマツモトのプレーには、『ファンタジスタ』のような匂いを感じ取ることができたかなと思います。
『LOST MAN』依然として、試合描写がメインとなる作品性でないのは確かなのですが、イングランド編は、イングランドサッカーの文化や雰囲気にも触れられた描写もありますし、これまでのシリーズの中では一番サッカー描写が面白くなっていると、私は感じています!
ヨーロッパのサッカーが好きな方(特にプレミアやマンU好きな方)、初期の頃の『LOST MAN』を読んで合わないなと思った方なんかは、今一度作品に注目してみてもいいと思います(それでも、合わない人には合わないのでしょうが・・・)。
あと、巻末のおまけまんがが面白かったです。
草場先生のそっち路線のサッカーマンガも読んでみたいなー。
読み切りでもいいので、いつか実現させていただきたいものです(笑
※
さて、続く7巻では、引き続きイングランド編が描かれていきます。
マツモトは、無事マンUに加入することができるのでしょうか。 そして、『LOST MAN』という作品の核心部分に、少しずつ迫っていく展開に注目です。
■ 掲載
第48話~第57話
週刊ビッグコミックスピリッツ2009年26号~36・37合併号
トライアルの合否を告げる電話が鳴るところまで収録
タグ : LOST-MAN
『YATAGARASU 21』 / 愛原司
2009.10.18 02:27
※ネタバレとなりうる要素を含んでいますのでご注意ください
愛原先生の前作、『VIVA! CALCIO』の20巻を越えた、『YATAGARASU』21巻の感想です。
高円宮杯全日本ユース選手権への出場を目標に掲げ、全日本クラブユース選手権の地域大会を戦う、グランヴォーチェ城ヶ丘SC。
予選リーグを無事首位通過し、決勝トーナメントの初戦の相手となるのは、GK・藤を中心とした堅守を誇る御陵川FC。
試合は前後半を終えスコアレス。
そして延長戦。鉄壁のGK藤を相手にPK戦を戦いたくないグランヴォーチェは、必死に攻めるものの得点を奪えず、むしろ、焦りの感情が先行し、普段ではありえないようなイージーなミスを連発してしまっているような状況・・・。
21巻では、御陵川戦決着。
そして、次なる戦いへと話が進んでいきます。
※
今回も、いつも通り面白かったです。
21巻を読むにあたって注目していたのは、御陵川戦の決着をどのようにつけるのかということでした(反町のFKか、茂木の破天荒さか、まさかのPK戦で宮が大活躍かなど)。
結果、試合の決着は、シューターの心理を読むことに長けた藤の想像をはるかに超える、“シンプルな脳ミソ”の持ち主の茂木が豪快にシュートを決め、グランヴォーチェが準決勝へと駒を進めることとなりました。
藤の読みというのは、前巻に続いて読み応えがありましたし、それを何とか打ち破ろうとする森村の思考・行動、そしてなんと言っても、試合状況とか何とかはお構いなしに、とにかくシンプルに、シュートを思いっきりぶち込むことしか考えてない茂木が痛快で面白かったです!
いくら茂木でも最後はしっかりと狙ってくるはず・・・は、ありませんでしたね(笑
「なんで俺のシュートは肝心なときにバーやポストに当たりやがんだぁ」
なんてことを言っていたり、この後に出てくる緑川魁のトリッキーなフェイントを真似ようとしてこけまくって味方に迷惑かけたり(しかも、実戦でも同じことやってるんだぜ?w)など、ギャグ要因として笑わせてくれることも多いですが、茂木はストライカーとしても着実に頼もしさが増してきていますね。
破天荒ばかりでなく、普通に上手さも身につけてき始めて、少し面白みに欠ける子になってしまうかなぁと思ったこともありましたが、決してそんなことはなく、ビッグマウスなところは相変わらずですし、読者を飽きさせることなく楽しませてくれる主人公です(笑
そして、御陵川を破ったグランヴォーチェの次なる相手は、Jユースのセレクションにギリギリ落ちてしまったメンバーを多く擁し(実力的には、Jユースメンバーたちと遜色ない)、街クラブの中では圧倒的な実力を誇る夙沢サザン。
夙沢サザン戦については、22巻がメインとなっていくようなので、ポイントとなりそうな部分を簡単に。
