『MAGiCO 5』 / 佐久間力
2010.04.21 21:04
※ネタバレとなりうる要素も含んでいますのでご注意ください
書くのが少しばかり遅くなってしまいましたが、『MAGiCO』5巻の感想です。
高校総体県予選を戦う撫高。
1次予選の3回戦、閃光の司令塔・脇坂を擁する湘南育英に苦戦を強いられた撫高でしたが、最後は蔵希の魔法(マジコ)が炸裂し2-1で勝利。
5巻では、そんな湘南育英戦の勝利が決まった瞬間後、喜びを爆発させる撫高メンバーたちの様子を描いたシーンから始まっていきます。
そして、話は1次予選の決勝へと話は移っていきます。
1次予選決勝の相手は青葉第一。
青葉第一は、身長が190cm以上あるというセンターバック2人、難攻不落のツインタワー黒田と福島がゴール前に立ちはだかる、本来だったらシード校クラスの実力を持つ相手。
そんな相手に撫高はどんなサッカーを見せてくれるのでしょうか?
※
5巻の見どころは、まるまる描かれていく青葉第一との戦い。
黒田&福島のCBツインタワーは、攻撃でもツインタワーを成し、攻撃時にはゴール前まで上がりFWとして果敢にゴールを狙っていく・・・。
ゴール前で持ち前の高さを活かしたプレーもあれば、レフェリーのジャッジを上手く味方につけようとするクレバー(狡猾)さもあったり、何よりケガすることを恐れない攻守に渡った激しいプレーで撫高を苦しめるツインタワーの2人。
FWのごとくCB2人が同時にゴール前に上がるというのは、漫画だからこそできるプレーではありますが、これはこれで面白いんじゃないかと思います。
じゃあCB2人が同時に上がるなら、上がったそのスペースを突けていけばいい。
しかし、ゴール前の攻防を守り切った撫高が、カウンターで攻めようとしても、CMFの可児小太郎があり得ないほどのスピードとスタミナ、的確なカバーリングで撫高の攻撃の芽を摘んでいきます。・・・いくら漫画とはいえ、これは反則かもしれません(笑
結局は、その可児にもゴールを決められてしまい、0-3とリードされた状況でハーフタイムを迎えることになる撫高。
5巻の本当の見どころはここからにあります。
撫高の苦戦の要因のひとつなっていたのは、撫高の左サイドが再三に渡って破られ、クロスを入れられてしまっているところありました。
蔵希を除き、3点のリードを奪われ意気消沈する撫高のメンバーたちの中でも、特に自分のところを破られてしまった左SBを守るダッキーこと喜田は強い責任を感じています。
そんなダッキーに言葉をかけたのは蔵希。
蔵希は、ダッキーのユニフォームを脱がせると・・・
「こんだけ汗かいてる奴を誰が責めんだよ」
と、ユニフォームを絞ります。
そんな蔵希の行動が、ダッキーばかりでなく、他の選手たちの闘志をも蘇らせていく・・・。このシーンがすごく私は好きですね。
そして後半、前半とは打って変わって意地を見せ始めるダッキーは、相手の突破を止め、相手のスライディングも軸足でブロックしつつキープし、勝利への執念を見せて蔵希へとつなぐ。
蔵希もダッキーの思いに答えるべく、可児のマークが迫る中、魔法(マジコ)ではなくすねに当てた状態で、強引に脚を振り抜いてシュート。それが、思いも寄らぬ軌道を描きゴールが決まる・・・いやぁ、このシーンは熱かったですね。マジコを発動させたのではなく、気持ちで決めたゴールだったところがまた良かったんじゃないかと思います。
その後は、今後のきっちり魔法(マジコ)でもってゴールを決める蔵希。
蔵希の発動する魔法(マジコ)は、やはり読む者をワクワクさせてくれます。
シンプルで王道的はあるけれど少年漫画らしい熱血さと、サッカーというスポーツを崩さない程度に漫画じゃなきゃできないスペシャルな個人プレーを魅せてくれるサッカー描写。このあたりのバランスがひとつの少年サッカーマンガ漫画の形として優れていて、個人的にはリアリティ側にバランスが振られた作品の方が好きではありますけど、これはこれで面白いなぁと思いますね。
サッカーマンガにおけるリアリティとファンタジーのバランス感覚の好みって人それぞれあると思うんですけど、適度にサッカーもしていて、“適度にファンタジーのあるプレー描写もあってほしい”という作品をお求めなら、一度手に取ってみてほしいなと思います。
※
さて、続く6巻では、青葉第一戦の続きが描かれていくことになるはずですが・・・