実力派揃いの夙沢サザンの中でも、特に優れているのが、才能レベルでは森村ぐらい才能とされる緑川魁。夙沢サザンに入る前は、元Jリーグユースで主力だったけど、父がリストラにあい、自ら働くためチームをやめたとか。
話のテーマは、プロサッカー選手になって日本代表に選ばれることという魁の幼い頃の夢に、過剰な思いを乗せている魁の父(天野監督の友人でもある)との、歪んだ親子関係となってきそうです。
そして、魁と同じような境遇にあった長谷部も物語に絡んでくる気配。
天野監督が長谷部を魁のマンマーカーに指名したのは、意図的なものがあると思われます。長谷部は、夙沢編の実質的な主人公という扱いなのかもしれませんね。
※
いつもながらに、サッカーをしている動きを描く上手さが光っている愛原先生。
フェイントやキックのモーションや競り合いのシーンなど、サッカーをしている身体の動きの上手さは、サッカーマンガを書かれている漫画家さんの中でも間違いなくトップクラスだと思います。また、“見栄えのいい見せ方”というのを、良く知ってらっしゃる方なのでしょう。
今回、個人的に良かったなぁと感じたのは、夙沢サザンvsトゥットの試合で、夙沢サザンがダイレクトでパスを数本つなぎ崩していたシーンです。
相互理解がしっかりとできていて、複数の人とボールが連動して動いている、その“連動感”がすごく上手く描けていると思うんですよ。
特に、パスを出して、近くにいる味方がまたいでスルー、一人飛ばした遠くの味方がパスを受けているという描写が効いていたと思います。
プレー描写の中から、夙沢サザンというチームのレベルの高さが伝ってくるシーンだったのではないでしょうか。
言葉だけでは上手く伝わらない・・・かもしれないですが(苦笑)、この部分はきちんと記事の中で取り上げておかなければと思いました(笑
『YATAGARASU』は、サッカー描写的に素晴らしい作品だと思います。
サッカーが好きで、しっかりサッカーをしているサッカーマンガを求めている方には、絶対にと言えるぐらい読んでもらいたい作品です。
※
続く22巻では、引き続き夙沢サザン戦が描かれていきます。
前半の早い時間帯で、魁のドリブルをエリア内でファールしPKを与えてしまった長谷部。 さらには、イエローカードまでもらってしまい・・・。
試合に行方も気になりますが、緑川親子の関係、PKを与えてしまった長谷部のプレーはどうなってしまうのか(魁のようなプレーヤーにはタイトなマークをしていかないときついわけで・・・)、また、結局一度も成功しないまま試合に臨んだどころか試合でもやらかしてしまった茂木のフェイントは成功するのか・・・などといったところにも注目したいです。
例によって、この作品は単行本だけで読んでいるので先の展開は本当に知りません。
22巻の発売は、スケジュール的に来年の2月になるかと思いますが、発売を楽しみにして待っています。
■ 掲載
vol.80~vol.83
月刊少年マガジン2009年5月号~8月号
夙沢サザン戦、長谷部がPKを与えるところまで収録
タグ : YATAGARASU
『龍時 8』 / 原作:野沢尚 漫画:戸田邦和
2009.09.08 02:23
※ネタバレ要素となりえる要素を含んでいますのでご注意ください
今回も1年以上待たされることはなかった!(笑
第1部がクライマックスを迎える、『龍時』8巻の感想です。
「オレ…… スペイン人になって
この国のサッカーを自分のものにしたい……
何もかも捨ててこの場所から始めたいんだ……!!」
「オレにはまだ自分の手で捨てなきゃならないものがあるッ
母…… 妹…… 故郷…… 日本サッカー 国籍……
……そして もう一つのもの!!」
スペイン人に帰化することを決意したリュウジが、もうひとつ捨てなければならないもの・・・。
それは、自分のサッカーの原点であり・・・
自分に対して嘘をつき金ヅルとして利用することを目論む、父・時任礼作。
8巻では、父との決別を決意したリュウジが、礼作と会い、自分の気持ちを伝えるところから始まっていきます。
※
父・礼作との決別・・・
「いつか恩返しをしたいと思っていた!!
だからこそ見てほしかった!!