単行本の帯にもありますが、現在佐久間先生は、『岡崎慎司物語』の読み切りを月刊少年ライバルに掲載中ということで、『MAGiCO』の連載をお休みしています。
なので、まだ6巻収録分も連載されていないですし(別の言い方をすれば、単行本と連載のライムラグがないので、連載を追いかけるなら今ですよ!)、単行本が発売されるのは結構先になってしまうと思われます。
果たして、まだ1点のリードを許している撫高は、同点、そして逆転していくことができますでしょうか。5巻のラストにチラッと登場した謎の少女の正体と共に気になるところです。
■ 掲載
STAGE16~STAGE19
月刊少年ライバル2009年12月号~2010年3月号
青葉第一戦。3点のリードを許している撫高が2点を返すところまで収録。
タグ : MAGiCO
『未来のフットボール』 / 大和屋エコ
2010.03.22 23:24
※ネタバレとなりうる要素を含んでますのでご注意ください
週刊少年サンデーにて、フットボールサスペンス『T.R.A.P』の連載をスタートさせた大和屋エコ先生。その連載開始に合わせる形で単行本化された大和屋先生の前作、『未来のフットボール』の単行本を読んだ感想です。
※
主人公の名前は、冬堂未来(とうどう みらい)。
未来は高校卒業後、アンダルシアFCというスペイン2部のクラブでプレーしていましたが、これといった結果が残せず3ヵ月後にはリザーブチームに降格。
未来はイングランドのダーラムというクラブと対戦するため、船旅で遠征中でしたが、その途中で船火事に遭ってしまいます。チームメイトからは、海に飛び込むよう言われますが、泳ぐことが苦手で躊躇してしまう未来。
そんな万事休すの未来は、英語を話す謎の男に手を引かれ、結局海へ飛び込むことになりますが・・・
気が付くと未来は、とある海岸まで流れ着いていました。
その場所は、遠征地でもあるイングランドのダーラムだった・・・まではよかったのですが、その時代はなんと1887年と120年以上も前の世界。
あまりに理解しがたい状況に、取り乱し、途方にくれる未来でしたが・・・
「サッカーから離れちゃいけない。
そうすれば… オレのいた世界と繋がっていられる気がする。」
自分を助けてくれた120年前のダーラムFCのメンバーの少年・エディたちの願いもあり、未来は翌年から始まるプロリーグ入りを目指すダーラムFCのメンバーとして120年前のピッチに立つ決意をします。
・・・といった感じで、この『未来のフットボール』の物語は始まっていきます。
※
この作品は、純粋なサッカーマンガというよりは、帯のコピーにもある通り“SFサッカーストーリー”といった色合いの強いものに仕上がっています。
その点について、作者の大和屋エコ先生の言葉を借りれば・・・
「この物語は、単にサッカーをスポーツとして描くより、
何か「プラスアルファ」して面白いことができないか…
では、タイムトリップ要素を加えたらどうなるか…
ならば時代はプロサッカー黎明期に…
というように、泥縄式に(笑)生まれた物語です。」
とのこと。
その言葉の通り、この作品の見どころは、サッカー描写ではなく(この点について後ほど書きます)、冬堂未来とエディ(と、周辺のダーラムの人々)120年の時代を超えサッカーを通じて紡がれていく友情物語にあります。
SFサッカーの設定として細かいところを見ていくとツッコみどころもあったりするのですが、そのあたりは目を瞑って、純粋にサッカーを通じて時代を超えた友情物語として見ていく分には、絵柄と作品の世界観が非常にマッチし丁寧に描き物語を読ませてくれるもので、私はなかなかの良作ではないかと思っています。
トップからリザーブチームに降格させられてしまった主人公が、120年前の世界にタイムトリップ。そこでエディたちと出会ったことによって、これまでの未来に一番欠けていたものに気付き、大切なものを手に入れていく・・・
それは、仲間を信じること・・・
自分を120年前の世界に連れてきたリチャードという人物を見つけ、元の時代に戻す約束を取り付けた未来でしたが、年老いたリチャードは勝利すればダーラムのプロリーグ入りが決まる試合中の時間に、命が尽きることを知らされます。
すなわちリチャードの命が尽きるまでに元の世界に戻られなければ帰る術を失ってしまう・・・けど、もしダーラムがプロリーグ入りできなければ、雇い主にタンカを切ってまで自分をダーラムに受け入れてくれたエディたちが働いている炭鉱をクビされてしまう。
そこで未来は、前半のうちに3点差をつけ、勝利への十分なお膳立てをしてから、この時代から去る決意をするのですが・・・、得意のテクニックで単独突破しか仕掛けてこない未来の動きは相手に読まれ、突破はことごとく潰されてしまいます。
「オレが…… 決めるんだ!! オレが――」
なんとしてでもダーラムを勝たせたいと懸命にプレーする未来でしたが、思うほどに、突破をしかけようとするほどにゴールは遠く、とうとう1点も入れられないまま、前半を終えてしまいます。
そんな未来に対して激怒したのがエディ。
「お前の故郷ではフットボールを… 一人でやるのかよォ!?」
自分たちにパスを出さず、一人でサッカーをし続ける未来のことを、思わず殴ってしまうエディ。
素性の知れない異国人である自分を信頼してくれたダーラムの人たちに対し、お世話になったお礼に彼らを“勝たせてやろう”と、チームワークのことを考えず、少々傲慢に己を過信した強引な突破をはかろうとしていた自身の愚かさ知った未来。
ようやく大切なことに気付いた未来は、リチャードの命が尽き、もう元の時代に戻る術がないと知りながらも、ダーラムのために後半のピッチへと立つ・・・
その後、どんな結末が待ち受けているのか、未読の方は是非ご自身で読んでいただきたいのですが、未来とエディの時代を超えた友情物語、過去の世界で大切なものを手に入れる未来の描写というのは、作品の世界観をすんなりと受け入れられるのなら、読んでいてきっと涙してしまうと思います。
「仲間を信じることで―― 仲間もオレを信頼してくれる。
やってることはお前らの時代と変わらないんだけどな。
当たり前か。
オレたちの立っている場所は同じなんだから――
たとえ120年後の未来でも。」
要は、未来とエディ、たとえ生きる時代は違っていても、サッカーによってつながっている・・・とまとめられたラストの部分も私は好きだなぁ。
そしてそして、この『未来のフットボール』の単行本には、描き下ろしのアフターストーリーが収録されていて、ひとつはエディSIDE、もうひとつは未来SIDEの2つがあります。
『未来のフットボール』という作品全体で見た場合、このアフターストーリーを読んでこそ、完結まで読んだと言えるでしょう。
内容については、あえて伏せておきますが、話としては想像のつくベタなところではあると思うんですけど、これがまた・・・これ自分で書くのは結構恥ずかしいんですがボロボロと泣けてしまいました。
もし、サンデー超やクラブサンデーなどで読んで、この作品が気に入っているのなら、“絶対にこのアフターストーリは読んでおくべきだ!”と、強く主張しておきます。きっと、私の同じ反応をするはずです。
※
ここからは、『未来のフットボール』をサッカーマンガとしての視点から読んだ感想を書いていこうと思います。
作品の第1話では、120年前の世界にタイムトリップした未来が、マルセイユ・ルーレットなど現在の技を駆使して大活躍を見せていきます。
このオフサイドのルールも現在と違い、キック&ラッシュの概念しかなかったであろう、プロリーグが発足しようかといった時代のイングランドを舞台に現代サッカーのテクニックを持ち込んでいくといった設定、発想がすごく面白く、1話を読んだ当時、ここからどんな風に世界が広がっていくんだろうという強い期待感を抱いていました。
・・・ですが、残念なことに、元から物語は単行本1巻分構想のもので、サッカー方面に話が広がっていくことはありませんでした(最終話で、この時代にゾーンディフェンスを持ち込んではいましたけどね)。
2話で19世紀の時代に21世紀のテクニックを持ち込んだのは、未来が一番最初ではなかったという話が出てきた時点で、すでに可能性は潰えてしまっていたのですが、この設定を上手く突き詰めていけば、サッカーマンガ史上最高レベルの一大スペクタクル作品になれるかもしれないとすら思っていただけに、あー、なんてもったいないんだーというのを強く感じました。
サッカー方面に話を広げていくためには、サッカーに関しての知識、特に歴史関係に協力者の存在が必要不可欠かと思いますが・・・
もし、19世紀の世界に21世紀の知識を持ち込んだら、現在サッカーはどのように発展していったんだろう?