アナタが育ててくれた『オレ』(サッカー)が世界の舞台に旅立つ姿を!!」
と、7巻で礼作の陰謀が発覚した時、リュウジ自身がそのように言っている通り、自分の成長を誰よりも礼作に見てほしい願っていました。
しかし、リュウジの願いとは裏腹に、礼作は、リュウジを金儲けの道具として利用としようと目論んでいた父・・・。
リュウジにとって礼作は、実の父親というだけではなく、フットボーラーとしての原点、育ての親でもあり、自分の心の支えとなっていた存在。そんな礼作の“裏切り”とも取れる行為を知ったときは、言葉にできないほど大きなショックだったでしょう。
けど、フットボーラーとして前進していくために、決別を決心した自分の気持ちを伝えなければならない。
リュウジの礼作に対する想いの強さというのは、作品を通して見られるだけに、リュウジの心境を考えると複雑なものがあります・・・。
ただ、そんな中でも救いだったのは、礼作に息子を想う良心が残されていたこと。
「ならば一つだけ親らしい忠告をさせてくれ……
帰化すれば後で思い直しても簡単に日本人に戻れなくなる……
日本がいつかお前を必要とする時が必ず来る……
自分は日本サッカーに捨てられたと思ってるかもしれないが
助けれてやれ!! いつの日か『日本』(あのくに)を
お前は父親まで捨てるんだ 国まで捨てることはない」
父親からの最後の忠告、そして別れ・・・
この場面は、本当に泣けました。
『龍時』は、こういうタイプの泣かせる場面って、結構ありますよね・・・。
※
もうひとつの見どころは、リーグ最終節のアトランティコvsバルセロナ。
ロナウジーニョ、シャビ、プジョル、メッシ、エトー・・・
メンバーは少し古いですが、あのバルサの選手たちが実名で登場し、ピッチの中を駆け回る姿をお楽しみください、と!(笑
また、コミック版では、小説版とは違い、シティオで一緒にプレーをしていたエミリオとアントニオ、そして、以前U-17選抜チームで一緒にプレーし、リュウジのライバル的な存在だった梶が(あと、FWの三村も)、リュウジの試合を観戦に訪れています。ハーフタイム中でのリュウジと梶のやり取りは、ニヤニヤとさせてくれるものがありました。
そして、物語は第1部のクライマックスへ。
「好きにやってこい……!」
いかなるときでも守備偏重の布陣を敷く、リュウジとは相性が良くないタイプであるアルバレス監督からの思わぬ言葉に驚きながらも、ピッチへと送り出されるリュウジ。
ついに訪れたリーガデビュー。
両チームの選手が80分間命懸けでピッチに放ってきた熱を肌で感じながら、「ならばオレも……!」と、その熱と同化してピッチを駆け回るリュウジ。
途中、プジョルに手荒い洗礼を受けるものの、
それがリュウジの中に眠る“龍”が目を覚ますこととなり・・・
そして、“その瞬間”はやって来ます!
後半ロスタイム、1点のリードを守るため時間稼ぎに入るバルサから味方がボールを奪い、そのボールはリュウジの下へ。
リュウジは、さっきのお返しと言わんばかりに、切れ味鋭いシザースでプジョルをかわし、空いたシュートコース・・・
迷わずシュートを狙いにいくリュウジ。
ふと、リュウジの脳裏には、幼い頃、父と一緒に河川敷で蹴った4号球の姿が浮かび、そのイメージを重ねながら放たれたシュートの行方は・・・!
・・・あえて、その結末は書きませんが、第1部のクライマックスは、2巻でリュウジがスペインU-17代表からゴールを奪った時と同じくらい、私の気持ちを昂ぶらせてくれました!
※
『龍時』は、非常に質の高い小説をベースに、リアリティのあるサッカー描写と、サッカーを主体とした人間ドラマが魅力的な作品だと思います。
実名のリーガ・エスパニョーラの選手たちも作中に登場しますし(9巻以降も登場します)、 サッカーの要素の強いサッカーマンガ(サッカーマンガと言っても、サッカーが一番大切な要素になって作品は結構多い)を読みたい方には、手に取ってもらいたいと個人的には思います。
※
さて、続く9巻では、第2部が始まっていきます。
リュウジはスペインでの2シーズン目を迎えることになるのですが、原作の小説を読んでいない方には、ちょっとした驚きがあるかもしれません。
リーガ・エスパニョーラを舞台に、コミック版のリュウジがどんなプレーを見せてくれるのか。
実在選手たちとの競演という点でも、先の展開が楽しみです。
■ 掲載
第89節~第101節
ワールドサッカーキング2009年1/8号(No.105)~7/2号(No.120)
第1部終了まで収録
タグ : 龍時