という、パラレルワールドを描いたサッカーマンガには、私自身非常に興味を抱いているので、設定が駄々被りしたっていいじゃない、だから、誰かそんなサッカーマンガを描いてくれーと思ってしまいますね。
大和屋先生の描く世界観からは、最高傑作にできるだけの素地が十分感じられただけに、ちょっと未練がましい感情もあり残念に思いますが、現在大和屋先生は、フットボールサスペンス(やっぱり、そういった方向なんだなという)『T.R.A.P』の連載が始まったことですし、今後はそちらの方を応援したいと思います。
1話で未来がタッチライン際をドリブルしていた時、あえてタッチラインの外側にまたいで相手を惑わしてかわしていくシーンなんかには、私的にセンスを感じてたんだけどなー・・・(ぼそ
※
・・・ということで、サッカー描写として面白い場面もあるけれど、物語の本質としては、サッカーを通じ時代を超えた友情物語で、後者として読んでいくには、秀逸な出来の作品ではないかというのが私の見方です(SFとしてみると細かな設定にアラがあるかもしれないですが)。
作品の持っていた可能性を考えると、惜しすぎる点があることを否定しないけど、個人的は結構好きですし、サッカー好き以外の人にもお勧めしやすいものなので、もし興味があれば、この記事を書いている時点では1話の試し読みができますし、是非ともチェックしてみていただければなと思います。
(参考リンク:未来のフットボール(クラブサンデー内詳細ページ))
■ 収録
第1章~最終章
週刊少年サンデー超増刊2009年APL.号~JUL.号
描き下ろしのアフターストーリーも含め完結まで収録
タグ : 未来のフットボール
『MAGiCO 4』 / 佐久間力
2009.12.06 18:24
※ネタバレとなりうる要素も含んでいますのでご注意ください
少しずつ面白さが増してきていて、個人的には今後の注目作のひとつに挙げたい、『MAGiCO』4巻の感想です。
高校総体県予選を勝ち進む撫高。
2回戦終了後、弱小の撫高になぜか入学していた元U-15代表の右SBの片倉哲平がチーム加わり、迎える3回戦の相手は湘南育英。
“閃光の司令塔”の異名を持つ脇坂直人を擁する湘南育英を相手に、撫高はどんな戦いを見せてくれるのか。また、新戦力の哲平はどんなプレーを見せてくれるますでしょうか。
※
冒頭にも書きましたが、『MAGiCO』は、少しずつ面白さが増してきてると思います。
基本的に、名のある必殺プレーが飛び出す(と、言ってもマジコを使うのは主人公だけですが)マンガ的なサッカー描写の作品ではあるんですけど、その中でも、創造的な閃きやプレーといったサッカーの魅力的な部分を上手く作品に取り込めているので面白いなと思います。
巻数を重ねていく過程で、ファンタジーである部分とサッカーの面白い部分のバランスが取れてきて、磨かれてきていると感じます。
哲平が右SBにもかかわらず、中央からパス交換でボールを持って上がり、センターサークル付近でキープしてタメを作り相手を寄せ付けたところで、相手ディフェンスの裏を取った蔵希に絶妙なパスを送る。ボールを受けた蔵希は、“ヴァーラ ヂ ペスカ (海神の釣り竿)”というマジコを発動してGKをかわし、カバーで残ってる脇坂のタイミングをずらすようにトゥーキックでシュートを放つシーンや・・・
哲平がビックブリッジで相手をかわし中に切れ込み、2回のシュートフェイントを混ぜ、最後はシュートを見せかけて軸足に当て、それを蔵希が決めるといったシーンなどは、そういった面白さがあったと思います。
作画的には、熱さを持った少年マンガらしく、力強さを押し出したものになっていますが、このあたり、もう少し柔らかさとでも言いましょうか、演出面で緩急の表現が見られるようになってくれば、もうワンランク上の作品になれるのではないかと思ってます。
もしこれがリアリティさやウンチクといったものを前面に出すような作品だとしたら、もっと注文つけたくなる部分もありますけど、そういうものではないですし、これはこれでいいと私は思います。まだまだ発展途上にあると思っているので、今後にさらなる期待をしています。
※
ストーリーの方も、いつも通り、ありきたりなところはありますが、熱いものを見せてくれました。
湘南育英の脇坂は、不整脈が持病であり、そのため激しい運動をすることが許されない。その制限があるがゆえに、パスの精度を極限まで高め、試合の流れを的確に読むことによって、最小限の動きで最大限のプレーができるよう努力し続けた。その結果が、“閃光の司令塔”という異名を持つプレーヤーになったということ。
その脇坂は、蔵希のプレーを止めるため、そして勝利するために、自らの力を解き放って同点ゴールを決めます。
しかし、無理をしすぎたがゆえ、監督からは交替を命じられてしまいますが、これが最後の大会である脇坂に悔いを残させないため、一緒に最後までプレーさせてほしいと願い出るチームメイトたち。
その気持ちを汲み取った監督は、脇坂に1分だけのプレーを許し、それまでは休んでいるように命じるのですが、そこから両チームの全力を尽くした戦いというのが熱かったですね。
蔵希も蔵希で、ひたすらに走り続け、注意されますが・・・
「もし何もしないで負けちまったら いや勝ったとしてもだ…
残った体力の分だけ気持ち悪いんだよ!」
という蔵希の言葉には、グッとくるものがありました。
シンプルだけど熱を帯びたストーリーに、リアリティ路線ではないけれど創造的なプレーの面白さを感じられるサッカー描写。
手放しで絶賛するレベルとまではまだいかないですが、私は結構好きですし、期待もしています。まぁほら、中村憲剛選手も読んでますし、内容に興味があればぜひチェックしてみて下さい。
憲剛選手といえば、巻末のおまけマンガでは、月刊少年ライバル10月号に掲載された、佐久間先生と憲剛選手が対談された時のことが描かれています(残念ながら、対談記事の掲載はありませんでしが)。憲剛選手は、講談社から本を出版した事情もあるのでしょうが、講談社のサッカーマンガ絡みでよく見かけますねー。
※
さて、続く5巻では、次なる戦い、県1次予選の決勝が始まっていきます。
次もまた個性的なチームとの戦いになっていくのですが、撫高がどんな戦いを見せてくれるのかは、読んでみてのお楽しみです。
■ 収録
STAGE 12~STAGE15
月刊少年ライバル2009年8月号~11月号
湘南育英戦、試合終了のホイッスルが鳴る瞬間まで収録
タグ : MAGiCO
『MAGiCO 3』 / 佐久間力
2009.08.05 23:24
※ネタバレとなりえる要素が含まれていますのでご注意ください
「こんな選手と一緒にサッカーできたら最高に楽しそう。
僕も魔法(マジコ)を使いたい!」
と、帯にて中村憲剛選手がコメントしている、『MAGiCO』3巻を読んだ感想です。
高校総体神奈川県一次予選、海老名東高校と対戦している2回戦は前半、 海老名東の10番・別所が直接フリーキックを決め、撫高は先制を許してしまいます。
その後、蔵希もマジコ・“ガット ハーボ”を繰り出し、相手ゴールに迫りますが、 これまでPK以外の失点がないという、海老名東のGK・糟谷が守るゴールを破れず、結局0-1のまま前半終了。
過去に別所との間に何かトラブルがあった光のプレーも精彩を欠いたまま、 ハーフタイムを迎えるところから3巻は始まっていきます。
※
熱血的な王道ストーリーと蔵希の魅せる“マジコ”が面白い『MAGiCO』。
佐久間先生も徐々に慣れてきているのか、作画の力強さも増し、良くなってきているように感じます。
3巻の見どころは、試合の決着がつく海老名東戦の後半。
光と別所の過去を知ったカトパンは、光に言葉をかけます。
「オレたちは11人しかいないんだ
オレもお前も他の者もみんな代わりはいない…
だからと言って絶対に退場にするなと言うわけじゃない
全力を出し切っての結果ならオレたちは誰も責めたりはしない!
結果を恐れるな 思いっきり行け!」
これによって光は、過去を振り切り、撫高サッカー部として前進していく、 この場面が好きでした。
そして、撫高は、まずは同点に追いつくために反撃を開始していきます。
糟谷からゴールを奪うために、ひたすら“ガット ハーボ”を打ち込んでいく蔵希。
ただ闇雲に同じマジコを使い続けるのではなく、ボールに回転を加えてみたり、
クロスボールをダイレクトに打ってみたりなど、技を変化させながらゴールを狙っていきます。
そして、ついに糟谷によってロックされ続けた鍵ををこじ開けることに成功!
「オレの魔法(マジコ)は進化するんだよ!」
同じ技を変化、進化させ、あくまで真っ向勝負で挑み続け打ち破っていく蔵希の姿勢。 そこが、熱くさせてくれましたね。
同点に追いついてからは、光と同様、過去を振り切り前進し始めた別所を中心に、あわや失点(結果オフサイド)という場面もあったりましたが・・・
「絶対勝―――つ!!!」
最後は、別所との競り合いから、マジコ・・・ではなく、ダイビングヘッドでゴールに押し込んで逆転。
ありきたりではあるけれど、勝利のために執念を燃やすというのは、それもやはり、熱くさせてくれるものだと思います。
あと見どころと言えば、3回戦の話も出てきますが、新キャラ・片倉哲平の登場ですね。
なぜゆえ、U-15代表だった男が、廃部の危機にあるような撫高にいるのかよく分かりませんが (少年マンガのお約束に突っ込んではいけないのですよ?w)、サイドバックでありながら、優れたパスセンスを持つという哲平の活躍は4巻でのお楽しみです。
それと、見どころというか・・・、“カトパン=偽プジョル”とネタにされてるのには笑ってしまいましたね。
リアリティ路線のサッカーマンガではありませんが、登場人物たちが魅せる熱さ、リアリティ路線ではなくてもサッカーに大切なもののひとつである“閃き”の要素はある作品だと思うので、(現段階では、プッシュしたいというよりは、あくまで個人的には好きというニュアンスではありますが)興味のある方はチェックみてはいかがでしょうか。
まだまだ、伸びしろはあるように感じるので、これからに期待してます。
※
さて、次の4巻では、3回戦の湘南育英戦が描かれていきます。
「パスのコースは無限だよ」
たとえ縦のパスコースが消されていようとも、ボールに驚異的なカーブをかけパスを通し、高度な技術とサッカーセンスにより、最小限の働きで一瞬だけ輝きを放つことから、“閃光の司令塔”と呼ばれる脇坂直人がいる湘南育英を相手に、撫高はどんな戦いを見せてくれるのでしょうか?
4巻は、今冬に発売されるとのことです。
■ 収録
STAGE8~STAGE11
月刊少年ライバル2009年4月号~7月号
蔵希が哲平と出会うところまで収録
タグ : MAGiCO
『マイスター 2(完)』 / 加地君也
2009.05.04 23:41
※ネタバレとなり得る要素を含んでいる可能性がありますのでご注意ください
※ネガティブ気味な内容になっているので、読むかどうかは自己責任でお願いいたします(念のために、記事をたたんでおきます)。
タグ : マイスター
『マイスター 1』 / 加地君也
2009.04.08 23:24
※ネタバレとなり得る要素を含んでいる可能性がありますのでご注意ください
週刊少年ジャンプにて、10週打ち切りとなってしまった、『マイスター』1巻の感想記事ですが・・・、作品の総括的なものは、2巻(完結)のほうでやりたいと考えていますので、今回はなるべく簡単にまとめたいと思います。
※
作品の舞台は、新設校ながら、前年県大会でベスト4の成績を残したという総海(さとみ)高校。
主人公の新岸頼歩(あらぎし らいほ)は、チームのキャプテンで、"楽しんで勝つ"をモットーに、個性的過ぎる部員たちとともに、インターハイ出場を目指していくといったストーリーです。
1巻では、全10話のうちの半分、Play.1~Play.5までが収録されて、大雑把に書くと、総海高校に入学した新1年生の話と、総海高校が目指すサッカーについての話が描かれています。
私個人の感想としては・・・
"マイスター"という言葉の示すの意味、"一芸に秀でた者が多く常識に捕われない考え方でチームを構成している"という総海のサッカースタイルと、"楽しんで勝つ!"の要素をストーリーの中で上手く見せていくことができれば、少なくとも10話で打ち切られることはないかなぁと考えていたのですが・・・
(現に序盤の展開では、サッカー描写的にツッコミどころはあるにしても、悪くはなかったと思います)
やっぱり・・・、Play.3で頼歩が錦(元プロクラブJr.ユース出身の新1年生FW)に言い放った、「ふざけるなァ!!」が、作品を悪い方向を加速させてしまったかなぁと思います。
奇をてらおうとすること自体に何も問題はないのですが、それには相応の説得力が必要になると思います。あの「ふざけるなァ!!」は、読む者を納得させることができるだけの説得力はなく、「なぜ?」という疑問ばかりが残るものでした・・・。
また、あの場面については、連載を読んだ当時の雑感でも書きましたが、楽しさを強調していこうとしていく作品なのなら、まずは、錦のプレーの良い部分を認めるところから入るべきだったのではないかと今でも思えてなりません。そうすれば、また違った展開になっていったようにも思うんですけどね・・・。
そして、あともうひとつ、楽しさを強調するサッカーマンガなら、やるべきではなかったと感じたものがあったのですが、それは2巻収録のお話なので、作品の総括的なものも含めて、そのあたりは次回に書きたいと思います。
リアリティのあるサッカーマンガというよりも、サッカーを楽しく描いていこうすることを目指した作品性。
10週で打ち切られてしまった作品である(アンケート至上主義の少年ジャンプでそういう判断が下された)、ということを踏まえたうえで、興味のある方はチェックみてはいかがでしょうか。
※
さて、本編以外にも、10週打ち切りなのにもかかわらず全2巻構成というだけあって、単行本用に加えられた描き下ろされたも多く掲載されています。(通常のコミックよりページ数は多いです)
ウ○イレの能力値付きのキャラクター紹介に、サッカー用語解説、ギャグの元ネタなどについての解説もあったりして、個人的に、裏話的なものが好きだったりするので、こういうものは楽しんで読んでいたりするのですが・・・これに関してはちょっとばかりしゃべりすぎな部分があったかもしれませんね(笑
あと、カバーをめくっても面白い(?)ものが見られます。
そして、描き下ろしの解説の他に、以前週刊少年ジャンプで読み切り掲載された、『ストライカー義経』というサッカーマンガも掲載されています。
サッカー大好きだけど、名前負けしていじめを受けている、"弁慶"という名の少年が、弁慶の学校に転校してきた、自らを源義経の生まれ変わりと豪語する、"義経"と出会い、弁慶をいじめていた先輩たちに勝負を挑んでいく・・・といったお話です。
義経に触発され、自分の弱さを克服していく弁慶の姿など・・・、ひとつの読み切り作品としては、加地先生が必死に言い訳するほど悪くはないと思いますが、サッカー描写という点では、それほど見どころはない作品だったかなとは思います。
※
さて、完結となる2巻は、5月1日発売になります。
一応、話の結末を知っている私としては、描き下ろし部分がどうなっているのかが 気になるところです。
■ 掲載
Play.1~Play.5
週刊少年ジャンプ2009年1号~6・7合併号
インターハイ県予選の組み合わせが決まるところまで収録
+
【読み切り】ストライカー義経
週刊少年ジャンプ2004年50号掲載
タグ : マイスター
『MAGiCO 2』 / 佐久間力
2009.04.04 00:26
※ネタバレとなり得る要素を含んでいる可能性がありますのでご注意ください
2巻は、前半は部の存続をかけた横浜港南戦のクライマックス、後半は蔵希が撫子高校入学後初めての公式戦・全国高等学校総合体育大会一次予選が始まっていきます。
『MAGiCO』という作品について、1巻の感想のところで、"熱を帯びたシンプルな王道ストーリー+主人公が魅せる「マジコ」という名の創造的なスーパープレー"を楽しむものと書きましたが、今回もそんな『MAGiCO』の魅力に触れることができます。
個人的には、横浜港南戦で、カトパンが相手選手に誘われ痛恨のオウンゴールを喫し、逆転を許してしまった場面から、蔵希が相手と同じプレーでオウンゴールを誘ってやり返すところが一番気に入ってます。
強豪・横浜港南相手とはいえ、勝てなければ廃部という厳しい条件の中、逆転を許してしまったけれど、それでも戦う姿勢を見せていく撫高のメンバーたち姿は、シンプルではあるけれど、熱い気持ちにさせてくれます。
「オレはあんたとサッカーやるためにユース蹴ったんだぜ 最後まで付き合えよな」
という、蔵希が疲労も限界に達しようとしているカトパンにかけた言葉も好きです。
カトパンの屈辱的なオウンゴールを、まったく同じプレーでやり返す蔵希の閃きもいいですよね(これは、"マジコ"ではないですがw)。
サッカーマンガとして、リアリティを追い求める作品ではないですが、カトパンをはじめとする撫高サッカー部員たちの見せる熱さや、蔵希の見せるマジコなど、作品の軸はしっかりとしているので、今後佐久間先生の描き手としての経験値が上がっていくほどにもっと面白くなっていくのではないかと個人的には期待しています。
特に、"マジコ"の描写は、トンデモ系に寄ったものではありますが、"創造性"は感じられるので(『イナズマイレブン』のようなぶっ飛んだトンデモではないです)、ここはもっと磨いていってほしいな個人的には思います。
あと、横浜港南戦には負けたのにもかかわらず、結局あっさりと存続が決まってしまったのには吹いてしまいました。総体一次予選の1回戦も、"ウサギ狩り"なんて言葉も出しておきながら、あっさりと勝っていましたね(笑
さて、続く3巻は、2巻の後半から描かれている総体一次予選の2回戦、海老名東戦の続きからになっていきます。
1-0で勝利し続ける海老名東を相手に、先に失点してしまうことの意味。
撫高の右サイドハーフ・斉藤と何やら因縁のある海老名東の別所という男。
蔵希のマジコを止めてしまう海老名東のGK・糟谷。
いろいろ気になる要素はありますが、撫高は無事2回戦を突破することができるのか。
先の展開は知らないので、どんな物語を見せてくれるのか楽しみです。
■ 掲載
STAGE4~STAGE7
月刊コミックライバル2008年12月号~2009年3月号
総体一次予選2回戦vs海老名東、先制点を許すところまで収録
タグ : MAGiCO
『MAGiCO 1』 / 佐久間力
2009.01.03 12:13
単行本の発売から1ヶ月近くが経過してしまいましたが、昨年連載がスタートした、『MAGiCO』の1巻の感想です。
作品のおおまかなストーリや方向性については、以前に書いた"新連載『MAGiCO』1話雑感"の記事をご覧になってください。
あ、いや、手抜きとかそんなつもりじゃなくて、作品に対する自分のスタンスは、ファーストインプレッションとほとんど変わっていないんですよ(笑
"熱を帯びたシンプルな王道ストーリー+主人公が魅せる「マジコ」という名の創造的なスーパープレー"を楽しんでいく(=トンデモ寄りのサッカー描写)・・・
それが、この『MAGiCO』というサッカーマンガだと思います。
私個人としては、リアリティ路線のサッカー描写を好むタイプではあるのですが、"熱を帯びたシンプルな王道ストーリー"は好きですし、作品の方向性を理解して読む分には、それなりに楽しんで読めています。最初は、"普通"という評価だったんですけど、徐々に作品に触れていくにつれ、好きになっていったって感じですね。
プロクラブを蹴って弱小高のサッカー部に入ってしまったり、サッカー部入っても部員が足りなかったり、廃部を目論む教頭がいたり、次の試合で負けたら廃部の対戦相手が最強軍団だったり・・・
本当、設定としてはありきたりだと思うのですが・・・
「世界中のヤツラに魔法をかける! それが俺の夢だ」
「土だろうが芝だろうが俺には関係ない
どんな奴が相手だろうと全力で戦う…」
「サッカーが大好きだぞ!!!」
「勝つために守ってるんだ」
そのストーリーはなかなか熱いものがあります。
作品の肝である、"マジコ"の演出部分はまだまだ弱いかなぁと感じる部分はありますが、逆に言えば、ストーリーの演出の中で、"マジコ"を上手く活かし創造性を磨いていけば、個人的にはもっと輝ける作品になる可能性はあるんじゃないかなと期待しています。
もっともっとマジコ発動の場面で、私をワクワクさせてほしい!
サッカーマンガにおいて、サッカーというスポーツの真理や本質を描くことも大切ですが、(とりあえず現実的かどうかは別として)創造性溢れるプレー描写で魅せることもまた大切な要素だとも思ってます。
この作品に前者を求めることはできないですが、後者の部分で楽しませてくれるとして期待していきたいです。
そういった作品性を踏まえたうえで、作品に興味を持った方は、チェックしてみてはいかがでしょうか。
さて、続く2巻は、部の存続をかけた横浜港南戦のクライマックスを迎え、 ますます熱を帯びていくストーリーに注目です。
■ 収録
STAGE 1~STAGE 3
月刊少年ライバル2008年9月号~11月号
vs横浜港南の途中まで収録
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